本庄豊『なつよ、明日を切り拓け 連続テレビ小説「なつぞら」が伝えたかったこと』を読むことができた。今年前半のNHK連続テレビ小説「なつそら」を題材に、戦後史として対話していくというもの。
7月18日に起こった「京都アニメーション放火事件」にも触れられている。目次は次の通り。
まえがき
序 京都アニメーション放火事件
1.戦争孤児たちの終わらない「戦後」
2.開拓一世・柴田泰樹と十勝の人びと
3.未完の画家・神田日勝
4.新宿中村屋とムーランルージュ新宿座
5.「白蛇伝」「太陽の王子 ホルスの冒険」
6.戦後に花咲く新劇運動
7.よつば乳業の創立
8.東映動画争議と「アルプスの少女・ハイジ」
終 労働と芸術、反戦と共同、そしてジェンダー
特別寄稿 依田便三と晩成社-柴田泰樹前史(平井美津子)
あとがき
「なつぞら」関連略年表
著者は、『戦争孤児』(新日本出版)の著者でもあり、その観点から「なつぞら」の主人公で孤児だった「なつ」の成長とそれを支えた人たちを温かくみつめ、同時に、それを可能にした大森寿美夫の脚本を歴史と重ねて読み解いていく。それには、著者の体験も書き加えられている。東京の大学で青春時代をおくった著者であるので、アニメ映画やテレビの思い出と同時に、東京を舞台にした新劇運動、東映動画のこと、新宿の様子などのイメージも書き込まれている。僕は、関西にきてしまったので、大野松雄さんの聞き取りをしていても、東京の様子はイメージがしにくいことも多いので、叙述のリアリティということも考えさせられた。時はたっていても、その場にいかないといけないよなと出不精な自分に反省。
末尾にある「なつぞら」関連年表は一目で成長や時代背景がわかり、ありがたかった。
「あとがき」に「心残として、「日本アニメの創成期を支えた音楽家たちに言及することが少なかったことである。これは音楽家が「なつぞら」に登場していないことや、ぼくの力不足あんどが理由で或。別の方の研究に待ちたい」とある。さしずめ、この本で「口パクテレビアニメ(人間が静止したまま口だけ動く虫プロの「鉄腕アトム」のようなアニメのこと)」として名前が挙げられている「鉄腕アトム」の音響をやった大野松雄さんの聞き取りをまとめるないとと思う(最近、あってはいるが、意識的な聞き取りはできていない)。
「口パク」アニメの大変さのことについては、よくきかされていたが、同じような仕事の状況を東映動画も抱えていたのだろう。とはいえ、そこでつくられ、本庄市を魅了した「白蛇伝」(1958年)の最初の企画の歳の音づけは大野さんが関与したとのこと(いったん企画が没になったので、その音は使われなかったのが結末だが)。
この「白蛇伝」、声優に森繁久彌と宮城まり子を起用。
「宮城まり子は一九五五年、戦争孤児の暮らしを歌う『ガード下の靴みがき』(作詞・宮川哲夫、作曲・利根一郎)を大ヒットさせる。当時、靴磨きは戦争孤児たちの仕事だった。歌詞の一部を唱歌しよう。
おいら貧しい 靴みがき
ああ 夜になっても 帰れない
墨に汚れた ポケット覗きゃ
今日も小さな お札だけ
宮城まり子を女優・歌手に押し上げたのは、作家・菊田一夫である。菊田は戦争孤児を主人公にしたラジオドラマ「鐘のなる丘」の脚本を書いた。「なつぞら」では、ムーラン・ルージュの歌手だった煙カスミが、メランコリーのステージで「ガード下の靴みがき」を歌った。なつも孤児だったとき、靴みがきをしていた」(73頁)
「百獣の王サム」が「狼少年ケン」、「魔法使いアニー」が「魔法使いサリー」、「キックジャガー」が「タイガーマスク」(タイガーマスクも孤児)、「大草原の少女ソラ」が「アルプスの少女ハイジ」などなど、それにまつわるコメントが興味深い。
装丁のことで、ちょっと一言。どうも、行間がひろくって、読みづらい。目が悪くなっているせいかもしれないが、技術的なこと。
7月18日に起こった「京都アニメーション放火事件」にも触れられている。目次は次の通り。
まえがき
序 京都アニメーション放火事件
1.戦争孤児たちの終わらない「戦後」
2.開拓一世・柴田泰樹と十勝の人びと
3.未完の画家・神田日勝
4.新宿中村屋とムーランルージュ新宿座
5.「白蛇伝」「太陽の王子 ホルスの冒険」
6.戦後に花咲く新劇運動
7.よつば乳業の創立
8.東映動画争議と「アルプスの少女・ハイジ」
終 労働と芸術、反戦と共同、そしてジェンダー
特別寄稿 依田便三と晩成社-柴田泰樹前史(平井美津子)
あとがき
「なつぞら」関連略年表
著者は、『戦争孤児』(新日本出版)の著者でもあり、その観点から「なつぞら」の主人公で孤児だった「なつ」の成長とそれを支えた人たちを温かくみつめ、同時に、それを可能にした大森寿美夫の脚本を歴史と重ねて読み解いていく。それには、著者の体験も書き加えられている。東京の大学で青春時代をおくった著者であるので、アニメ映画やテレビの思い出と同時に、東京を舞台にした新劇運動、東映動画のこと、新宿の様子などのイメージも書き込まれている。僕は、関西にきてしまったので、大野松雄さんの聞き取りをしていても、東京の様子はイメージがしにくいことも多いので、叙述のリアリティということも考えさせられた。時はたっていても、その場にいかないといけないよなと出不精な自分に反省。
末尾にある「なつぞら」関連年表は一目で成長や時代背景がわかり、ありがたかった。
「あとがき」に「心残として、「日本アニメの創成期を支えた音楽家たちに言及することが少なかったことである。これは音楽家が「なつぞら」に登場していないことや、ぼくの力不足あんどが理由で或。別の方の研究に待ちたい」とある。さしずめ、この本で「口パクテレビアニメ(人間が静止したまま口だけ動く虫プロの「鉄腕アトム」のようなアニメのこと)」として名前が挙げられている「鉄腕アトム」の音響をやった大野松雄さんの聞き取りをまとめるないとと思う(最近、あってはいるが、意識的な聞き取りはできていない)。
「口パク」アニメの大変さのことについては、よくきかされていたが、同じような仕事の状況を東映動画も抱えていたのだろう。とはいえ、そこでつくられ、本庄市を魅了した「白蛇伝」(1958年)の最初の企画の歳の音づけは大野さんが関与したとのこと(いったん企画が没になったので、その音は使われなかったのが結末だが)。
この「白蛇伝」、声優に森繁久彌と宮城まり子を起用。
「宮城まり子は一九五五年、戦争孤児の暮らしを歌う『ガード下の靴みがき』(作詞・宮川哲夫、作曲・利根一郎)を大ヒットさせる。当時、靴磨きは戦争孤児たちの仕事だった。歌詞の一部を唱歌しよう。
おいら貧しい 靴みがき
ああ 夜になっても 帰れない
墨に汚れた ポケット覗きゃ
今日も小さな お札だけ
宮城まり子を女優・歌手に押し上げたのは、作家・菊田一夫である。菊田は戦争孤児を主人公にしたラジオドラマ「鐘のなる丘」の脚本を書いた。「なつぞら」では、ムーラン・ルージュの歌手だった煙カスミが、メランコリーのステージで「ガード下の靴みがき」を歌った。なつも孤児だったとき、靴みがきをしていた」(73頁)
「百獣の王サム」が「狼少年ケン」、「魔法使いアニー」が「魔法使いサリー」、「キックジャガー」が「タイガーマスク」(タイガーマスクも孤児)、「大草原の少女ソラ」が「アルプスの少女ハイジ」などなど、それにまつわるコメントが興味深い。
装丁のことで、ちょっと一言。どうも、行間がひろくって、読みづらい。目が悪くなっているせいかもしれないが、技術的なこと。