ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

斎藤美奈子『日本の同時代小説』(岩波新書、2018年)

2019年12月06日 14時17分57秒 | 
西宇治図書館で借りてきた斎藤美奈子『日本の同時代小説』を読んだ。
ネットでは、内容紹介として、次のように書かれていた。
メディア環境の急速な進化、世界情勢の転変、格差社会の深刻化、そして戦争に大震災──。創作の足元にある社会が激変を重ねたこの50年。「大文字の文学の終焉」が言われる中にも、新しい小説は常に書き続けられてきた! 今改めて振り返る時、そこにはどんな軌跡が浮かぶのか? ついに成る、私たちの「同時代の文学史」。
目次は次の通り

はじめに
1960年代 知識人の凋落 (へたれ知識人の純文学)
1970年代 記録文学の時代
1980年代 遊園地化する純文学
1990年代 女性作家の台頭
2000年代 戦争と格差社会
2010年代 ディストピアを超えて
あとがき

同時代小説なので、その時代を生きてきたものとして、そうだよねとお思うところも多い。この作者、もともと編集畑のひhとだったようで、辛口、一刀両断の修飾語(「へたれ」だとか)でずっぱりきられてしまう。しかし、21世紀後になってくるとその論調はかわるように感じるのだが・・・。
いろいとメモを取りたくなるところがあったが、ちょっとおいて自分なりに振り返ってみると、同時代とはいえ、ここに登場する小説はほとんど読んでいないことに気づき、唖然とした。自分は何をやってきたのだろうかと? 小説は好きだから読んではいるのだが、その中でも、障害関係のものに職業柄いくので、現代小説、あるいは話題となったものを読んでいないと言うことなどもあるのだろうが、しかし、そこに豊穣な世界が1つひとつに詰まっているとおもうと、その世界を楽しみたいという思いが募る。ドラマのない論文などをかく、あるいは卒論などにかまけているのは、時間がもったいないともおもったりしてしまう。

障害関係でもいろいろありそう
赤坂真理(五感に訴える作品の書き手)『ヴァイブレーター』(1999)、幻聴や摂食障害に加えて或オール異存という、いささか問題含みの女性ライターのロードノベル、同『ヴォイセズ』(1999)、成田空港に勤める女性航空管理官を主人公にした小説で、彼女の働きぶりも、盲目の青年との恋愛も鮮烈。p.150
「自伝」系
乙竹『五体不満足』(1998)、大平光代『だから・あなたも生きぬいて』、柳美里『命』(2000)、飯島愛『プラトニックセックス』(2000)など「愛と感動ノンフィクション」壮絶人生系の本。これにてういて、赤坂真理「『障害』と『壮絶人生』ばかりがなぜ読まれるのか」(『中央公論』2001年6月号)で批判しているのも面白い。「ここ数年、およそ希望と名のつくものが、一見それが欠落していると見える地点からもたらされている意味を、「普通」の人びとは、感動するだけでなく、よく考えた方がいい」「涙や感動の話はいまや消耗品である」。そして、それが「弱い人」の「普通の人生を抑圧」するものとなっていることも指摘している。(169)
難病もの
住野よる『君の膵臓をたべたい』(2015)、片山恭一『世界の中心で、愛を叫ぶ』(2001):徳冨蘆花『不如帰』(1898)、伊藤左千夫『野菊の花』(1906)、堀辰雄『風立ちぬ』(1936-38)、河野実・大島みち子『愛と死をみつめて』(1963)など、若くして芯d奈女を生き残った男が振り返る「難病もの」の歴史は古く、「涙と感動」を求める速射に愛好されてきた。なぜ、21世紀にもなって、こんな手垢の付いた小説をy間亡ければならないのか。(181)
震災関連
『東日本大震災後文学論』(2017)の編者のひとり飯田一史は、審査意見連ディス飛び亜小説の多さに触れ<「どうにもできなかった」人たちばかりを積極的に描く不可思議さ>を問題にしている。<それは、責任を引き受ける、覚悟を決めて自分たちで対処するという当事者意識の欠如に見える。主体性を削ぎ、無力感を助長するだけに見える。大事な本質を見ない、それに取り組まないで周辺をぐるぐるまわることで済ませる悪癖にも>(「希望-重松清と『シン・ゴジラ』」)。この点、第二次世界大戦の日本社会と同じ思想構造が表れていることに注意。

その他、
「ディストピア」という特徴づけはなるほどとおもう。ディズニー映画盛んなりしも、ディズニーランド的なユートピアに妄想していると其の絶っている地点は「ディストピア」ということに・・。まあ、逆に、現実が「ディストピア」なので「ユートピア」の世界にいくのだろうが。「厳しい時代に厳しい証跡は誰も読みたくない」と筆者も言っているじゃないか。

孤児の関係
『世界の果ての子どもたち』、満州の国民学校で出会った3人の少女。残留孤児となった珠子、戦災孤児となった茉莉、日本に渡った朝鮮人の美子のそれぞれの戦後を描く。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿