京都シネマで、『母と子の絆-カネミ油症の真実』をみた。障害や公害関連の映画は、仕事の一環として無理をしても見にいっている。11月8日から24日までの限定だったので、見逃すと見れなくなってしまうと思ったのだ。森永ヒ素ミルク中毒事件や水俣病については学ぶ機会があったが、この「カネミ油症」については知らないことが多かった。1968年前後は、「夜明け前の子どもたち」などの映画が撮影、上映されていた時期でもあり、障害の発生やそれに対する社会的対応について学んできたつもりだった。この映画をみて、自身の無知を知らされた。
「カネミ油症」は、1968年、西日本一体で起こった食中毒事件である。福岡県北九州市の米の倉庫業社で食用油の製造を手がけたカネミ倉庫社が製造した「カネミライスオイル」に、PCBやダイオキシンの一種が混入され、それを摂取した人たちが健康被害を受けた事件である。しかし、これは、製造したカネミ倉庫会社のみならず、初期対応を誤った国・厚生省、九州大学の医者・研究者の行った認定作業の問題、裁判を行っていく最終盤での訴訟弁護団の対応など、あまりにもと感じざるを得ない。国の無策と不条理な仕打ち、幾重にも積み重なった問題の前に、カネミ油症の被害者は、国からも、社会からも見捨てられ、深い傷をおった。
カネミ油を摂取した人たちのみならず、真っ黒で生まれて来た子どもたち、心臓疾患や障害を持って生まれてきた子どもたちなど、その子どもや孫の世代にまで被害は広がっていた。被害者やその子どもたちは、カネミ油症の継続した影響から、結婚が許されなかったり、直接的に差別されたりしてきた。その結果、被害者であることに口をすることもはばかられるという事態にも到っていた。今なおカネミ油症の影響は消えず、認定の枠組みをめぐって、国の責任が問われている。
この映画では、九州、特に長崎の五島を中心に被害にあった方々の証言を取り上げていた。母胎から胎盤を通して胎児にダイオキシン類の物質が移行したことを、胎児のうちにこの影響を受けたと思われる子ども、障害をもって生まれた子どもたちは身を以て示していた。それを認定しようとしない国などの姿勢が指摘され、その影響を「臍の緒」の分析によって明らかにしようとする取り組みが紹介され、健康被害の認定について問題提起がなされている。
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