「西側」が期待した大きなトラブルも無く、「コロナ」も抑え込んで北京冬季五輪・パラが終わった。ポイントを稼いだ習近平は、いよいよウクライナ紛争に向けて動き出すだろう。
ヒーロー気取りのゼレンスキーと、メンツばかりにこだわる欧州と、あまり利のないもめごとに関わってロシアと共倒れだけは避けたいアメリカの面々は、プーチンロシアが唯一隙を見せた「ウクライナの非武装中立」提案にちっとも頭が回らず、ポイントを上げるチャンスも逃して泥沼化させてしまった。
それがために、死なせずに済んだはずの多数のウクライナ市民犠牲者を出させてしまい、「経済制裁」とやらで侵攻に無関係なロシア市民の生活までも追い詰めてしまった。市民を犠牲にして屈服させようという戦略においてはどちらも目くそ鼻くそでしかない。「天に唾する」ように「反戦、平和」を叫ぶのも無意味とは言わないが、まずもって考えねばならないのは、いかにして無辜の犠牲者を出さないようにするかであろう。国や同盟のメンツなどその後の話だ。
プーチンロシアが自らの愚行でいずれ国力衰退、場合によってはロシア分割にまで進むかもしれない可能性まで生み出してしまったのは明らかだ。しかしそれゆえにこそ今、最も恐れられるのはプーチンロシアの暴発である。
交渉術というのは「いかに相手の顔を立て(ていると見せ)ながら実利を取るか」である。
世界中から総スカンを食らったプーチンロシアと、一般市民に犠牲が増え続けるウクライナは、今まさに何とかしていったん矛を収めたい(しかもメンツだけは確保しながら)状況にある。
しかし、米とその子飼いのNATO、腰ぎんちゃく日本は今さら仲介などに出てこられるわけもない。
ここで停戦を誘導できれば、米中露覇権争いの中で大きなポイントを稼ぎ、一歩も二歩もリードすることができる。SWIFTを締め出されたロシアには金融援助をはじめとする経済的依存強化を図り、復興に大量の物資供給を必要とするウクライナには、物資の提供と引き換えに「一帯一路の欧州への入り口承認」をのませ、あわよくば中国圏の欧州前線国化してしまうことも狙える。
提示する停戦条件は、
1.「ウクライナの非武装中立化」
「西側」でいたいウクライナは難色を示すだろうが、「あまりプーチンを追い詰めて暴発させれば、相当の市民の犠牲を出して国が崩壊するぞ。ロシアからの圧力は中国が抑えてやる。非武装中立を憲法化したところで、頃合いを見て日本のようにまた改憲を策謀すればいいだけの話」と説得する。
2.「クリミアのロシア主権承認」
ウクライナとしては敗戦に近い屈辱であろうし、「西側」に顔向けできない条件ではある。しかし、もともとロシア人、親ロシア派が圧倒的多数を占める地域で、現状はロシア領と変わらないのだからあとは面子だけの問題。いかにしてウクライナのメンツを立ててやるか。中国お得意の「自治区」、「ドネツク、ルガンスクからロシアの手を引かせる代わりに『自治区』として承認」あたりが落としどころか。
3.以上をウクライナに飲ませるからロシアは全面撤退。
これでまあ、双方のメンツも何とか立ててやりながら大きなポイントを稼ぐことができるわけだ。ただ、そこで不安なのが、こんどはポイントを持って行かれた米の動き。中国の勢いをそぐため、いっそうアジア太平洋地域で日本のポチ右翼連中と反中危機をさらに煽り、無くて済んだはずの緊張を作り出そうと躍起になって来るだろう。