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てらまち・ねっと



 安倍政権は小泉政権等と同様に弱者を守らない、というより虐げる。
 5月17日閣議決定された生活保護法改正案には批判が集中。
 自治体の方向性にも影響が大。
 そこで、注意して報道を見た。

 (朝日)「生活保護の申請書の記入項目はこれまで省令で定められていた。
      だが改正案では本人が資産や収入などを記した書類を提出することを明記した。
      厚労省は『運用は変えず、口頭での申請も従来通り認める』と説明するが、
      貧困問題に取り組む専門家らが『自治体が申請を不当に受け付けない『水際作戦』が広がる』と反発している」

 (毎日)「収入などを記した書類の提出義務付けに、民主党は「門前払いの理由にされかねない」と反発。
      申請後の書類提出も認めるようにし、
      さらに『書類を作成することができない特段の事情がある時は、この限りではない』との一文を加えた修正案を28日に決めた。
      与野党は29日から修正協議に入り、同日中にも民主党の修正案を軸に合意する見通し」

 (共同)「生活保護法改正案は28日、今国会での成立が確実となった。
      自民、公明、民主の3党が">条文で保護申請の手続きを定めた部分を現状の実務運用から変更しないとの内容に修正することで大筋合意した。
      3党は生活困窮者向けの自立支援法案も併せて、来週にも衆院を通過させる方針だ。」

 これら報道を見る限りは、手続き自体は今まで通りで行くらしい(「現状」には問題が多いのだけれど)。
 (中日) 「申請書をなかなか渡さないのが水際作戦。厚生労働省が『やってはだめ』と自治体を指導しているが、
       生活困窮者を支援する人たちは『根強く残っている』と口をそろえる。」

 ともかく、専門家は次の懸念も示す。

    「2013年8月に予定されている生活保護基準引き下げは、日本の中以下の所得層の生活を困難にする方向へと、大小さまざまな影響を及ぼす。
     子どもの教育や高齢者の介護に対しても影響が及ぼうとしている中で、障害者に対して、さらに大きな困難が及ばないとは考えにくい
     生活保護に関して『水際作戦』や『硫黄島作戦』の存在が広く知られるようになった時期には、障害者福祉にも同様の問題が存在し始めていた。
     文字通り『明日は我が身』だ。」 (週刊ダイヤモンド)

 政権交代で格差社会、弱者冷遇がかつての自公政権以上に急激に進むという、悲しい時代。

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●生活保護:不正受給の罰則強化 改正法案を閣議決定
       毎日新聞 2013年05月17日
 政府は17日午前、生活保護の不正受給防止や就労支援策を盛り込んだ生活保護法改正案と、受給手前の人に自立を促す生活困窮者自立支援法案を閣議決定した。
8月からの生活保護費減額と合わせて、不正受給の罰則強化などで引き締めを図る半面、自立支援も同時に目指す内容だ。
生活保護法の抜本改正は1950年の法施行以来初めて。

 同法改正は保護費の抑制とともに、不正受給などに対する国民の不信感を和らげる狙いがある。
自治体の調査権限を広げ、就労や扶養の状況、健康状態を過去の受給者も含めて調べられるようにする。
扶養義務のある親族(直系血族と兄弟姉妹)が「扶養は困難」と回答した場合、事実関係の説明を求めることができる。

不正受給の罰金(現行30万円以下)を100万円以下に引き上げ、上乗せ規定がない返還金についても不正受給額の4割増しまで請求可能にする。

 受給申請の際、本人の資産や収入、親族の扶養状況の書面での提出を義務づけた。
ただし、事情があれば口頭申請も認める。

 一方で、自立に向けた支援を強化する。
同法改正案では、受給者の労賃の一部を積立金とみなし、生活保護から抜けた時に支給する「就労自立給付金」を新設する。自立するとすぐに税や社会保険料を払わねばならず、そうした当面の生活費を賄えるようにする。

 さらに生活困窮者自立支援法案では、生活苦の人が生活保護受給者になる前に立ち直れるよう手助けする。
自治体に就労や住まいなどの相談窓口を設け、住居を失った離職者には住居確保給付金を支給する。軽作業を通じ、通常の仕事ができるように訓練する「中間的就労」を制度化する。

 生活保護法改正案は2014年4月、生活困窮者自立支援法案は15年4月の全面施行を目指す。自民、公明両党は2法案と議員立法の「子どもの貧困対策法案」の計3法案を今国会で同時に審議する構えだ。

 生活保護受給者は1月時点で215万人超と過去最多を更新し、13年度予算の保護費は国、地方分で3.7兆円に達した。政府は生活費に相当する生活扶助を8月から3年で7・3%、総額740億円削減する。【遠藤拓】

●生活保護:受給者数10カ月連続最多に 高齢者世帯が4割
       毎日新聞 2013年05月22日
 厚生労働省は22日、全国で生活保護を受けている人が2月時点で215万5218人(前月比1576人増)となり、10カ月連続で過去最多を更新したと発表した。受給世帯数も157万4643世帯(同1677世帯増)で同じく過去最多。

 世帯別では、65歳以上の高齢者世帯が全体の4割を超える68万3353世帯。働ける世代を含む「その他の世帯」は28万9931世帯で前月よりわずかに減少した。

 厚労省は「増加幅は落ち着いている」としている。世帯数の増加が受給者数の増加を上回っており、多人数世帯が減少し単身世帯が増加した可能性があるとみている。(共同)

●【暮らし】生活保護申請 厳格化に懸念 改正法案閣議決定
          中日 2013年5月23日
 十七日に閣議決定された生活保護法改正案に対し、受給者の支援団体などが「申請に向けたハードルが一段と高くなって申請件数が激減し、自殺や孤立死などが激増しかねない」と猛烈に反発。国会審議でも民主党や共産党などが追及する構えだ。自治体の「水際作戦」が拡大するのか、現場の実情から考えてみた。(白井康彦)

申請書をなかなか渡さないのが水際作戦。厚生労働省が「やってはだめ」と自治体を指導しているが、生活困窮者を支援する人たちは「根強く残っている」と口をそろえる。

 昨年一月、札幌市白石区のマンションで四十二歳と四十歳の姉妹の遺体が発見された。姉は病死、妹は凍死。妹は知的障害があり、姉は病気で仕事ができず生活が困窮。食べ物も暖房もないままだった。姉は区役所の担当部署を三回訪れていた。担当者は困窮の様子を察して、非常食のパン十四缶を渡したが「生活保護を申請したいという意思表示がなかった」との理由で、申請書を渡さなかった。

 改正法案で問題になっているのは申請手続きの厳格化。申請時に本人の住所、名前、資産、収入などを記した申請書を提出する規定が新設された。今は法の施行規則で住所や名前などを書いた書類を提出すればよく、収入や資産が分かる資料は申請後でいい。口頭の申請を認めた判例もあり、支援団体は生活困窮者に「どんな紙でもいいから名前や住所、日付、申請の意思を書いて出せばいい」などとアドバイスしてきた。

 改正法案が成立すれば大きく変わりそう。「NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」の稲葉剛代表理事は「困窮度の高い人ほど『必要書類がそろっていない』と申請を認めてもらいにくくなる」と訴える。厚労省は「運用でやっていたことを法律に書くだけで、自治体の対応は変わらない」と説明するが、支援団体側は納得していない。

      ◇
 改正法案では自治体が申請者の親子、きょうだいなどに扶養義務を果たすよう働きかけをしやすくする規定も設けた。扶養義務者ができるだけの援助をすればいいことに変わりはないが、自治体は援助額が十分かどうかの調査もしやすくなる。支援者らは「親族に迷惑をかけたくないと考え、申請を諦めてしまう人が増えるだろう」と予測する。

 生活保護問題対策全国会議は、法改正で申請が激減しかねない懸念を、分かりやすく漫画化した。インターネット上でも反応はいいという。

●【アベノミクスはサラリーマンの敵だ】生活保護改正法は究極の弱者イジメ
           日刊ゲンダイ 【政治・経済】 2013年5月27日
「水際作戦」「扶養義務」で門前払い画策
<勤務先にも通知がいく>

〈このたび、あなたの兄であるAさんが生活保護の申請をされましたが、あなたは扶養義務を履行していない可能性があります〉

 ある日、社会福祉事務所からこんな通知が届くかもしれない。続きには、こう書かれている。

〈生活保護の実施機関は、Aさんの扶養義務者であるあなたの資産や収入について、年金機構や銀行、勤務先に報告を求めることができます〉
〈支給した保護費の全部または一部をあなたから徴収することができます〉


 読んだ瞬間、ほとんどの人はパニックに陥るだろうが、これが現実になりつつある。

 日本中が株高に浮かれている間に、水面下では“裏アベノミクス”ともいうべき、弱者イジメ政策が次々と検討されている。安倍政権が今国会での成立をもくろんでいる生活保護法の改正法案もそのひとつだ。

 生活保護を申請された実施機関は、扶養義務者の「銀行……雇い主その他の関係人に報告を求めることができる」と規定されているのだ。
これでは、親族の誰かが生活保護を申請すれば、職場にも知られてしまうことになる。それがイヤならば、申請を下げさせるか、自分で養ってやるしかない。

 すでにインフレ政策下の生活保護カットが問題になっているが、安倍政権はこうした「一族の恥」みたいな心理を逆手にとり、申請者そのものを減らそうとしている。
「生活保護問題対策全国会議」事務局長で弁護士の小久保哲郎氏がこう指摘する。

「申請者の親兄弟は収入や資産を調べるぞと脅された揚げ句、役所に『いくら扶養しますか』と扶養を強要される恐れもあります。成人後も親を扶養しなければならないなんて、前近代的で先進国ではまず例がありません。仮に親族がみんな困窮していて、自分だけが上場企業のサラリーマンだったとしても、彼らみんなを一生扶養することなんて不可能でしょう」

 改正法案の問題点はまだある。これまで、申請時の書類については口頭で済んだが、今後は提出が義務づけられる。

「一気に申請のハードルが上がり、門前払いされる人が相次ぐでしょう。これらの『水際作戦』で、ほとんどの申請者をハジくことができるのではないか」(小久保哲郎氏)

 昨年、お笑い芸人・河本準一の母親が生活保護を受けていたことが分かり、河本は「扶養しろ」と袋だたきに遭った。こうした風潮に便乗した弱者イジメはあまりにムゴい。

●生活保護法改正案、民主が修正要求へ 申請手続き巡り
            朝日 2013年5月27日
政府の生活保護法改正案に盛り込まれた申請手続きに関する条文について、民主党は27日、厚生労働部門会議の幹部会で修正を求める方針を決めた。
自民・公明両党は協議に応じる構えで、国会審議の焦点になりそうだ。

 生活保護の申請書の記入項目はこれまで省令で定められていた。
だが改正案では本人が資産や収入などを記した書類を提出することを明記した。
厚労省は「運用は変えず、口頭での申請も従来通り認める」と説明するが、貧困問題に取り組む専門家らが「自治体が申請を不当に受け付けない『水際作戦』が広がる」と反発している。


 このため民主党は、書類がそろわなくても申請できることを条文でもはっきりさせるよう求めることにした。近く自公民3党を中心に調整が始まる見通しだ。

●生活保護:申請、口頭でも 改正案、3党合意へ
              毎日新聞 2013年05月29日
 国会で審議中の生活保護法改正案について、自民、民主、公明の3党が28日、受給申請する際に収入や資産などを記した書類の提出を義務づけた規定を修正し、口頭での申請も認めることで合意する見通しとなった。民主党が同日、こうした修正案を決め、自公両党が応じる方向で調整を始めたためだ。

 収入などを記した書類の提出義務付けに、民主党は「門前払いの理由にされかねない」と反発。申請後の書類提出も認めるようにし、さらに「書類を作成することができない特段の事情がある時は、この限りではない」との一文を加えた修正案を28日に決めた。与野党は29日から修正協議に入り、同日中にも民主党の修正案を軸に合意する見通し。【遠藤拓】

●生活保護法改正、修正案で合意 自公民、申請手続き変更せず
             2013/05/29 02:00 【共同通信】
 不正受給対策を強化する政府提出の生活保護法改正案は28日、今国会での成立が確実となった。
自民、公明、民主の3党が、条文で保護申請の手続きを定めた部分を現状の実務運用から変更しないとの内容に修正することで大筋合意した。3党は生活困窮者向けの自立支援法案も併せて、来週にも衆院を通過させる方針だ。

 民主党は28日「次の内閣」の会合で修正案を決定し、水面下で各党と調整した。29日から正式な与野党協議に入る。

 生活保護の申請手続きについて政府提出の法案は、これまで厚生労働省令や通知などで規定していた資産や収入の書類提出を条文に明記していた。

 ●事実上、利用できない制度へと変わる!? 生活保護法「改正」案の驚くべき内容
生活保護制度を有名無実化する 今回の「改正」案

                  週刊ダイヤモンド /【政策ウォッチ編・第24回】 2013年5月17日
・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・
 今回、厚労省が提示している生活保護法改正案は、筆者から見れば、事実上、公的扶助の有名無実化である。このように言えば、厚労省からも自民党からも公明党からも、

「そんなことはありません。生活保護制度がなくなるわけではありませんし、生活保護の申請権だって保障されています」

 という反論が返ってくるかもしれない。

 それでもなお、筆者は

「今回の生活保護法改正は、生活保護制度そのものの有名無実化です」

 と声をあげたい。この改正が成立してしまうと、生活保護の利用のハードルは「利用できない」レベルまで高くなる。本当に困窮したときには、ハードルの高さゆえに申請も行えない。これでは、公的扶助として機能しない。そのような公的扶助がメニューとして存在しているとしても、利用できないのであれば意味はない。
「会社にハラスメント相談窓口は存在するけれども、相談を行うと退職に追い込まれる」という良くあるパターンと同じだ。

 ついでに言えば、障害者である筆者には、

「障害者福祉が、同様に変貌してしまうのではないか?」

 という危惧もある。2013年8月に予定されている生活保護基準引き下げは、日本の中以下の所得層の生活を困難にする方向へと、大小さまざまな影響を及ぼす。子どもの教育や高齢者の介護に対しても影響が及ぼうとしている中で、障害者に対して、さらに大きな困難が及ばないとは考えにくい。
生活保護に関して「水際作戦」や「硫黄島作戦」の存在が広く知られるようになった時期には、障害者福祉にも同様の問題が存在し始めていた。文字通り「明日は我が身」だ。

申請を事実上不可能に近づける
「水際作戦」が法律に
 では、具体的には、どのような問題があるのだろうか?

 数多くの問題が含まれているうち、生活保護制度に対して「破壊力が大きい」と形容したくなるほどの影響を及ぼすのは、「水際作戦」の実質的合法化と、親族による扶養義務の強化、調査権限の強化である。
この3つが相乗効果をもち、生活保護の申請を事実上不可能に近くする構造だ。


「水際作戦」とは、福祉事務所等の窓口で生活保護の申請を希望する人々に対し、就労の努力を求める・親族に扶養してもらうことを求めるなどの方法で「申請権はない」という誤解を与えたり、申請書を渡さなかったり、申請の意思があっても無視したりする対応である。もちろん、現在の生活保護法では違法である

現在の生活保護法では、口頭でも、レポート用紙などを利用したメモ書きでも、福祉事務所等の窓口で申請の意思を示せばよい。実際には、口頭では意思表示の証拠が残りづらいし、メモ書きでは「申請書ではないので受け取りません」という対応を受ける場合もある。しかし、現在の生活保護法・厚労省通達・判例等では、このように意思表示が行われた場合も、「申請を受理する必要がある」という解釈が確立されている。

「簡単に申請できるから、安易に利用する人が増えたのでは?」

 という意見もあるかもしれない。しかし困窮者の多くは、充分な教育を受けていない。小学校・中学校に就学して義務教育を受けていたということは、中学卒業程度の学力を有することを必ずしも意味しない。もしかすると、知的障害を持っているかもしれない。年長の聴覚障害者の中には、知能を発達させるために必要な配慮を受けられなかった例も珍しくない。

 福祉事務所の窓口をやっとのことで訪れ、恐る恐る、生活保護を申請したいという意思表示をする人々の圧倒的多数は、このような人々だ。だから、申請のハードルは低くなくてはならないのである。そもそも、「働けるのに働かず、安易に生活保護に頼る」というタイプの生活保護当事者は、非常に少ない。身近にいれば感情を刺激されてしまうかもしれないが、比率では決して多くない。

 では、改正案ではどうなるのだろうか? 申請に関する条文は、以下のようになっている。

第24条1項
 保護の開始の申請は、第7条に規定する者が、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施期間に提出してしなければならない。
 一 要保護者の氏名及び住所又は居所
 二 申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名及び住所又は居所並びに要保護者との関係
 三 保護を受けようとする理由
 四 要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。以下同じ。)
 五 その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

24条2項
 前項の申請書には、要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
 申請は「厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書」で行わなくてはならなくなる。文字の読み書きができないとしても、口頭では申請できない。申請書同等の事項を記載した用紙での申請も、受理されなくなる可能性が高い。

 また現在は、預金通帳のコピー・住居の賃貸契約書のコピーなどの書類は、申請後に提出してもよい。申請時に揃っているに越したことはないのだが、必ずしも揃えられるとは限らないからだ。困窮者の「DV被害を受け、着の身着のままで飛び出してきた」「失業して家賃を払えなくなり、アパートを追い出され、賃貸契約書を持ち出せなかった」といった状況に想像を及ぼせば、そのような時に「書類が揃えられないのならば、生活保護の申請は受理できません」という対応を受けることがどれだけ破壊的であるかは、容易に理解できるであろう。

 では、それらのハードルを乗り越えて、生活保護を申請すると、次に何が起こるのだろうか?

さらに申請を事実上拒む
扶養義務強化と調査権限強化

 改正案では、三親等以内の親族による扶養義務が強化される。

24条8項
 保護の実施期間は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもって厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合はこの限りではない。

生活保護法改正案(上段)と現行生活保護法(下段)の比較。新しく設けられる29条(資料の提供等)では、親族までプライバシーを丸裸にされる可能性もある調査内容が記載されている
拡大画像表示 
現在でも、親族には「扶養できませんか?」という照会が行われるが、高額の所得や資産がある場合を除き、否応なく強引に扶養を求めているわけではない。家族・親族の関係が円満であるとは限らない。親族に、充分な経済的余裕があるとは限らない。しかし改正案では、扶養義務の履行を求めている。充分とされる扶養を行わなければ、洗いざらい調査されるのである(29条)。調査の範囲は、年金・銀行・信託会社など資産にかかわるものに始まり、勤務先の雇主にまで及ぶ。「あなたの親族が生活保護を申請したことを、利用しているということを、勤務先にバラすぞ、イヤなら扶養しろ」ということである。

 ちなみに、この調査は、生活保護を申請して利用する当事者に対しても及ぶ。また、生活保護を利用している期間だけではなく、未来永劫、関係者が死に絶えるまで続く可能性がある。明示的に期間の限定が記載されていないということは、そういうことを意味する。

もともと生活保護制度は、働かないことを奨励する制度ではない。就労しているけれども収入が低い場合には、保護費との差額を受給することができる。いわゆる「ワーキング・プア」が生活保護以下の収入しか得られない場合には、生活保護を申請すればよいのである。少なくとも、生活保護水準の生活はできる。しかし、改正案が成立すれば、このような事例も少なくなるかもしれない。なにしろ、生活保護を受給していることが、勤務先にバレてしまう可能性があるのだ。

 24条8項には、

「ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合はこの限りではない。 」

 という但し書きがある。もしかすると、「DVや虐待の被害者に対する配慮は充分である」というアピールのためかもしれない。しかし、そのような場合の申請を「事実上、無理」にするのが、この改正案である。この但し書きは、何の意味を持つのだろうか?

・・・・・・・・(略)・・・

新規利用しづらくすればするほど
生活保護は「既得権」化する


 では、今回の生活保護法改正が成立してしまった場合には、どのような問題が発生しうるであろうか? もちろん、餓死・孤立死の増加や、親族間の深刻な紛争の増加は予想される。筆者はさらに、生活保護の「既得権」化を指摘しておきたい。

 しばしば耳にする意見に、

「生活保護は、一度取ったら既得権になってしまうから、当事者は脱却の努力をしなくなる」

 というものがある。数多くの当事者に接している筆者から見ると、脱却の努力を尽くしても「出口」はない
。経済的自立を実現できる就労機会が見つかりにくい。努力の末に「心が折れて」しまい、現在は脱却の努力をできなくなっているという当事者も多い。
いずれにしても、そういう当事者は「働けるのに働かない」「努力が足りない」「仕事の探し方が悪い」と非難されるのであるが。

 今回の生活保護法改正は、生活保護を実質的に利用できない制度にしてしまうであろう。
すると、現在、生活保護を利用している人々はどうするだろうか?
 人にもよるが、「可能な限り、生活保護から脱却しないようにしよう」と考えることが多いであろう。
いったん脱却できても、また困窮しないとは限らない。次に困窮して生活保護を申請しようとすると、改正された生活保護法が適用されることになる。
現在のまま生活保護を利用し続けていれば、法改正は遡っては適用されないので、現在の生活保護法が適用される。
親族との関係が、やや険悪であったり疎遠であったりするなりに安定しているとすれば、多くの場合は「敢えて、紛争に発展させたくない」と考えるであろう。

 今回の生活保護法改正案は、現在でも究極の「守り」を強いられている生活保護当事者を、さらに強い「守り」へと動機づける可能性が高い。
むもちろん、その「守り」もさせないような、新たな攻撃が予定されているのであろう。思い過ごしであってほしいのだが。

 社会的弱者が生きられない、恐ろしい国になろうとしている日本。当事者は今、何を思い、どう考えているだろうか? 

 次回は、「夢は自立」と語る生活保護当事者の日常と本音を紹介したい。



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