● 風疹・先天性風疹症候群 2013年3月現在 / 国立感染症研究所
風疹・先天性風疹症候群 2013年3月現在
風疹は発熱、発疹、リンパ節腫脹を3主徴とするが、症状がそろわない場合が多く、よく似た発熱発疹性疾患も多いため、診断には検査診断が必要である。一方、風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、白内障、先天性心疾患(動脈管開存症が多い)、難聴、低出生体重、血小板減少性紫斑病等を特徴とする先天性風疹症候群(CRS)の児が生まれる可能性がある。感染・発症前のワクチン接種による予防が重要である(本号6、7、9&11ページ)。
感染症発生動向調査:風疹は従来、小児科定点による定点把握疾患であったが、2008年から5類感染症全数把握疾患になった(IASR http://idsc.nih.go.jp/iasr/32/379/tpc379-j.html)。
風疹の全国流行は5年ごと(1982、1987~88、1992~93年)に認められてきたが、幼児に定期接種が始まった1995年度以降、全国流行はみられていない(IASR 24: 53-54, 2003, http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/277/graph/f2771j.gif)。2004年に患者推計数 3.9万人の地域流行が発生した後、7年ぶりに、2011年から報告数が増加し始めた(図1)。2013年は第12週時点で、2012年1年間の報告数を上回った。未受診、未診断の存在を考慮すると(本号14ページ)、より多くの患者が発生していることが推察される。
都道府県別には大都市を含む都府県からの報告が多いが(図2、および本号15&16ページ)、週別に見ていくと、2013年は首都圏から全国へと流行が拡大していることがわかる(http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/2132-rubella-top.html)。
2013年の患者の年齢は、15歳未満が4.8%と少なく、15~19歳5.5%、20代28%、30代33%、40代21%、50歳以上8.0%で、成人が9割を占めた。男性は20~40代に多く、女性は20代に多い(図3)。2012年は男性が女性の3.0倍、2013年は第14週時点で3.7倍であり男女差は拡大した。予防接種歴は65%が不明で、29%が無かった。
CRS は 5 類感染症として全数届出が必要であり(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-10.html)、1999年4月の感染症法施行後、2013年第14週までに27例報告された。このうち、2003~2004年の流行で10例、2012年の流行で8例報告された(表1、および本号9&11ページ)。母親の予防接種歴が記録で確認できたのは27例中1例のみで、19例は母親が妊娠中に風疹と診断されていた。2012年第42週~2013年第12週までに診断された8例はいずれも母親の感染地域は国内であり、2012年に人口 100万対10人を超えた都府県からの報告が多かった。
風疹の定期予防接種制度の変遷:2012~2013年の流行は、1977年8月に女子中学生を対象に始まった風疹の定期接種制度の変遷で説明できる(表2)。
1994年に予防接種法が改正され、1995年度から、集団接種は医療機関での個別接種となり、義務接種は努力義務接種になった。さらに、生後12~90か月未満の男女幼児が対象になり、時限的に男女中学生も対象となった。保護者同伴の個別接種であったため、中学生の接種率が激減した(http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html)。
2006年度から、1歳と小学校入学前1年間の幼児に対する2回接種が始まった。また、2008~2012年度の5年間に限り、中学1年生と高校3年生相当年齢の者に2回目の定期接種が始まった。2006年度以降、使用するワクチンは原則、麻疹風疹混合ワクチン(以下、MRワクチン)となったが、高校3年生相当年齢の接種率は、流行中の自治体で特に低い(本号17ページ)。
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