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てらまち・ねっと



 今日は、午前中、1件の所要を済ませて、県弁護士会の関係の依頼で、午後1時から3時まで、「岐阜県に来ている司法修習生」にレクチャーする。
 来年から法曹界の現場に入る人たちに何を話すか・・・

 ところで、先日の京都地裁のネット上の問題に関する判決についての毎日新聞の記事がとても分かりやすく、内容を理解することもできて、とても良かった。
 それは、ちょうど、2014年7月28日のブログで採りあげたこととほぼ同一線上の問題 ⇒ ◆ネット界は混乱/「Googleは要請があれば個人情報へのリンクを削除すべし」 欧州司法裁判所の裁定

 =「忘れられる権利」= このブログを見ている人は、ネットを活用しいる人のはずだから、それぞれどのように考えたらいいんだろうと思う人は少なくないはず。

 その記事から要点を絞ると次。
 ★《大手ポータルサイト「ヤフー・ジャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕記事が表示され、名誉を傷つけられたとして、京都市の男性が同サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に対し、記事リンクなど検索結果の表示差し止めなどを求めた訴訟で、京都地裁は8月7日、請求を棄却した》

 ★《地裁判決は「名誉毀損」「プライバシー侵害」とも成立しないか、違法性が阻却されるとして、原告の主張を退けた。
 検索エンジンが表示するのは、(1)リンク先のサイトの存在及び所在(URL)と「スニペット」(リンクの下に表示される元サイトの記載内容の一部)にとどまる。「リンク」は逮捕事実を適示したものとはいえず、「スニペット」も「検索ワードを含む部分を自動的・機械的に抜粋して表示したもの」に過ぎないとし、逮捕事実自体の適示を行っているとみるのは適当ではないとし、形式的に名誉毀損の要件を満たしていないとの判断》

 しかし、誰が何をしたかは読み取ることができ、事実上、犯罪の事実を示しているのと同じなので、その観点でも判示した。

 ★《京都地裁は、傍論として、仮に、今回の逮捕事実の適示と解される余地があった場合に、違法性が阻却されるかどうかについても検討。(1)その行為が公共の利害に関する事案に関わり、(2)専ら公益を図る目的で行われ、(3)適示された事実が真実であると証明されたときは、違法性がなく、不法行為は成立しない--という、従来の名誉毀損をめぐる「真実性・真実相当性の抗弁」などの基準を適用し、「違法性はない」と結論づけた。》

 ★《具体的には、(1)サンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したという特殊な態様の犯罪で社会的な関心が高い▽逮捕から1年半程度しか経過していない--として「公共の利害に関する事実」にあたるとした。
(2)被告が検索サービスを提供する目的は、一般公衆が今回の逮捕事実のような公共の利害に関する事実の情報にアクセスしやすくするという「公益を図る目的」が含まれている、と判断した。そのうえで逮捕事実自体は真実であり、今回の検索結果により原告の社会的評価が低下するとしても、名誉毀損については違法性は免れるとした。》

 最高裁の判例のページを見たけど、判決データが出ていないようなので、これも、毎日新聞の判決の要旨、それと、ある弁護士の判決についての評をリンクし留めておく。
 
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●ヤフーのネット検索で逮捕歴 表示差し止め認めず 京都地裁、原告男性の請求棄却「逮捕から1年半程度。不法行為は成立しない」
         産経 2014.8.7
 インターネットの大手検索サイト「ヤフージャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕歴が明らかになり、名誉を傷つけられたとして、京都市の40代の男性が、サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に、検索結果の表示差し止めや慰謝料などを求めていた訴訟の判決が7日、京都地裁であった。栂村明剛(つがむら・あきよし)裁判長は「特殊な犯罪事実で社会的な関心が高く、逮捕から1年半程度しか経過していない現時点では、公共の利害に関する事実であり不法行為は成立しない」として、男性の請求を棄却した。

「社会的な関心、現時点では公共の利害に…」
 訴状などによると、男性は平成24年12月、女性のスカート内を盗撮したとして京都府迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、翌年4月、同地裁で執行猶予付きの有罪判決が確定した。

 男性は逮捕後に勤務先から懲戒解雇され、判決確定後に再就職活動をしようとしたが、自分の名前を検索すると逮捕の事実や記事、その記事を転載したサイトが表示され、再就職活動が妨げられたと指摘。犯罪が軽微であることや私人であることから、判決確定後も逮捕歴が検索結果に出るのは名誉毀損にあたるとして、慰謝料など1100万円の支払いを求め、同年9月に提訴していた。

 ヤフー側は「検索結果は、キーワードに関するウェブの存在や所在を示し、ヤフーの意思内容は反映されていない。削除要請は元記事の発信者にすべきだ」と反論。実名報道には公益性があり、記事へのアクセス手段を提供しても、違法性はないと主張していた。

●忘れられる権利:京都地裁判決 EU判決と比べてみた 依然高いハードル
        毎日 2014年08月23日
 大手ポータルサイト「ヤフー・ジャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕記事が表示され、名誉を傷つけられたとして、京都市の男性が同サイトを運営する「ヤフー」(東京都港区)に対し、記事リンクなど検索結果の表示差し止めなどを求めた訴訟で、京都地裁=栂村明剛(つがむら・あきよし)裁判長=は8月7日、請求を棄却した。

 EU司法裁判所(ブリュッセル)が米グーグルにリンク削除を求めた「忘れられる権利」判決との関連で、国内裁判所の判断が注目されていたが、地裁は、検索エンジンによる逮捕歴のリンク削除が認められる余地を限定的に考える判断を示した。原告は、判決を不服として大阪高裁に控訴しており、上級審での判断が注目される。【尾村洋介/デジタル報道センター】

 ◇事案の概要
 男性は、2012年11月、女性を盗撮したとして京都府迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、執行猶予付き有罪判決を受けた。その後、ヤフーのサイトで自身の名前を検索すると、自身の逮捕に関する記述が表示され、名誉毀損(きそん)とプライバシーの侵害にあたるとして、損害賠償と記事の見出しなどリンク表示の差し止めを求めた。

 京都地裁とEU司法裁判所の二つのケースは、原告が(1)ニュース記事をウェブサイトに掲載しているパブリッシャー(新聞社など)ではなく、検索エンジンで記事へのリンクを表示しているプラットフォーム会社(ヤフーやグーグル)を訴えていること(2)事実が生じた時点からの状況変化(京都地裁では執行猶予判決が出たこと、EU司法裁判所では原告が債務を返済し終えたこと)も、リンク削除を求める根拠としている--点で共通点がある。

 EU司法裁判所のケースでは、「忘れられる権利」を根拠づけるEUデータ保護指令の解釈を巡り争われた。日本はこうした直接的な規定はなく、京都地裁では「名誉毀損」「プライバシー権の侵害」による不法行為(民法709条)が成立するかどうかが争点となった。原告はEU司法裁判所の判決にも言及、人格権に基づき「憲法上の幸福追求権に由来する個人の名誉、プライバシー保護の観点から、本件差し止め請求が認められる」と主張した。

 ◇判決
 地裁判決は「名誉毀損」「プライバシー侵害」とも成立しないか、違法性が阻却されるとして、原告の主張を退けた。
「忘れられる権利」に詳しい情報通信総合研究所の中島美香研究員によると、地裁判決のポイントは、検索エンジンが表示するのは、(1)リンク先のサイトの存在及び所在(URL)と「スニペット」(リンクの下に表示される元サイトの記載内容の一部)にとどまるとした点。同地裁は、そのうえで「リンク」は逮捕事実を適示したものとはいえず、「スニペット」も「検索ワードを含む部分を自動的・機械的に抜粋して表示したもの」に過ぎないとし、逮捕事実自体の適示を行っているとみるのは適当ではないとし、形式的に名誉毀損の要件を満たしていないとの判断を示した。

 ただ、リンクも「スニペット」も、読めば、誰が何をしたかは読み取ることができ、事実上、犯罪の事実を示しているのと同じではないか、という疑問は出てくるだろう。

 京都地裁はこのため、傍論として、仮に、スニペット部分が、今回の逮捕事実の適示と解される余地があった場合に、違法性が阻却されるかどうかについても検討。ここでは(1)その行為が公共の利害に関する事案に関わり、(2)専ら公益を図る目的で行われ、(3)適示された事実が真実であると証明されたときは、違法性がなく、不法行為は成立しない--という、従来の名誉毀損をめぐる「真実性・真実相当性の抗弁」などの基準を適用し、「違法性はない」と結論づけた。

 具体的には、(1)については、サンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したという特殊な態様の犯罪で社会的な関心が高い▽逮捕から1年半程度しか経過していない--として「公共の利害に関する事実」にあたるとした。(2)については、被告が検索サービスを提供する目的は、一般公衆が今回の逮捕事実のような公共の利害に関する事実の情報にアクセスしやすくするという「公益を図る目的」が含まれている、と判断した。そのうえで逮捕事実自体は真実であり、今回の検索結果により原告の社会的評価が低下するとしても、名誉毀損については違法性は免れるとした。

 また、プライバシー権の侵害という争点も同様に、仮にプライバシーが侵害されていたとしても、公益的観点から違法性は免れると結論づけた。

 ◇EU司法裁判所判決との比較
 今回の地裁判決は、日本で「忘れられる権利」に基づいて検索エンジンのリンクの削除が求められた場合、裁判所がどう判断するかという点で示唆に富む。

EU司法裁判所は、検索エンジンの運営者が、EUデータ保護指令による規制の対象となると判示。そのうえで、インターネット社会での検索エンジンの社会的影響力の大きさなどから「(新聞社などの)当該ウェブページでのデータの公表自体が適法な場合であってさえ」検索エンジン運営者が、リンク削除の責任を負う場合があるとの判断を示した。その背景には、インターネット社会では、個別ウェブページへのリンクを一括して表示することができる検索エンジンが、「忘れられる権利」のような個人の権利を保護するために規制をかける「コントロールポイント」として有用と考えるスタンスがうかがえる。

 一方、京都地裁の裁判で、原告側は「一般公衆は、インターネット上に多数存在する本件逮捕事実に関するウェブサイトの存在も所在も知らないのであり、被告の本件検索サービスによって初めて、本件逮捕事実に関するウェブサイトを目にする」などと主張したが、地裁は、インターネット社会における検索エンジンの社会的影響力には特段の言及を行わなかった。EU司法裁判所と京都地裁は、検索エンジンが自動的・機械的にデータを収集するという認識は共通しているものの、検索結果の社会的影響度に対する認識や、検索結果に対する規制のスタンスでは異なる判断を下したと言える。

 また、訴訟で「忘れられる権利」をどう取り扱うかについても、両裁判所の手法は異なる。EU司法裁判所は、過去には事実であったが、現時点では不正確となった男性の情報について、「これまでに経過した時間に照らして、当該データが不十分となり、不適切であるか、当初の適切性を喪失していたり、過剰となっていると思われるような場合には、当初は適法であったデータ処理であっても、時とともに、EUデータ保護指令に抵触するようになることもある」として、リンクの削除を認めた。

 これに対し、京都地裁判決では、時間の経過については、傍論の「違法性が阻却されるかどうか」という論点の中で、スニペットによる事実の適示が、公共の利害に関わるかどうかを判断する要素の一つとするにとどめた。同地裁は「逮捕から1年半程度しか経過していない」という言い方をしており、経過時間の長さによっては判断が変わる余地は残されているようにみえる。ただ、判決の本論部分では、リンクやスニペットは「(元ニュースとは異なり)逮捕事実の適示にあたらない」と判断したわけで、「忘れられる権利」に基づくリンクの削除は形式的にも認めづらい論理構成となっている。

●自分の逮捕歴が検索サイトに掲載!名誉棄損?
         社内弁護士森田の訴訟奮戦記 2014年8月11日
・・・・・(略)・・・ 
上記理由を理解するのに、少しだけ解説しますと、第三者に自己の名誉を棄損された場合には、民法の不法行為(709条)の条文に基づき、その第三者に対し損害賠償や名誉棄損行為の差し止めを求めることができますが、この名誉棄損は刑法にも規定があり、刑法230条の2は次の通り定めています。

「前条第1項の行為(名誉棄損行為)が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」

つまり、たとえ他人のある事実を述べて、その他人の名誉を棄損した場合でも、その事実が「公共の利害に関する事実」であり、かつ「その目的が主に公益を図るもの」ならば、その事実が真実である場合、刑法上の名誉棄損罪には問われないということです。

このことは民法でも同様に考えられており、その名誉棄損行為が公共の利害に関する事実についてであり、かつその目的が主に公益を図る目的であるならば、不法行為は成立しないと考えられています。

今回の判決では、原告男性の逮捕記事の表示は、社会的に関心の高い事件の記事であり、また、逮捕から1年半しか経過しておらず、未だその関心は薄らいでいないという意味で、公共の利害に関する事実であり、公益を図る目的もある、と認定したものと思われます。

ただ、何年経過すれば、公共性、公益性がなくなるのか、またいかなる犯罪についても本判決が妥当するのかについて、本判決は明示していないようです。

この判決を受け、男性側が控訴するかどうかは現時点では不明です。

今回のような検索サイトに自己の個人情報が表示された場合、サイト運営会社に記事の削除を求めることができるかについては、海外の裁判所では、表示の削除を命じる判決も出ているようですが、日本の裁判所では、余り争われたことはなく、争われたとしても、今回の判決のように原告の請求を認めない傾向のようです。

しかしながら、現在の検索サイトの一般の人の使用頻度やそこから生じる影響力からすれば、犯罪歴や逮捕歴等個人情報の中でも特に保護の必要性の高いものについては、当該事実発生から何年以内に削除する、というような自主基準をサイト運営会社側でも設けるべきだと思います。

●忘れられる権利:京都地裁判決の要旨 から抜粋
         毎日 2014年08月23日
・・・・・・・・・・・・(略)・・・
★当裁判所の判断
 1 争点1(本件検索結果の表示は原告の名誉を毀損するものとして、被告に不法行為が成立するか)について
 (1)本件検索結果の表示による事実の摘示
 ウ 以上のとおり、被告が本件検索結果の表示によって摘示する事実は、検索ワードである原告の氏名が含まれている複数のウェブサイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実であって、被告がスニペット部分の表示に含まれている本件逮捕事実自体を摘示しているとはいえないから、これにより被告が原告の名誉を毀損したとの原告の主張は、採用することができない。
 エ したがって、被告が本件検索結果の表示によって原告の名誉を毀損したとはいえないから、被告に原告に対する不法行為が成立するとはいえない。

 もっとも、上記判示のとおり、本件検索結果の表示のうちスニペット部分には本件逮捕事実を認識できる記載が含まれていることから、被告が本件検索結果の表示によって本件逮捕事実を自ら摘示したと解する余地がないではない。

 また、被告が本件検索結果の表示をもってした事実の摘示(検索ワードである原告の氏名を含む本件逮捕事実が記載されている複数のウェブサイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示)は、本件逮捕事実自体の摘示のように原告の社会的評価の低下に直結するとはいえないものの、そのような記載内容のウェブサイトが存在するということ自体が原告の社会的評価に悪影響を及ぼすという意味合いにおいて、原告の社会的評価を低下させる可能性があり得る。

そこで、後記(2)においては、仮に、被告に本件検索結果の表示による原告への名誉毀損が成立すると解する場合、その違法性が阻却されるかどうかにつき検討する。

 (2)違法性阻却の可否
 ア 民事上の不法行為たる名誉毀損については、(1)その行為が公共の利害に関する事実に係り、(2)専ら公益を図る目的に出た場合には、(3)摘示された事実が真実であることが証明されたときは、上記行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決)。

 イ 以下、本件検索結果の表示による事実の摘示につき上記ア(1)ないし(3)が認められるかどうかにつき、検討する。
 (ア)(1)について
 本件逮捕事実は、原告が、サンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したという特殊な行為態様の犯罪事実に係るものであり、社会的な関心が高い事柄であるといえること、原告の逮捕からいまだ1年半程度しか経過していないことに照らせば、本件逮捕事実の適示はもちろんのこと、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示についても、公共の利害に関する事実に係る行為であると認められる。
 
(イ)(2)について
 前提事実によれば、本件検索結果の表示は、本件検索サービスの利用者が検索ワードとして原告の氏名を入力することにより、自動的かつ機械的に表示されるものであると認められるから、その表示自体には被告の目的というものを観念し難い。
 しかしながら、被告が本件検索サービスを提供する目的には、一般公衆が、本件逮捕事実のような公共の利害に関する事実の情報にアクセスしやすくするという目的が含まれていると認められるから、公益を図る目的が含まれているといえる。本件検索結果の表示は、このような公益を図る目的を含む本件検索サービスの提供の結果であるから、公益を図る目的によるものといえる。

 (ウ)(3)について
 前提事実のとおり、本件逮捕事実は真実である。また、本件検素結果の表示は、本件検索サービスにおいて採用されたロボット型全文検索エンジンが、自動的かつ機械的に収集したインターネット上のウェブサイトの情報に基づき表示されたものであることに照らせぽ、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部は事実であると認められる(なお、リンク先サイトが削除されていたとしても、同サイトが存在していたことについての真実性は認められる)。

したがって、仮に、被告が本件検索結果の表示をもって本件逮捕事実を摘示していると認められるとしても、または、被告が本件検索結果の表示をもって、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部という事実を摘示したことによって、原告の社会的評価が低下すると認められるとしても、その名誉毀損については、違法性が阻却され、不法行為は成立しないというべきである。

 2 争点2(本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害するものとして、被告に不法行為が成立するか)について
 (1)被告が本件検索結果の表示によって原告のプライバシーを侵害したかどうかは、本件検索結果の表示によって被告が適示した事実が何であったかにより異なりうるが、仮に本件検索結果の表示による被告の事実の摘示によって原告のプライバシーが侵害されたとしても、(1)摘示されている事実が社会の正当な関心事であり、(2)その摘示内容・摘示方法が不当なものでない場合には、違法性が阻却されると解するのが相当である。

 (2)これを本件についてみるに、争点1における違法性阻却につき判示したのと同様の理由により、本件逮捕事実の摘示はもとより、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部という事実の摘示も、社会の正当な関心事ということができ((1))、その摘示内容・摘示方法も、本件検索サービスによる検索の結果として、リンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部を表示しているにすぎない以上、その摘示内容、摘示方法が不当なものともいえない((2))。

 (3)したがって、本件検索結果の表示による上記事実の摘示に係る原告のプライバシー侵害については、違法性が阻却され、不法行為は成立しない。

 3 争点3(損害及び因果関係)及び争点4(本件差し止め請求の可否)
 本件検索結果の表示による被告の原告に対する名誉毀損及びプライバシーの侵害については、成立しないか、または、その違法性が阻却されるというべきであるから、争点3については判断の必要がない。
 また、上記1及び2で判示したところに照らせば、本件検索結果の表示によって原告の人格権が違法に侵害されているとも認められないから、争点4に係る原告の本件差し止め請求については理由がない。

 4 結論
 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。


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