●無線談合「損賠請求を」 岐阜7消防本部に監査請求
中日新聞 2018年3月6日
消防救急無線のデジタル化を巡る入札談合で、岐阜県内の住民らが五日、公正取引委員会(公取委)の処分を受けたメーカーや代理業者に計約四億二千万円の損害賠償を払わせるよう求める住民監査請求書を、県内の七消防本部に送った。
各消防本部は二〇一六年五月までに消防救急無線をデジタル化。この際、公取委の処分を受けた沖電気工業(東京)か、その代理業者と契約を結んだ。契約には、談合があった場合は契約額の10~20%を賠償として支払うとの条項を盛り込んでいた。
公取委は一七年二月、消防救急無線のデジタル化を巡り、全国の約二百五十の契約で沖電気工業など五社が談合に関与したと認定。
同社を含む四社に独禁法違反(不当な取引制限)で総額六十二億円の課徴金納付などを命じた。
その後も賠償がされないため、住民でつくる市民団体・岐阜県民ネツトワークが全国市民オンブズマン連絡会議と連携し、住民監査請求を呼び掛けていた。請求者は、各消防本部が賠償請求しなければ住民訴訟に踏み切る方針を示している。
談合があった場合に賠償を求める条項は多くの自治体が盛り込んでいるが、実際に請求した例は長野市、千葉県野田市などわずかという。請求者は「談合業者との契約が多い岐阜を皮切りに、全国で賠償請求の動きを広めたい」と話している。
●無線談合で住民監査請求 消防「戸惑い」対応遅れ
中日新聞 2018年3月6日
消防救急デジタル無線導入を巡る談合に関わったメーカーに賠償請求すべきだとして、市民団体が五日、県内七つの消防本部に住民
監査請求書を送った。
公正取引委員会(公取委)が談合と判断した昨年二月から、 一年余り。動きがなかった自治体などの担当者は「未経験のケースに戸惑つた」などと口にした。
(写真) 住民監査請求について説明する市民団体のメンバーら 県庁で
県民ネツトワークの寺町知正代表、全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡事務局長らが、県庁で会見。「自治体に談合に対する問題意識がない。監査委員が惰眠をむさぼっている」と批判した。
住民監査請求の対象となった消防本部や自治体は、いずれも賠償請求の可能性を否定しない。
独占禁止法違反として公取委から課徴金支払い命令などを受けた、沖電気工業と契約した、羽島郡広域連合消防本部は「弁護士との調整がつき次第、速やかに賠償を請求する」と説明。時間がかかっている理由を「消防庁に関連の窓口ができると聞き、状況を見て判断しようと考えた」と弁明した。
一方、同本部以外の消防本部は、同社の機器を扱う県内の業者と契約していた。談合があった業者と直接は契約しておらず、下呂市消防本部は「約款上、違約金は取れないのではないか。損害賠償もどれだけになるか判断しづらい」と戸惑う。
岐阜市は「メーカーにどれだけ賠償を求められるか検討する」と説明。中津川市は「代理業者を相手に(賠償請求)できるかどうかも検討する」とした。
七消防本部のうち五本部は、契約書で、業者が談合に関わった際の賠償を発注額の20%としているが、中濃消防組合と中津川市は10%と割合が低い。県民ネツトワークなどは「周りの状況から考えれば少ない」とし、いずれも20%分を請求するよう求めている。
(鈴木智行、杉浦正至、兼村優希)
|