●テスラの死亡事故が残した教訓 自動運転車AI 自動運転車の事故は「原理的に」避けられない!? AI技術の死角
現代ビジネス 2016.9.22 小林 雅一作家・ジャーナリスト
今年5月に米テスラ・モーターズ製の電気自動車「モデルS」が引き起こした死亡事故が波紋を呼んでいる。同車種では「オートパイロット」と呼ばれる(限定的)自動運転機能が利用可能であり、事故を起こしたドライバーは高速道路を走行中に、この機能を利用していたからだ。
事故の具体的な様子は後述するが、自動運転中のモデルSは対向車線から左折してきた大型トレーラーと衝突。これがドライバーの死亡へとつながった。
ここ数年、グーグルや日米欧など世界各国の自動車メーカーは自動運転車の開発に注力し、一般道などで極めて長距離に及ぶ試験走行を重ねてきた。その過程で「接触事故」のような軽度のアクシデントは時折報告されたが、ドライバーや同乗者の死亡、あるいは重傷といった重大な事故はこれまで一度も起きたことはなかった。
このため順調に開発が進めば、今後、段階的に自動運転技術が自動車に導入され、2020年頃には完全な自動運転、ないしはそれに近い機能が実用化されるとの見方が強まっていた。
その矢先に起きた今回の死亡事故は、これまでの楽観的な観測に深刻な陰を落とし、自動運転の実用化に関する各社の将来計画に少なからぬ影響を与えたと見られている。
たとえば米ゼネラル・モーターズ(GM)は、今年(2016年)の秋に製品化する予定だった(限定的)自動運転車の発売を来年まで延期した模様だ。今回のテスラ車による死亡事故を受けて、自動運転機能の安全性を今以上に高めてから市場に投入する意図と見られる。
また米フォードは「(オートパイロットのような限定的な自動運転機能ではなく)ドライバーの要らない完全な自動運転機能を2021年までに実用化する。当初は一般消費者向けに発売するのではなく、(米Uberのような)配車サービス事業者(ride-hailing service)などに提供する」との計画を明らかにした。
いずれのケースでも、自動運転技術に関する、各社のこれまでの計画や開発方針が相当の見直しを迫られていることが伝わってくる。
●想定外?で事故を起こした自動運転車「グーグル・カー」
iRONNA 2016年3月1日 大西宏
グーグルの自動運転車が事故を起こしたようです。右折車線の右端、つまり日本では左折車線の左端をふさいでいた砂袋をよけようとして車線を超えたために、直進していたバスの側面にぶつかったというのです。バスの運転手は、「まさか」グーグル・カーが車線を超えてくると思わなかったのでしょうし、グーグル・カーも「まさか」バスが止まってくれないことを想定していなかったのでしょう。
グーグルの自動運転車、初の事故か バスに衝突 - WSJ
走行していた速度は2マイル/hなので、時速3.2キロと極めて低速ですが、いくら低速でも後方確認しないでレーンを超えたことになります。自動運転車はバスが減速または停止してくれることを見越してハンドルを操作してしまったのです。教習所でも教えられる初歩的なミスです。普通ならほとんどのドライバーがやっていることを、グーグル・カーのプログラムには組み込まれていなかったのです。
確かに人工知能はずいぶん進化してきました。複雑な組み合わせであるために、何年か前には初心者でも簡単に勝てた囲碁も、グーグルの研究者たちが開発したコンピュータープログラムが一流棋士を打ち負かしています。しかし、いくら囲碁が複雑だといっても、それでもフラットな盤面で、白と黒の碁石、18✕18のマトリックスでのゲームです。
車の運転は違います。他に車がなく、自分の車だけで走行しているのではなく、周囲には多くの車があり、それを運転しているのは、時には「非合理的」な行動もする人間です。だから、現実は「まさか」の連続です。強く意識しなくとも、「まさか」の危険を想定しながらドライバーは運転しています。互いに勝つことを目指している囲碁とは異なるところです。
グーグルの自動運転車
もしかすると、グーグルの言うように「自動車事故の94%が人の判断ミス」で「自動車がすべて自動運転になれば安全」なのでしょうが、人間が運転する車と混在している間は、想定外の出来事、思い込みや、違反運転などの「非合理性」にも対処が求められます。実際グーグル・カーは、追突される事故に巻き込まれています。
6年間でもらい事故14件。Google の自動運転車が追突され初の負傷者 - Engadget Japanese
一方で、運転者をアシストする安全技術はどんどん改善、進化していくことは間違いないと思います。無人の自動運転より先行して運転者が責任を追う半自動運転車の技術開発も進んできます。
意外と知らない電気自動車!今後のグーグルカーの進む道
先日大阪で歩道に突っ込み、犠牲者がでた不幸な事故も、もし自動ブレーキ装置がついていたら、もしかすると事故を防げたのかもしれません。いずれにしても、逆走を防止したり、追突や巻き込み事故を防ぐこと、また居眠り運転などへの技術の向上は社会のニーズだと思います。
グーグルカーがどの程度の安全装置を備えているのかは不明ですが、今回の事故内容からすれば、「この種の誤解は人間の運転手同士でも日常的に路上で起こるもの」(グーグル)だとしても、もし子供が飛び出してきた時にも対処できなかった疑いを感じさせます。
今回のグーグル・カーの事故も、後側方警戒支援システムがあれば防げた事故だったのかもしえません。写真は、「スバルリヤビークルディテクション」です。
安全補助の場合は、アナログな駆動や制御のメカとセンサーやプログラムの摺り合わせが極めて重要になってきます。デジタル技術とアナログ技術の融合があって、想像ですが、さらに逆走防止などでは通信技術も加わってくるのでしょう。どうも自動運転に夢を感じる風潮があるようですが、日本が得意とする技術開発で、より多くの車に安全装置を普及させることが、日本の産業強化につながってくるように思います。その弾みをつけるためにも、ぜひとも自動ブレーキ装備の義務化などの法制化も望みたいところです。
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