月刊登記情報2010年11月号(きんざい)に,特集「根抵当権の変更登記をめぐる諸問題」がある。どうやら,最近,根抵当権がホットになりつつあるようで。
その第2講では,佐々木大介「会社分割による債務承継と根抵当権の変更の登記」があり,次の記事を詳細に論評していただいている。ブログの記事を論稿等で引用されたのは初めてかもです。
cf. 平成22年4月13日付「会社分割と根抵当権」
ところで,上記と類似の問題が,根抵当権者が消滅会社となる吸収合併が行われた後に,存続会社が追加設定を行うような場合にも生じる。追加設定の際に,吸収合併により承継した根抵当権であることがわかるような表示をすべきかという問題であり,最近,NSR-2でも話題になった点である。
すなわち,追加設定物件における登記に何らかの記載がなければ,「当該根抵当権によっては,存続会社が合併前に債務者に対して有していた債権は担保されない」ということが不明であり,また,「当該根抵当権によって担保されていた消滅会社が合併前に債務者に対して有していた債権が担保されている」ということも不明なのである。私は,もちろん,所要の登記を必要とする説だが。上記特集第3講である尾原祥之「元本確定前の根抵当権者の合併と登記」では,残念ながら言及がない。
また,存続会社が合併前に取得していた特定債権を担保したいのであれば,当該特定債権を被担保債権の範囲に加える変更の登記をすべきという議論がされがちであるが,私は,逆ではないかと考えるようになった。すなわち,債権の範囲の変更契約をすることによって,債権の範囲は「リセット」されるため,「存続会社が合併前に取得していた特定債権」は,通常の「銀行取引 手形債権 小切手債権」で担保され,逆に「存続会社が合併により消滅会社から承継した特定債権」を被担保債権の範囲に加えることをしないと,当該承継債権がこぼれ落ちてしまうと考えるべきではないか,である。従来の実務とは逆転の発想なだけに,受容し難いと思われるが,いかがであろうか。
第1講は,林田幸一「債務の相続と当該債務引受に伴う根抵当権変更登記」であるが,根抵当権の債務者の相続による変更の登記に関しては,次のような新しい問題意識もある。
cf. 平成22年10月16日付「新訂 ケースブック 根抵当権登記の実務」
また,根抵当権の債務者が,株式会社Aと株式会社Bの共用である場合に,株式会社Aが吸収分割会社,株式会社Bが吸収分割承継会社となる吸収分割が行われたとき,不動産登記においては,どのような登記をすべきか,という問題もある。
この場合,債務者の変更については,必要ないかもしれないが,吸収分割によって当該根抵当権によって担保されていた債務の承継がされたのであれば,債務者Yに関する被担保債権の範囲を変更して,「年月日会社分割による債務引受(吸収分割会社X)に係る債権」を加えておく必要があるように思われる。法律上は,そのような変更の登記をしなくても担保されていると考えることもできるが,債権管理上は,将来的な担保権の実行のことを考えると,そのような形で公示すべきではないだろうか。
その第2講では,佐々木大介「会社分割による債務承継と根抵当権の変更の登記」があり,次の記事を詳細に論評していただいている。ブログの記事を論稿等で引用されたのは初めてかもです。
cf. 平成22年4月13日付「会社分割と根抵当権」
ところで,上記と類似の問題が,根抵当権者が消滅会社となる吸収合併が行われた後に,存続会社が追加設定を行うような場合にも生じる。追加設定の際に,吸収合併により承継した根抵当権であることがわかるような表示をすべきかという問題であり,最近,NSR-2でも話題になった点である。
すなわち,追加設定物件における登記に何らかの記載がなければ,「当該根抵当権によっては,存続会社が合併前に債務者に対して有していた債権は担保されない」ということが不明であり,また,「当該根抵当権によって担保されていた消滅会社が合併前に債務者に対して有していた債権が担保されている」ということも不明なのである。私は,もちろん,所要の登記を必要とする説だが。上記特集第3講である尾原祥之「元本確定前の根抵当権者の合併と登記」では,残念ながら言及がない。
また,存続会社が合併前に取得していた特定債権を担保したいのであれば,当該特定債権を被担保債権の範囲に加える変更の登記をすべきという議論がされがちであるが,私は,逆ではないかと考えるようになった。すなわち,債権の範囲の変更契約をすることによって,債権の範囲は「リセット」されるため,「存続会社が合併前に取得していた特定債権」は,通常の「銀行取引 手形債権 小切手債権」で担保され,逆に「存続会社が合併により消滅会社から承継した特定債権」を被担保債権の範囲に加えることをしないと,当該承継債権がこぼれ落ちてしまうと考えるべきではないか,である。従来の実務とは逆転の発想なだけに,受容し難いと思われるが,いかがであろうか。
第1講は,林田幸一「債務の相続と当該債務引受に伴う根抵当権変更登記」であるが,根抵当権の債務者の相続による変更の登記に関しては,次のような新しい問題意識もある。
cf. 平成22年10月16日付「新訂 ケースブック 根抵当権登記の実務」
また,根抵当権の債務者が,株式会社Aと株式会社Bの共用である場合に,株式会社Aが吸収分割会社,株式会社Bが吸収分割承継会社となる吸収分割が行われたとき,不動産登記においては,どのような登記をすべきか,という問題もある。
この場合,債務者の変更については,必要ないかもしれないが,吸収分割によって当該根抵当権によって担保されていた債務の承継がされたのであれば,債務者Yに関する被担保債権の範囲を変更して,「年月日会社分割による債務引受(吸収分割会社X)に係る債権」を加えておく必要があるように思われる。法律上は,そのような変更の登記をしなくても担保されていると考えることもできるが,債権管理上は,将来的な担保権の実行のことを考えると,そのような形で公示すべきではないだろうか。