司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

企業内司法書士(再掲)

2011-01-11 23:50:56 | 会社法(改正商法等)
 昨日(10日),近司連新人研修が終了した。受講者の皆さん,お疲れさまでした。

 さて,最終日の質疑の際に,「企業内司法書士」についての質問が出ていたが,平成22年11月3日付の記事が参考になると思うので,再掲しておく。

 これから就活をする方は,参考にしてください。

cf. 平成22年11月3日付「企業内司法書士」
※ コメント欄もぜひご覧ください。


Q.「社内弁護士」というのは近年よく耳にしますが,「社内司法書士」というのは,法令上または司法書士会の制度上、可能なのでしょうか。もし可能だとすると,どのような点に留意する必要があるのでしょうか。

A.
 司法書士の兼業に関しては,法律上明文の禁止規定はない。ただし,「司法書士は,その業務を公正・迅速・誠実に行い,かつ,品位及び秘密の保持を担保し得る限りにおいては,兼業を禁止されていない。」とされている。

cf. 平成17年5月17日付「司法書士の兼業規制」

 そして,司法書士が企業に雇用されるケースに関しては,いわゆる非司法書士の取締り(「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない」(司法書士法第73条第1項))の観点もあり,原則として,登録を認めない取扱いであるようである。

 参考になる公権解釈としては,規制改革会議「全国規模の規制改革要望に対する各省庁からの再回答について(平成19年8月15日)」における法務省再回答がある。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/accept/200706/0815/0815_1_09.xls
※ NO.5044001

「会社員(法務関連部門)を続けながら司法書士登録をし司法書士業を兼業したい」という方からの要望に関して,法務省の再回答は,次のとおりである。

「登録審査は,基準に適合しているか日本司法書士会連合会が審査するものであり,日本司法書士会連合会の審査は法務省の解釈に拘束されるものではないが,司法書士と会社員の兼業を認めた場合,当該司法書士は会社での勤務中は依頼に応ずることができず,司法書士業務で知り得た依頼人の情報が会社での業務に利用にされかねないなど,依頼に応ずる義務(司法書士法第21条),秘密保持の義務(同第24条)等の司法書士法上,司法書士に課せられている義務が遵守されなくなるおそれがあるなどの事情があるようなケースでは,司法書士と会社員の兼業を認めることが適切ではないものと考える。
 いずれにしても,登録を求める者の置かれた状況は,各人ごとに千差万別であり,登録審査は,個々の事案を考慮しつつ,個別に日本司法書士会連合会において適合性を判断するほかないと考える」


 私は,例えば,企業の法務部員のような形で「司法書士登録はするが、司法書士業務を行わない」タイプの司法書士を容認してもよいのではないかと考えるが,司法書士法第16条第1項1号が,「引き続き2年以上業務を行わないとき」は,日本司法書士会連合会は,その登録を取り消すことができると規定していることもあり,現行法上は,容易ではない。

cf. 平成20年6月20日付「第70回日司連定時総会終了」

 というわけで,認められる例がないわけではないが,現時においては,個別具体的事情に鑑みて判断される問題であり,上記法務省再回答を斟酌いただくしかない,です。
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現物出資の不動産評価額が割高の水増し増資

2011-01-11 15:54:38 | 会社法(改正商法等)
京都新聞記事
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20110109000047

 現物出資の不動産評価額が割高で,水増し増資が疑われるケースが相次いでいるらしい。

 この場合は,虚偽の登記ではなく,新株の引受人及び取締役等の価格填補責任の問題である(会社法第212条第1項,第213条第1項及び第3項)。
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公益法人等への移行の登記の事務取扱いの不可解

2011-01-11 12:10:18 | 法人制度
 公益法人等への移行の登記の事務取扱いにつき,役員の就任年月日等については,次のとおりである。

① 評議員
 従来は法定の機関ではなかったので,最初の評議員の登記につき,登記日をもって「就任」と職権で登記される。

② 監事
 従来は登記事項でなかったが,法定の機関であったので,そのまま在任する監事については,「就任年月日」又は「重任年月日」を申請により登記する。

③ 理事
 従来から登記事項であったので,そのまま在任する理事については,「就任年月日」又は「重任年月日」が職権で登記される。登記記録から明らかであるからである。

 しかし,移行の際に理事をいったん任期満了させ,移行の登記の時から新たに任期をスタートさせる例もあり,この場合は,登記日をもって「重任」と職権で登記される・・・はずである。

 しかしながら,東京法務局においては,「重任も,法的には『退任』&『就任』だから,『就任』と登記する。『重任』とは登記しない」という不可解な取扱いをしているようである。何かの間違いかと思ったが,「統一的な取扱い」らしい。

 任期満了と同時に間断なく再任される「重任」のケースを,敢えて「就任」と登記しなければならない合理的理由は全くなく,理解に苦しむ取扱いである。ちなみに,京都本局では,ちゃんと「重任」と登記される取扱いであるが。

 「重任」の場合,「就任」と区別して登記するのが実務慣行であるにもかかわらず,本件の場合のみ,「『重任』とは登記しない。『就任』で何の問題もない」と考えるのは,なぜであろう?

 即時に取扱いを改めるべきである。何かの間違いだと思われるので。
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