「株主総会決議の委任の趣旨に反して新株予約権の行使条件を変更する取締役会決議は無効であり,行使条件に違反してなされた新株予約権の行使は新株発行の無効原因となる」とされた事例として,東京地裁平成21年3月19日判決がある(東京高裁も,控訴を棄却しているようである。)。事案の詳細に関しては,下記をご参照。
cf. ClaBlog
http://blog.clairlaw.jp/?day=20091125
旬刊商事法務2009年7月25日号81頁
ただし,この事件は,平成17年改正前商法下において発行された新株予約権に関するものであり,会社法下においては,結論が真逆になると考えられるので,注意を要する。
会社法下においては,募集新株予約権の発行が株主総会の決議による必要がある場合に,「行使の条件」を定めるときは,株主総会の決議においてこれを定めることを要し,その決定を取締役会に委任することはできない,と解されている。平成17年改正前商法下においては認められていた取締役会への委任が,会社法下においては認められないと解されているのである。
cf. 拙編著・尾方宏行著「商業登記全書第4巻『新株予約権,計算』」(中央経済社)2008年10月刊 ※ 50頁
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-96140-3
したがって,募集新株予約権の発行による変更の登記における「新株予約権の行使の条件」について,「その他の行使条件については当社と新株予約権の付与対象者との間で締結する新株予約権割当契約に定めるところによる」旨の定めの登記をすることはできないと解されている。
cf. 平成22年3月10日付「新株予約権の行使の条件」
このように解すると,割当契約で定めた「その他の行使の条件」は,「新株予約権の内容」ではなく,単なる債権契約に過ぎないこととなるから,後日取締役会の決議に基づいて,当該「その他の行使の条件」を変更することは,有効になし得ることになる。すなわち,新株予約権の行使に基づく新株の発行も有効なのである。
よって,本判決の先例的意義は,乏しいように思われる。
なお,先に紹介した磯崎哲也著「起業のファイナンス」(日本実業出版社)222頁注14において,本判決について,「取締役会は・・・行使条件の変更についても(株主総会によって)委任された趣旨の範囲内において許される」とした裁判例として紹介されているが,上記のとおり,会社法下においては,そもそも「行使の条件」の決定の委任が許されないのであるから,取締役会が「新株予約権の内容」である「行使の条件」を変更することは当然許されないというべきであり,注意を要する。
なお,なお,本件取締役会決議は,会社法施行後にされているから,本裁判例も実は会社法に基づく判断であるはずである。しかしながら,参事官室の解釈及び登記実務の取扱いとは大きく異なる立場である。この点を知悉した上での判断であるとすれば,逆に先例として重要な価値を有する裁判例であると言えるのであるが,どうだろうか?
cf. ClaBlog
http://blog.clairlaw.jp/?day=20091125
旬刊商事法務2009年7月25日号81頁
ただし,この事件は,平成17年改正前商法下において発行された新株予約権に関するものであり,会社法下においては,結論が真逆になると考えられるので,注意を要する。
会社法下においては,募集新株予約権の発行が株主総会の決議による必要がある場合に,「行使の条件」を定めるときは,株主総会の決議においてこれを定めることを要し,その決定を取締役会に委任することはできない,と解されている。平成17年改正前商法下においては認められていた取締役会への委任が,会社法下においては認められないと解されているのである。
cf. 拙編著・尾方宏行著「商業登記全書第4巻『新株予約権,計算』」(中央経済社)2008年10月刊 ※ 50頁
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-96140-3
したがって,募集新株予約権の発行による変更の登記における「新株予約権の行使の条件」について,「その他の行使条件については当社と新株予約権の付与対象者との間で締結する新株予約権割当契約に定めるところによる」旨の定めの登記をすることはできないと解されている。
cf. 平成22年3月10日付「新株予約権の行使の条件」
このように解すると,割当契約で定めた「その他の行使の条件」は,「新株予約権の内容」ではなく,単なる債権契約に過ぎないこととなるから,後日取締役会の決議に基づいて,当該「その他の行使の条件」を変更することは,有効になし得ることになる。すなわち,新株予約権の行使に基づく新株の発行も有効なのである。
よって,本判決の先例的意義は,乏しいように思われる。
なお,先に紹介した磯崎哲也著「起業のファイナンス」(日本実業出版社)222頁注14において,本判決について,「取締役会は・・・行使条件の変更についても(株主総会によって)委任された趣旨の範囲内において許される」とした裁判例として紹介されているが,上記のとおり,会社法下においては,そもそも「行使の条件」の決定の委任が許されないのであるから,取締役会が「新株予約権の内容」である「行使の条件」を変更することは当然許されないというべきであり,注意を要する。
なお,なお,本件取締役会決議は,会社法施行後にされているから,本裁判例も実は会社法に基づく判断であるはずである。しかしながら,参事官室の解釈及び登記実務の取扱いとは大きく異なる立場である。この点を知悉した上での判断であるとすれば,逆に先例として重要な価値を有する裁判例であると言えるのであるが,どうだろうか?