司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

報告事項のみの定時株主総会について

2011-04-07 21:00:08 | 会社法(改正商法等)
 会計監査人設置会社については,会社法第436条第3項の承認を受けた計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして会社計算規則第163条で定める要件に該当する場合には,会社法第438条第2項の規定は,適用しない(すなわち,当該計算書類は,定時株主総会の承認を受けることを要しない。)とされている(会社法第439条前段)。この場合においては,取締役は,当該計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならない(同項後段)。

 こうして会社法第439条の適用がある株式会社においては,他に決議事項がなければ,会議の目的である事項は,同条後段の報告事項のみとなる。この場合の実務は,如何?

① 議決権行使書
 決議事項がないので,当然のことながら,株主に送付する必要はない。

② 委任状
 「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令」の適用がある株式会社であっても,決議事項がない場合には,同内閣府令の適用はない。
 したがって,代理人が出席する場合には,同内閣府令の適用が一般にない株式会社における委任状と同様に,任意の書式でよい,ということになる。

③ 定足数
 会社法には,このような場合における明文の規定は,存しない。「報告事項のみの定時株主総会」は,会社法第439条の登場により出現したわけであるが,定足数の問題は,会社法施行以後の議論の俎上には上がっていないようである。

 取締役会に関しては,開会時,討議及び議決の全過程を通じて,定足数を充足していることが必要である旨の最高裁判例がある。

cf. 最高裁昭和41年8月26日第2小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53992&hanreiKbn=02

 国会においても,開会,討議及び議決の全過程を通じて定足数を維持する必要があるとされている。

cf. 日本国憲法
第56条 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

衆議院規則
第106条 出席議員が総議員の3分の1に充たないときは、議長は、相当の時間を経て、これを計算させる。計算2回に及んでも、なお、この定数に充たないときは、議長は、延会しなければならない。
 会議中に前項の定数を欠くに至つたときは、議長は、休憩を宣告し、又は延会しなければならない。


 また,「株主総会への報告の省略」については,株主全員の同意が必要とされている(会社法第320条)。

 以上の点に鑑みると,当該報告が株主総会に対して報告すべきこととされている以上,「報告事項のみの定時株主総会」においても,株主総会の定足数を充足すべきということになるであろう。

 ただし,この場合,株主総会の普通決議の定足数(会社法第309条第1項)を充足していれば足りると解してよいであろう。したがって,定款に別段の定め(定足数の排除)がある株式会社においては,株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)1名が出席していればよいということになろう(会社法第299条第1項及び第298条第2項参照)。

【参考文献】
稲葉威雄ほか編「新訂版 実務相談株式会社法(第3巻)」(商事法務研究会)665頁以下
酒巻俊雄・龍田節編集代表「逐条解説 会社法第4巻 機関・1」(中央経済社)570頁以下
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計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取扱いについて

2011-04-07 10:17:33 | 東日本大震災関係
zakzak記事
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110406/dms1104061620027-n1.htm

 過去の通達に基づき,「計画停電による休業の場合には休業手当を支払う必要がない」旨の通知を厚生労働省が発出していることが問題視されている。

cf. 計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取扱いについて by 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001517c.html

 被災地以外の地域においても,生産調整などで,使用者が解雇に踏み切らざるを得ない企業が増加しているようであり,労働トラブルが爆発的に生じそうである。
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