「合同会社の社員の同意等」の記事を読んだ方から,LLPの組合員の同意の場合となぜ異なるのか,という指摘を受けた。
cf.
平成23年7月29日付「合同会社の社員の同意等」
「組合契約の変更の登記等の申請書には,原則として,組合契約に係る変更契約書その他の総組合員の同意を証する書面を添付する必要があるが,組合員が法人である場合には,当該組合員の職務を行うべき者のみが同意をする権限を有する」
cf. 「有限責任事業組合契約に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて(通達)」(平成17年7月29日付法務省民商第1713号)
条文は,次のとおりである。
有限責任事業組合契約に関する法律
(法人が組合員である場合の特則)
第19条 法人が組合員である場合には、当該法人は、当該組合員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の組合員に通知しなければならない。
2 【略】
会社法
(法人が業務を執行する社員である場合の特則)
第598条 法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければならない。
2 【略】
LLPの組合員は,全員が業務を執行する権利を有し,義務を負う(LLP法第13条第1項)。すなわち,組合員は,何らかの形で業務執行を行うことが必要であり,「業務を執行しない」組合員を存在させることはできない。
法人が組合員である場合に,当該組合員の職務を行うべき者は,「事業に関し包括的な権限を有し・・・原則,会社法第362条第4項第3号の「重要な使用人」に当たる」が,「内部的な決裁規程を設けている場合などにおいては,重要な使用人に当たらないことと解釈することが適当である」と考えられている。
cf.
平成21年1月20日付「経済産業省、「LLPに関する40の質問と40の答え(FAQ)」にQ&Aを追加」
すなわち,支配人とは異なり,包括的な代理権限を有するわけではないのである。
したがって,有限責任事業組合契約に関する法律第19条第1項の「組合員の職務」とは,あくまで「組合の業務の執行に関する職務」に限定されるはずであり,組合の根本に関わる事項の決定(組合契約の変更契約の締結,解散の決定等)については,職務執行者に同意権限はなく,法人たる組合員の代表者に同意権限があると考えるべきである。
持分会社において,社員全員が業務執行権限を有する場合,先の記事の区別(代表者の同意 or 職務執行者の同意)が不要となるかというとそうではなく,やはり区別して考えるべきであり,この理は,LLPの組合員の同意の場面においても,同様に区別して考えるべきである。
というわけで,上記通達の「組合員が法人である場合には,当該組合員の職務を行うべき者のみが同意をする権限を有する」の部分に,疑問を呈しておく。