司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

法制審議会会社法制部会第11回会議(平成23年7月27日開催)

2011-07-30 16:28:53 | 会社法(改正商法等)
法制審議会会社法制部会第11回会議(平成23年7月27日開催)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900081.html

 親子会社に関する規律に関する論点のうち以下のものについて,審議がされた。

(1)親会社株主の保護に関する論点
  多重代表訴訟,子会社に関する意思決定への親会社株主の関与等
(2)子会社少数株主・債権者の保護に関する論点
  子会社少数株主の保護,子会社債権者の保護
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商業登記の添付書面としての登記事項証明書の有効期限

2011-07-30 15:50:39 | 会社法(改正商法等)
 商業登記の添付書面としての登記事項証明書は,必ず3か月以内のものでなければならないのか?

商業登記規則
 (登記事項証明書等の有効期間)
第36条の2 申請書に添付すべき登記事項証明書及び登記所が作成した印鑑の証明書は,その作成後三月以内のものに限る。

 上記の規定は,会社法施行に伴い,法人が持分会社の代表者となることができるようになったことから,当該法人の登記事項証明書や印鑑証明書を添付しなければならない旨の規定が置かれたことに対応して,設けられたものである(平成18年法務省令第15号)。

 当時の解説(例えば,月刊登記情報2006年5月号79頁)では,「本条の規定は,商登法や商登規の明文の規定により要求される添付書面についてのみ適用がある」とされている。

 例えば,商業登記法第94条第2号イ,第54条第2項第2号のような場合である。

 したがって,例えば,取締役について後見開始の審判がされ,資格喪失退任による変更の登記を申請する場合において,後見の登記事項証明書を添付するときは,明文の規定により要求されているものではない(商業登記法第54条第4項参照)ことから,商業登記規則第36条の2の規定の適用はなく,3か月以内のものであることを要しない,と解される。

cf.西田淳二商事課法規課長ほか著「会社法の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いに係る関係政省令の解説」 (旬刊商事法務第1767号(2006年5月25日号)25頁)
※ 上掲月刊登記情報2006年5月号79頁と同内容。
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LLPの組合員の同意

2011-07-30 14:21:16 | 会社法(改正商法等)
 「合同会社の社員の同意等」の記事を読んだ方から,LLPの組合員の同意の場合となぜ異なるのか,という指摘を受けた。

cf. 平成23年7月29日付「合同会社の社員の同意等」

「組合契約の変更の登記等の申請書には,原則として,組合契約に係る変更契約書その他の総組合員の同意を証する書面を添付する必要があるが,組合員が法人である場合には,当該組合員の職務を行うべき者のみが同意をする権限を有する」
cf. 「有限責任事業組合契約に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて(通達)」(平成17年7月29日付法務省民商第1713号)


 条文は,次のとおりである。

有限責任事業組合契約に関する法律
 (法人が組合員である場合の特則)
第19条 法人が組合員である場合には、当該法人は、当該組合員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の組合員に通知しなければならない。
2 【略】

会社法
 (法人が業務を執行する社員である場合の特則)
第598条 法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければならない。
2 【略】


 LLPの組合員は,全員が業務を執行する権利を有し,義務を負う(LLP法第13条第1項)。すなわち,組合員は,何らかの形で業務執行を行うことが必要であり,「業務を執行しない」組合員を存在させることはできない。

 法人が組合員である場合に,当該組合員の職務を行うべき者は,「事業に関し包括的な権限を有し・・・原則,会社法第362条第4項第3号の「重要な使用人」に当たる」が,「内部的な決裁規程を設けている場合などにおいては,重要な使用人に当たらないことと解釈することが適当である」と考えられている。

cf. 平成21年1月20日付「経済産業省、「LLPに関する40の質問と40の答え(FAQ)」にQ&Aを追加」

 すなわち,支配人とは異なり,包括的な代理権限を有するわけではないのである。

 したがって,有限責任事業組合契約に関する法律第19条第1項の「組合員の職務」とは,あくまで「組合の業務の執行に関する職務」に限定されるはずであり,組合の根本に関わる事項の決定(組合契約の変更契約の締結,解散の決定等)については,職務執行者に同意権限はなく,法人たる組合員の代表者に同意権限があると考えるべきである。

 持分会社において,社員全員が業務執行権限を有する場合,先の記事の区別(代表者の同意 or 職務執行者の同意)が不要となるかというとそうではなく,やはり区別して考えるべきであり,この理は,LLPの組合員の同意の場面においても,同様に区別して考えるべきである。

 というわけで,上記通達の「組合員が法人である場合には,当該組合員の職務を行うべき者のみが同意をする権限を有する」の部分に,疑問を呈しておく。
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LLPの組合員の地位を第三者に譲渡することは可能か

2011-07-30 11:01:38 | 会社法(改正商法等)
経済産業省「LLPに関する40の質問と40の答え(FAQ)の追加(問27)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/llpq27hosoku.pdf

 経済産業省の「LLPに関する40の質問と40の答え(FAQ)」の「問27 組合員の地位を第三者に譲渡することは可能か」に,大幅に説明が追加された。

 有限責任事業組合法の施行当時の登記通達(「有限責任事業組合契約に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて(通達)」(平成17年7月29日付法務省民商第1713号))では,「組合員の地位の譲渡」について言及がなかったが,本Q&Aによれば,「組合員の地位を譲渡する場合は,脱退と加入の手続を行う必要はない」のであるから,組合の登記の変更の登記に際しては,譲渡者については「組合員の地位の譲渡」,譲受者については「組合員の地位の譲受け」などを変更の原因として登記することになると考えられる。

 不動産登記に関しては,「組合員の地位の譲渡に伴い不動産の持分移転の登記を行う場合には,添付書類として・・・」とあるが,実体法上の登記原因を証する書面として,司法書士がこれらの書類を確認する必要はあるが,本来,組合員の肩書き付けの登記は許容されていないのであるから,もっとシンプルな内容の「登記原因証明情報」を作成して,添付することでよいと思われる。

cf. 平成17年7月28日付「LLPと不動産登記(通達)」

 Q&Aの末尾には「他の組合員の同意により、組合員の地位の譲渡を許容するとともに,当該不動産が組合財産に属することを証する場合のひな型」が示されているが,不動産登記における登記原因証明情報として,ここまでの内容(実体法上は理想的である。)を要求するのは,組合員の肩書き付けの登記を許容しない取扱いと背理するように思うのだが。

 いずれにしても,登記実務の取扱いに関しては,商事課長通知と民事第二課長通知により周知されるのが望ましいであろう。

 なお,登記研究第760号(平成23年6月号)の質疑応答【7923】で,このような場合に,「組合員の地位の譲渡を原因とする共有持分の移転の登記をすることができる」とある。

【参考】
旧 問27(答)
1.LLPは人的な共同事業体であり、組合員としての地位を第三者に譲渡することは想定していませんが、他の組合員の全員一致が得られれば、地位を第三者に譲渡し、新しい組合員として迎え入れることは可能です。
(以上)
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