旬刊商事法務2016年4月5日号に,三浦亮太弁護士「監査等委員会設置会社への移行および移行後の株主総会の留意点」が掲載されている。
1.「移行に際して監査役の責任を免除する定款の規定を削除してしまうと,監査役であった者の責任を免除する際に,その根拠となる定款の規定がないために責任の免除ができない可能性が指摘されており」(15頁)
実際,定款変更の実務としては,移行前の監査役の責任の免除に関する規定を削除すると共に,下記のような附則を設けているケースが多い。
附則
(監査等委員会設置会社移行前の監査役の責任免除経過措置)
1 当会社は,第〇期定時株主総会終結前の行為に関する会社法第423条第1項所定の監査役(監査役であったものを含む。)の損害賠償責任を,法令の限度において,取締役会の決議によって免除することができる。
2 第〇期定時株主総会終結前の監査役(監査役であったものを含む。)の行為に関する会社法第423条第1項の賠償責任を限定する契約については,なお同定時株主総会の決議による変更前の定款第〇条(監査役の責任免除等)の定めるところによる。
平成26年改正会社法においては,「取締役等の責任の一部の免除等に関する経過措置」として附則第16条の規定があるわけだが,いわゆる「解凍理論」によると,定款の規定の削除によって,この「なお従前の例による」状態も解消されてしまうおそれがあるということであろう。
cf. 平成26年改正附則
(取締役等の責任の一部の免除等に関する経過措置)
第16条 取締役,会計参与,監査役,執行役又は会計監査人の施行日前の行為に基づく責任の一部の免除及び当該責任の限度に関する契約については,新会社法第四百二十五条から第四百二十七条までの規定にかかわらず,なお従前の例による。この場合において,当該責任の一部の免除をしようとする時に監査等委員会設置会社(新会社法第二条第十一号の二に規定する監査等委員会設置会社をいう。)である株式会社についての旧会社法第四百二十五条第三項(旧会社法第四百二十六条第二項及び第四百二十七条第三項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定の適用については,旧会社法第四百二十五条第三項中「監査役設置会社又は委員会設置会社」とあるのは「監査等委員会設置会社(会社法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第九十号)による改正後の会社法(以下この項において「新会社法」という。)第二条第十一号の二に規定する監査等委員会設置会社をいう。)」と,「次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ,当該各号に定める者」とあるのは「各監査等委員(新会社法第三十八条第二項に規定する監査等委員をいう。)」とする。
上記定款附則の経過措置については,登記による公示があってもよいと思われるが,「監査役設置会社」でない以上,やはり従来の登記を抹消して終わりであろうか。
ちなみに,「解凍理論」については,こちらを御参照。
cf.
平成18年1月27日付け「会社法の施行前後における法律関係をめぐる諸問題(上)」
2.「監査等委員以外の取締役を補欠の監査等委員として選任しておくことも可能である」(上掲16頁)。
なるほどね。