司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「伝染病隔離者遺言の再考・再生に向けて ─コロナ禍の今」

2021-10-25 19:56:10 | 民法改正
月報司法書士2021年7月号
https://www.shiho-shoshi.or.jp/monthlyrep/53364/

 上記に,特集「遺言書作成・基礎の基礎」があり,松尾知子「伝染病隔離者遺言の再考・再生に向けて ─コロナ禍の今」が掲載されている。民法第977条に関する稀有の論考である。

民法
 (伝染病隔離者の遺言)
第977条 伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。

 不思議な条文であると思っていたが,

「現在の防疫業務は政府と地方自治体が当たるが、戦前は感染症対策も警察の重要任務で、多くの犠牲者も出ていた・・・・・警察行政は戦前、特別高等警察を所管する「警保局」や、地方行財政を担当する「地方局」を持つ内務省に管轄された。防疫は警保局の仕事で、感染症が流行すれば、現在の厚生労働省のように対策や予防広報などで活動した。」(後掲東京新聞記事)

ということだったようだ。

cf. 東京新聞記事
https://www.tokyo-np.co.jp/article/17239

福山道義「衛生警察行政の転換点(昭和17年)」
https://fukuoka-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=3034&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

 民法第977条の立法事実といえるであろうが,ということであれば,現代においては,「条文自体の存在意義が問われる」(上掲月報司法書士24頁)といえようか。
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