司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「司法書士による遺産承継業務の実務の課題と展望」

2023-08-01 16:30:21 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 市民と法2023年8月号に,一般社団法人日本財産管理協会の研修会を文字起こしした「司法書士による遺産承継業務の実務の課題と展望」が掲載されている。

 座談会のパネラー及び講演という形で,山野目教授のコメントが掲載されているが,講演の部分で,「立法論としての司法書士法改正」について言及されている。

 司法書士法改正により,「すべての知れている相続人から依頼を受け,それら相続人らの遺産の分割の協議を仲介することを,法3条の業務とすることができるものとする」を実現するためのプロセスに関するコメントである。

 令和4年8月3日に開催された日司連150周年シンポジウムの基調講演で,山野目教授がさらりと触れられた点であるが,それを敷衍していただいている感である。

 実は,司法書士法改正大綱の議論の過程では,第2次案までは論点に上がっていたのであるが・・・。

 とまれ,ぜひ御一読を。
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AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について

2023-08-01 13:08:52 | いろいろ
AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について by 法務省
https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00134.html

「弁護士法第72条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関し、一般に、「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうとされるところ、同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び…行政庁に対する不服申立事件」に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するものであるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられ、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。」


 弁護士法第72条違反の問題について,「事件性必要説」が改めて明示されている。
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出席株主全員の賛成で決議が成立する旨の定款規定と総会決議の取消し

2023-08-01 09:32:02 | 会社法(改正商法等)
東京高裁令和3年4月22日判決
http://lex.lawlibrary.jp/commentary/pdf/z18817009-00-051632232_tkc.pdf

「本判決は、定款で株主総会決議の成立に出席株主全員の賛成が必要であると定める会社において、計算書類の承認決議は、定款の定めが無効であるとして取り消し、取締役選任決議と退職慰労金の承認決議は、定款の定めが有効であるとして取消を認めなかった事例である」(上掲記事)

 この点,江頭憲治郎「株式会社法(第8版)」(有斐閣)371頁においては,

「頭数要件を加えるとか、株主全員の同意を決議成立要件とする等の定款の定めも、原則として有効と解すべきである。
 しかし、特定の決議事項につき特定の形に決議要件を加する定款の規定が無効であることはあり得る。とくに、定時株主総会において必ず決議すべき事項(計算書類の確定等)につき株主全員の同意が要求されると、閉鎖型のタイプの会社でも決議が成立しないおそれが生ずるので、当該定款は無効と解すべきである。これに対し、取締役の選任・解任につき株主全員の同意を要求する定款(森本・212頁注3はこれを無効とする)は、閉鎖型のタイプの会社において有用であり、かつ、たとい株主総会決議の成立が不可能でも代替手段があるので(会社854条-856条・346条)、無効と解する必要はない。」

とあるが,上記東京高裁判決は,この見解に沿うものである。

 なお,取締役の選任決議(会社法第341条)に関して,定足数の要件に頭数要件を定めた定款規定を無効とした東京高裁令和4年10月31日判決が出ているようだ。
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