司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会計監査人設置会社が非設置会社に移行する場合

2023-08-07 15:14:18 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務2023年7月5日号に,実務問答会社法第75回として,内田修平「事業年度末日後に会計監査人非設置会社かつ非公開会社となった株式会社の事業報告及び注記表の記載事項」が掲載されている。

 設例は,「ある事業年度の末日時点で会計監査人設置会社かつ公開会社であった株式会社が,その後,当該事業年度に係る事業報告および計算書類の作成前に,会計監査人非設置会社かつ非公開会社となった場合」である。事業年度末日後に非公開取引等によって会社の属性に変更が生じる場合が念頭にあるようである。

 ところで,事業年度の末日時点で「大会社」であれば,その後当該事業年度に関する定時株主総会までの間に,資本金の額が5億円未満になったり,負債総額が200億円未満になったりしたとしても,翌年の定時株主総会の終結の時までは「大会社」のままであり,会計監査人非設置会社となることはできない。したがって,設例は,「大会社ではない」が大前提であるようである。

 この「大会社ではない」を前提に,設例の株式会社が会計監査人非設置会社となることができるのは,

1.監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社である場合に,監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止すると共に,会計監査人を置く旨の定款の定めも廃止したとき

2.1以外の場合に,法律上の強制ではなく,任意に会計監査人を置く旨の定款の定めを設けていた株式会社が,この定めを廃止したとき

というケースである。

 上掲実務問答は,会計に関する解説が中心であるが,前提として上記に関する言及がある方がわかりやすかったのではないか。
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取締役会の書面決議と特別利害関係取締役

2023-08-07 14:26:27 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務2023年7月5日号に,実務問答会社法第75回として,内田修平「取締役会の書面決議と特別利害関係取締役」が掲載されている。

 株式会社が取締役会の書面決議を行うに当たり,決議事項について特別利害関係を有するか否かが明確でない取締役からも念のため書面による同意を得ておくべきかという問題である。

 結論としては,「念のため書面同意を得ておくことも許容される」「仮にその後当該取締役が特別利害関係を有していたことが明らかになったとしても,書面決議の適法性および効力には影響を及ぼさない」(上掲誌42頁)と述べられている。

 会議が現実に開催されておらず,特別利害関係取締役が他の取締役に不当な影響力を行使する場面が形式的にはないので,妥当であろう。

 登記実務としては,不動産登記に関して,利益相反取引を承認する取締役会のみなし決議において,このような問題が生じ得る。通常は,一見明らかであるが,グレイな場合の参考になろう。

 ところで,書面決議の提案者が特別利害関係取締役である場合については,明確な言及はないが,「特別利害関係を有する取締役が他の取締役に対して書面同意に応じるよう不当な影響力を行使すること(括弧内省略)は,会社法369条の趣旨に反し,許されない」(上掲誌42頁)とあるように,好ましいことではないであろう。現実開催の場合に議長から外す理からすれば,特別利害関係取締役が提案者となることも避けるべきであろう。
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成年後見人の報酬算定,2025年4月から運用を改善へ

2023-08-07 12:10:08 | 家事事件(成年後見等)
福祉新聞記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/a38a016f757956d1a53d9a1e4510f124fdc58a3b

 最高裁は,

1.報告書式の変更
2.身上保護事務の評価
3.財産管理事務の評価
4.予測可能性の確保

の4点を中心に現実的にできることから運用を改善して行く方向性であるようだ。

 財産僅少次案における報酬の確保についても,問題点として取り上げられている。


cf. 成年後見制度利用促進専門家会議(第二期基本計画期間)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212875_00007.html
※ 資料5 最高裁配付資料
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