司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

モデル定款

2024-12-01 13:23:22 | 会社法(改正商法等)
 発起人1名&取締役1名の株式会社のミニマムのモデル定款を突き詰めれば,以下のとおりとなろう。
※ 公証人の手数料1万5000円にも対応している。


株式会社〇〇定款

   第1章 総則

 (商号)
第1条 当会社は,株式会社〇〇と称する。

 (目的)
第2条 当会社は,次の事業を営むことを目的とする。
 (1) 〇〇業
 (2) 〇〇業
 ・・・
 (5) 前各号に附帯関連する一切の事業

 (本店の所在地)
第3条 当会社は,本店を東京都〇〇区に置く。

 (公告方法)
第4条 当会社の公告方法は,官報に掲載する方法とする。

   第2章 株式

 (発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は,〇〇株とする。

 (株式の譲渡制限)
第6条 当会社の株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を受けなければならない。
2 前項の承認機関は,株主総会とする。

   第3章 取締役

 (取締役の任期)
第7条 取締役の任期は,選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

   第4章 計算

 (事業年度)
第8条 当会社の事業年度は,毎年4月1日から翌年3月31日までとする。

   第5章 附則

 (設立に際して発行する株式等)
第9条 当会社の設立に際して発行する株式(以下「設立時発行株式」という。)の総数は,〇〇株とし,発起人がその全部を引き受ける。
2 発起人が前項の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額は,1株につき金1万円とする。

 (設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第10条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は,金〇〇万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は,金〇〇万円とする。

 (最初の事業年度)
第11条 当会社の最初の事業年度は,当会社成立の日から令和〇年3月31日までとする。

 (発起人の氏名及び住所等)
第12条 発起人の氏名及び住所並びに発起人が割当てを受け,引き受けた設立時発行株式の数は,次のとおりである。
     東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号
        甲野一郎
        株式〇〇株

 以上,株式会社〇〇設立のため,この定款を作成し,発起人が次に記名押印する。

(以下略)

 上記第9条第1項の設立時発行株式の総数については,「会社法では、出資される財産の価額(又はその最低額)を定めれば足りる(会社27条4項)とした上で、設立時発行株式に係る事項は、設立の過程で適切に定めることとしている・・・・・設立時の発行株式数は任意的記載事項となったことから、これが変更される可能性もあることを想定して定款に記載せず、発起人が割当てを受ける株式数を発起人全員の同意によって定める(会社32条1項)ことを選択するのがよい場合もありえる」(後掲「会社法定款事例集」245頁)として,最近の定款にはほとんど記載されていないが,改正公証人手数料令(1万5000円)に対応するには必要な記載事項である。なお,同書355~356頁掲載のモデルA-2は,この条項が取り上げられており,改正政令にも適合した内容である。

※ 「会社の設立に際して発行する株式の総数」は,平成17年改正前商法時代は,定款の絶対的記載事項であった(同商法第166条第1項第6号)。

cf. 拙編著「会社法定款事例集(第4版)」(日本加除出版)
https://www.kajo.co.jp/c/book/07/0704/40306000004

【追記】
 一般向けの書籍ではあるが,「よくわかる株式会社のつくり方と運営」(成美堂出版)87~89頁掲載の定款例は,「発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける」旨の記載があり,資本金の額に関する定めもあって,改正政令にも適合した内容である。
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公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について

2024-12-01 05:40:50 | 会社法(改正商法等)
公証人手数料令の一部を改正する政令の公布について by 日公連
https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/20241122.html

 改正政令は,本日施行である。

「経過措置について、新制度は、定款認証の嘱託時(電子定款は登記・供託 オンライン申請システムにより受付処理された時、紙定款は認証当日に公証役場窓口で定款認証の嘱託の受付がされた時)が令和6年11月30日以前である場合は、なお従前の例によることになります。したがって、定款の内容が新制度における手数料の減額の対象となっているものについて、認証自体が同年12月1日以降に行われた場合であっても、嘱託が同年11月30日以前である限り、手数料は改正前の手数料令第35条第1号が適用されて3万円となります。」

 対象となる事案については,却下してもらって,もう一度申請し直しましょう。
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「解散及び清算結了の登記について」

2024-12-01 05:09:25 | 会社法(改正商法等)
 昨日(11月30日)は,日司連中部ブロック会東海地区会員研修会で,「解散及び清算結了の登記について」をお話しました。

 解散の登記の場面でも,併せて「清算人の登記又は代表清算人の就任による変更の登記」を申請することから,「代表者住所の非表示措置」の要否が問題となり,冒頭,その辺りも詳説。

 お世話になった先生方,ありがとうございました。
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「非公開会社における株式の譲渡承認手続の再検討」

2024-12-01 05:01:07 | 会社法(改正商法等)
商法・会社法研究ノート 第5回
非公開会社における株式の譲渡承認手続の再検討
/青山学院大学法学部准教授 増田 友樹
https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/202310_620_08.pdf
※ 月報司法書士2023年10月号所収

「非公開会社における譲渡承認手続は、閉鎖性の維持や株主間の信頼関係の保護という制度趣旨からは必ずしも十分に説明できない。そのような制度趣旨を徹底するのであれば、現在の譲渡承認手続は本文で述べたような修正を行う必要がある。また、現在の譲渡承認手続を前提にするのであれば、その制度趣旨は「譲渡承認手続を通じた経営者による支配権の変動のコントロール」だと理解すべきである。」(上掲論稿)
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「合同会社の社員の除名と持分払戻請求ー除名による退社と持分払戻請求権を失う旨の定款規定の有効性ー」

2024-12-01 04:58:51 | 会社法(改正商法等)
商法・会社法研究ノート 第11回 合同会社の社員の除名と持分払戻請求
─除名による退社と持分払戻請求権を失う旨の定款規定の有効性─
/慶應義塾大学法学部教授 南 健悟
https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/09/202404_626_09.pdf
※ 月報司法書士2024年4月号所収

「ところで、このような本稿の結論からすると、一般論としては妥当するとしても、個別具体的な事案が生じた場合に、このような解釈をするためには、除名請求と同時に、例えば、会社法596条に基づく損害賠償請求訴訟を同時並行で追行する必要があるものと思われる。このような同時並行での訴訟追行が果たして可能であるのか、また、除名判決が先に確定し、退社員に対する損害賠償請求訴訟の判決が遅れるような場合には、会社法611条5 項に基づく法定利息により結果的に払戻額が大きくなる可能性もある。その意味で、実務上、このような考え方がワークするのかは改めて検討する必要があるように思われる。」(上掲論稿)
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