本日,連発文書「不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消登記にかかる照会について(お知らせ)」が発出されている。
さて,
相続登記等の不動産登記の依頼を受けた際に,登記記録を見ると,明治時代に設定登記がされた抵当権や地上権等の登記が付いたままというケースに遭遇することがままあると思われる。
明治時代の抵当権であるから,抵当権者が個人であれば,おそらくお亡くなりである。だからといって,「不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消だ!」と即断することなかれ。
不動産登記の申請は,共同申請が大原則であり,抵当権抹消登記について司法書士が依頼を受ける場合,登記権利者(所有者)と登記義務者(抵当権者)の双方から委任を受ける必要があるからである。
登記権利者(所有者)が抵当権者の相続人を知っていれば,所有者自ら話をまとめてもらって,抵当権者の相続人からも依頼(抵当権の相続登記手続の委任)を受けることになれば,職務上請求により戸籍事項証明書等を取得することができることになる。その上で,(1)抵当権の相続登記,(2)抵当権の抹消登記,の申請という流れとなる。
登記権利者(所有者)が抵当権者の相続人の存在等を知らなければ・・・登記権利者(所有者)に探索してもらう必要がある(実際は,司法書士がその実務を担うことになるであろうが。)。
まずは,登記簿上の住所地を調査することになるが,当該住所地に不存在である場合には・・・登記簿上の住所を手がかりに,抵当権者の住民票や戸籍等を調査することになるであろう。この場合,登記権利者(所有者)は,戸籍法等の第三者請求の要件(自らの権利行使のため)を満たすので,第三者請求をすることは可能であるが,司法書士としては何ら業務に関する委任を受けているわけではないので,職務上請求をすることはできないと考えられる。登記権利者(所有者)から委任状の交付を受けて,代理人として動くことになるであろう。
その結果,不在住&不在籍ということであれば,不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消登記が選択肢として浮上することになるであろうし,抵当権者の相続人の存在が明らかになれば,登記権利者(所有者)が当該相続人と連絡をとって,上記のように共同申請の手続をとることになるであろう。
登記権利者(所有者)による登記義務者(抵当権者の相続人)との連絡調整がうまく行かない場合には,民事訴訟による抹消登記請求を行うことが選択肢となる。簡裁訴訟代理等関係業務の範囲内であれば,司法書士が訴訟代理人として訴訟を追行することが考えられる。仮にもっと早い段階(登記簿上の住所地を調査して,抵当権者が当該住所に不存在であることが判明した時点)で簡裁訴訟代理等関係業務の委任を受ければ,職務上の請求により戸籍等の調査をすることも可である。
まとめると,司法書士が職務上請求をすることが可能となるのは,
(1)依頼者が自ら戸籍法等の第三者請求が可能であること
(2)司法書士が当該依頼者から司法書士法に定める業務の依頼を受けること
の2点が満たされた場合である。
(2)については,漠然と「登記権利者(所有者)から抹消登記の委任を受けた」では足りない。不動産登記は,共同申請が大原則であり,登記義務者(抵当権者)の権利の保護も図られるべき点を踏まえ,職務上請求に際しては,何の業務の委任を受けているのか(職務上請求用紙の記載事項である。)を明確にする必要がある。
このように考えると,「不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消」手続というのは,抵当権の登記名義人について戸籍等の調査を経た上で,不在籍証明が出たような場合に限られることになる。
抹消登記は,既に権利は消滅しているが故に,とかく軽く考えられがちであるが,司法書士としては,登記義務者(抵当権者)からも委任を受け得る立場として,適切な執務対応が求められる。
くれぐれも「『宛所に尋ね当たらず』の葉書一枚があればよい」と考えてはならないというべきである。
なお,先般成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)による不動産登記法の改正によって,次の改正がされた。
〇 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化
不動産登記法第70条第1項及び第2項に規定する公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例として、次のような規律を設けるものとする。
不動産登記法第70条第1項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。
したがって,不動産登記法第70条第3項後段の規定の適用場面においても,同様に,「相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しない」ことが要件となり得るであろう。
さて,
相続登記等の不動産登記の依頼を受けた際に,登記記録を見ると,明治時代に設定登記がされた抵当権や地上権等の登記が付いたままというケースに遭遇することがままあると思われる。
明治時代の抵当権であるから,抵当権者が個人であれば,おそらくお亡くなりである。だからといって,「不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消だ!」と即断することなかれ。
不動産登記の申請は,共同申請が大原則であり,抵当権抹消登記について司法書士が依頼を受ける場合,登記権利者(所有者)と登記義務者(抵当権者)の双方から委任を受ける必要があるからである。
登記権利者(所有者)が抵当権者の相続人を知っていれば,所有者自ら話をまとめてもらって,抵当権者の相続人からも依頼(抵当権の相続登記手続の委任)を受けることになれば,職務上請求により戸籍事項証明書等を取得することができることになる。その上で,(1)抵当権の相続登記,(2)抵当権の抹消登記,の申請という流れとなる。
登記権利者(所有者)が抵当権者の相続人の存在等を知らなければ・・・登記権利者(所有者)に探索してもらう必要がある(実際は,司法書士がその実務を担うことになるであろうが。)。
まずは,登記簿上の住所地を調査することになるが,当該住所地に不存在である場合には・・・登記簿上の住所を手がかりに,抵当権者の住民票や戸籍等を調査することになるであろう。この場合,登記権利者(所有者)は,戸籍法等の第三者請求の要件(自らの権利行使のため)を満たすので,第三者請求をすることは可能であるが,司法書士としては何ら業務に関する委任を受けているわけではないので,職務上請求をすることはできないと考えられる。登記権利者(所有者)から委任状の交付を受けて,代理人として動くことになるであろう。
その結果,不在住&不在籍ということであれば,不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消登記が選択肢として浮上することになるであろうし,抵当権者の相続人の存在が明らかになれば,登記権利者(所有者)が当該相続人と連絡をとって,上記のように共同申請の手続をとることになるであろう。
登記権利者(所有者)による登記義務者(抵当権者の相続人)との連絡調整がうまく行かない場合には,民事訴訟による抹消登記請求を行うことが選択肢となる。簡裁訴訟代理等関係業務の範囲内であれば,司法書士が訴訟代理人として訴訟を追行することが考えられる。仮にもっと早い段階(登記簿上の住所地を調査して,抵当権者が当該住所に不存在であることが判明した時点)で簡裁訴訟代理等関係業務の委任を受ければ,職務上の請求により戸籍等の調査をすることも可である。
まとめると,司法書士が職務上請求をすることが可能となるのは,
(1)依頼者が自ら戸籍法等の第三者請求が可能であること
(2)司法書士が当該依頼者から司法書士法に定める業務の依頼を受けること
の2点が満たされた場合である。
(2)については,漠然と「登記権利者(所有者)から抹消登記の委任を受けた」では足りない。不動産登記は,共同申請が大原則であり,登記義務者(抵当権者)の権利の保護も図られるべき点を踏まえ,職務上請求に際しては,何の業務の委任を受けているのか(職務上請求用紙の記載事項である。)を明確にする必要がある。
このように考えると,「不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消」手続というのは,抵当権の登記名義人について戸籍等の調査を経た上で,不在籍証明が出たような場合に限られることになる。
抹消登記は,既に権利は消滅しているが故に,とかく軽く考えられがちであるが,司法書士としては,登記義務者(抵当権者)からも委任を受け得る立場として,適切な執務対応が求められる。
くれぐれも「『宛所に尋ね当たらず』の葉書一枚があればよい」と考えてはならないというべきである。
なお,先般成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)による不動産登記法の改正によって,次の改正がされた。
〇 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化
不動産登記法第70条第1項及び第2項に規定する公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例として、次のような規律を設けるものとする。
不動産登記法第70条第1項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。
したがって,不動産登記法第70条第3項後段の規定の適用場面においても,同様に,「相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しない」ことが要件となり得るであろう。
いつも拝見させていただいております。
「漠然と『登記権利者(所有者)から抹消登記の委任を受けた』では足りない。」とのことですが、
『司法書士のための戸籍謄本・住民票の写し等の交付請求の手引き(第3版)(平成31年3月)』の25ページには、職務上請求できるかのような記載があります。
どちらが相当かは分かりませんが、とりあえず情報提供まで。