tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

自民税調「貯蓄から投資へ」を打ち出す(続き)

2019年10月20日 10時51分32秒 | 経済
自民税調「貯蓄から投資へ」を打ち出す(続き)
自民税調の「貯蓄から投資へ」の第二の柱は、1800兆円余の個人貯蓄を預貯金から株式などの証券投資に移行させ経済の活性化を狙うという事のようです。

 よく指摘されますように日本の貯蓄は預貯金中心、アメリカは株式等の証券投資が中心というのは阿蘇のとおりで、日本では個人貯蓄の53%が現金・預金、株式、投信等は14%で、アメリカは現金・預金は13%、株式・投信等が46%といった所です(日銀資料)。

 ということで個人貯蓄を株式や投信等の投資活動に振り向ければ、日本経済は大いに活性化するという狙いのようです。
 手段としては、NISA・つみたてNISAの期間延長や枠増し、で投資に振り向けることを税制で援助しようという事のようです、 IDECO(個人向け確定拠出年金IDECO(個人向け確定拠出年金)なども視野だそうです。

 NISAなど株価が上がって儲かっても税金がかからない(現状はキャピタルゲイン課税20%強)というのは有り難いことですが、それでうまく貯蓄から投資へと資金が移動するかというと、そう簡単ではなさそうです。
 
 理由は多分単純で、「株は儲かることもあるが損することの方が多い」という感覚を多くの方がお持ちだからです。

 余裕資金の多い人は、株が上がるまで待つことは出来ますが、多くの方はそうはいきません。子供の学資や家の修繕でお金が必要な時、株が下がっていたら・・。と考えてしまうでしょう。庶民はやっぱり元本保証でないと不安です。 というわけでゼロ金利でもやっぱり預貯金選好になるのです。

 今の日本の景気は不安定です。トランプさん次第などといわれますが、根底にあるのは円高への危惧です。円高になれば途端に株価は下がります。そして、円は「何かあると円買い→円高」という困った立場にあります。

 前回も述べましたように、日銀の異次元金融緩和と2%インフレ目標で円高を防ごうとしているのですが、アメリカは赤字の国、日本は黒字の国という状態がある限り、円高の危惧は消えません。

 というわけでゼロ金利が続けば、預金しても利息はほとんどつかないのですが、庶民はそれでも元本が減らないからと貯金に励みます。利息が付かないから、出来るだけ積み増す(自分で利息をつける)のです。
 これは、今の経済環境下で、庶民にとってはやはり最善の選択なのでしょう。損する可能性の大きい証券投資に誘導しようという事の合理性は、どうにも見えて来ません。

 余計なことを付け加えれば、投資で儲けられるのは「余裕資金」を持つ人でしょう。株が下がれば、上がるまで塩漬けにし、次の景気で株価が上がるまで待てるからです。
 さらに「貯蓄から投資へ」というのは大体株が上がっている時に言われる言葉です。今もそうですが、高値で株を買うというのは、大体失敗に終わるものです。

 我々庶民、多くの年金生活者が望むのは、定期預金や国債に少なくとも年3%ぐらいの利息が付くことではないでしょうか。