tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

1ドル=120円で経済は回復、日本的経営は?

2019年10月14日 23時36分44秒 | 経営
1ドル=120円で経済は回復、日本的経営は?
 リーマン・ショック、アメリカのゼロ金利政策(2%インフレ目標)、その結果$1=80円という円高、それに加えて 産業界が頑張ればその分だけ円高になる」という経験(一時75円)は、日本の経営者にとってトラウマとなったようです。

 このブログでも見てきましたように、多くの日本企業の行動様式は変わったようです。ものづくりを大切に、生産性の向上を目指し、日本国内で人間と技術に投資してきた日本企業だったのですが、「投資はコストの安い海外で」という行動様式が著増しました。

 日銀も変身しました。2012年、白川総裁がインフレ容認に転換しました。「アメリカがインフレ2パーセントを目指すなら日本は1パーセントを目指したらどうか」と発言し、金融緩和を示唆、円はじりじり円安に動きました。

 そして決定的な円安への転換は、白川総裁に代わった黒田総裁の2発の黒田バズーカ、2%インフレ目標を掲げた異次元金融緩和でした。結果2014年には円レートは$1=120円に戻ったのです。

 当然この段階では、日本のコストも物価も、国際水準から見て特に高いものでなくなりました。
 このブログでも何度も触れているところですが、この段階で、私は、日本的経営への復元現象が起きると予測していました。

 しかし、私の予測は外れたようです。非正規労働の比率はその後も増え続け、研究開発投資は復活せず、教育訓練費の増加も大きく遅れているようです。
 円安で企業収益は為替差益なども含め大幅に回復しましたが、それは自己資本比率の上昇、その使途は海外企業のM&Aという方向が主流です。

 日本的経営の二本柱、「人間中心の経営」と「長期的視点の経営」は、短期的収益向上を求める海外の優良企業買収に向かい、国内は単純労働中心の非正規従業員と海外からの技能実習生に頼る企業が目につきます。

 唯一、日本的経営の特徴がしっかり残っているのは、「新規学卒採用」における「新卒一括採用」です。将来の幹部が必要という視点は残っていて、新規学卒採用は、協定破りは一般的、協定の形骸化、廃止論という状態です。
 一方、「働き方改革」の議論の中では、「新卒一括採用はやめるべきだ、必要なときに必要な人間を採ればいい」といった議論も少なくないようです。

 さて、日本的経営は、あの異常な円高の悪夢の中で消えてしまったのでしょうか。
 それとも、未だに日本企業は人間集団で、みんなで共通の目的を掲げて、人間集団の凝集力をエネルギーに、企業の長期的発展を目指すという日本敵経営が、まだ企業活動の基底には存在し、いずれ、AI、5Gの時代に新しい形で日本の経営、日本の労使関係、日本経済のバイタリティーの根源的な力となる時期がくるのでしょうか。

今、多くの日本の企業(労使を含め)は、頑張って生産性を上げるより「為替レートを円安にした方が早い」事に気づいてしまっているのでしょう。
 しかし、現実に為替レートを支配しているのはアメリカです。円は恐らくじりじりと高くなっていくでしょう。異次元金融緩和も永久に続けるわけにはいきません。
 いつかは日本企業も、技術革新の本格化による経済の強靭化が基本であることを知るでしょう。

 日本社会そのものが大きく変化していく中で、日本社会の「日本らしさ」はときに世界から注目されています。
 日本的経営が、30年に及ぶ苦難の中で更に洗練され、世界の注目を集めるような形で再生してくれることを、そのための企業の早期の気づきを期待したいと思います。