tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本的経営はもはや時代遅れなのか?

2019年10月09日 15時00分07秒 | 経営
日本的経営はもはや時代遅れなのか?
 過日、日本学術振興会の108委員会がその活動を閉じることになったと伺いました。同会の数多くの委員会の中で108委員会だけが経営問題で、あとはすべて理工系の委員会です。
 同委員会の主要な研究テーマでもあった日本的経営への関心が薄れ、会員企業からの支援が難しくなったのが主な理由のようです。

 かつて世界の注目を集めた日本的経営が、長期不況の中で次第に色褪せ、多くの企業も欧米流の経営を模索し、政府まで、「働き方改革」で欧米流の「職務の集団」としての企業、職務による賃金決定(職務給:同一労働・同一賃金指向)を法律まで作って推進しようという時代になってきたことが大きな背景でしょう。

 しかし、本当にそれでいいのかという疑問は、大きく残るような気がしています。
 理由は、日本的経営は、企業経営という分野だけで成立しているものではありません、日本の伝統や文化の中で生まれ育ったものだからです。

 アニメでも日本のアニメはディズニーに代表されるアメリカのアニメとは違った形、違った意識・哲学、精神性の高さで世界の人気を集めています。
 また、今や日本食は世界遺産になっていますが、日本には世界中の料理が入って来て、日本人はそれを文字通り咀嚼し、それが日本流に進化して世界で人気です。

 経営に関わる分野でも、QC(品質管理)はアメリカの発案ですが、日本で発展進化し、アメリカに逆輸入された(6σなど)ことはご承知の通りです。
 メイド・イン・ジャパンも人気ですが、多くの車両や建設機械などで、Used in Japan も世界で根強い人気があるようです。理由は、日本人の真面目な使い方、メンテの良さが評価されとぃるとのことです。

 つまり、人間が物やサービスを作るという作業(企業経営はその代表的なものの1つでしょう)のやり方というのは、それぞれの国や社会において、その文化的背景を土壌として発展するものなのでしょう。

 では、日本の場合、その文化的背景とうのはなんでしょうか。それは、基本的に「組織を人間集団として考える」伝統的な精神文化からきているということでしょう。
 欧米の、「組織を職務という機能の集団」として考え、その機能に適した人間を配置するのとはアプローチが逆なのです。

 それが典型的に表れているのが「新卒採用の世界」です。もうお分かりでしょう。日本の企業は、特に新卒採用の場合は、明らかに「素材採用」で、「その企業という人間集団に役に立ってくれそうな人材」を『職務と直接結びつけずに』採用するのです。
 基本的に、良い、優れた人間集団ならば、必ず成果が出るという考え方です。

ですから、日本的経営の原点は「人間中心の経営」「長期的視点の経営」の二本柱と言われてきています。
 そして、長期的視点というのは、「人間を育てるのには時間がかかる」という経営者の認識からきているのです。

 それなら、なぜそんなに優れた日本的経営の日本企業が、こんなに長い間、不振を続けているのか、何か間違っているのではないか、というのが最近問われる質問です。
 次回から、そのあたりを考えてみましょう。