tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

長期不況の主因は為替レート:リーマン・ショックがダメ押し

2019年10月11日 12時13分33秒 | 経営
長期不況の主因は為替レート:リーマン・ショックがダメ押し
 1980年代、日本経済が華々しかった頃には、経済・経営に関わる外国人から、「なぜ日本はスタグフレーションにかからなかったのか?」、「オイルショックによるインフレを乗り切った秘密は何か?」などと、何度も聞かれました。

 「日本の労使は、日本経済の状況、企業経営の現状を正確に分析し、協力して経済、経営に整合的な賃金決定を心がけたからです」、「秘密は何もなく、労使が真面目で賢明だったからです」といつも答えていました。

 しかしアメリカを始め欧米主要国は、日本の一人勝ちは我慢できなかったようです。結果、1985年の「プラザ合意」という形で、日本に円高容認を求めてきました。
 お人好しの日本政府・日本銀行は、安易にそれを受け入れてしまいました。

 これが日本経済低迷の始まりです。結果的に2年後には、円レートは1$=240円から120円になりました。円の価値は対ドル(基軸通貨)で2倍になったのです

 1930年代に流行した「近隣窮乏化政策」の応用で、為替を切り上げられた日本が窮乏化に追い込まれたわけです。
 残念ながら、政府にも日銀にもその認識がなく、アカデミアやマスコミでも「長期不況はバブル崩壊のせい」などと自己責任論が多かったようです。

 為替レートと経済の関係は「 為替レートとゴルフのハンディ」で図式化しましたが、今では、トランプさんのドル安願望も含めて、為替操作で一国の経済力をどうにでも出来ることはみんな知っています。

 ところで、「プラザ合意」でまんまとしてやられた日本は、被害者意識も持たないまま、自己責任で難局に対抗して頑張ったのです。
 為替レートを2倍に切り上げられた日本は、物価もコストも世界一高い国になり、コストを切り下げ、物価も半分に下げることを要請されたわけです。

 実はここで、日本的経営が、大きな役割を果たしています。
 日本経済のコストの6~7割が人件費です。これを下げなければ日本の物価は下がりません。この努力は2008年まで続きます。
 世界一高い物価の中で日本の得意技「ものづくり」の分野がやっと競争力を回復し始めるのに2002年までかかりました。

 この間は勿論、今日に至るまで、日本の労働組合は、経済実態を認識した賃金要求に徹してきています。
 そして政府が物価上昇を引き起こすような賃上げを奨励するという奇妙さです。

 アメリカでもヨーロッパでも、もし現状の為替レートが2倍に切り上げられたら、労使関係は勿論社会全体が大混乱に陥るのではないでしょうか。
 日本が2倍という円高に耐えて、労使、家計を中心に、粛々と経済再建のプロセスを進められたのは、日本社会の文化的背景に根ざす「日本的経営」とその中核をなす「日本的労使関係」があったからこそということではないでしょうか。
 
 この整然とした努力に、リーマン・ショックによる円高が更に追い打ちをかけることになります。