今から約百年前、日本の産業界に「能率技師」と称する民間のコンサルタントが生産現場、事務現場等で活躍し始めました。
上野陽一(1883~1957)、荒木東一郎(1885~1966)といった米国仕込みの科学的管理法のスペシャリストです。
上野は、科学的管理法の父フレデリック・テーラーを研究、愛弟子ギルブレスとも交友を結び、科学的管理法を国内に普及していきました。
小林商店(現ライオン)、福助足袋等の製造現場での改善活動は大きな成果をあげ、「能率の父」と呼ばれています。
荒木は、米国アクロン大学で工学修士を取得。
これを引っ提げて日本に凱旋。
当時の写真を見るとなかなかのイケメンです。
かたくななまでに現場第一主義。
その頑固な姿勢は、生涯続きました。
このような能率技師は、基本的に専門家としての個人事業であり、テレビタレントのように人気商売でした。
紹介や口コミにより仕事の獲得、本を書いたり講演をしたりして自身のプロモーションを行っていたのです。
自らを経営し、クライアントの経営指導を行うという、ごく当たり前の姿。
自分の算盤で(責任で)、指導先の算盤が成り立つようにする、かなりリスキーな仕事であったといえるでしょう。
成功報酬的な部分もあったようてだす。
時代は移り、ドラッカーの言う「組織の時代」になると、経営コンサルタントも法人化し、サラリーマンとしての経営コンサルタントが登場しきます。
サラリーマンコンサルタントがサラリーマン経営者を指導する分には、たとえ失敗したとしても会社が責任をとってくれる傾向にあります。
が、問題なのは、サラリーマンコンサルタントが、オーナー経営者や個人経営者を指導、コンサルできるか?ということです。
自分の算盤はなしで、責任ある経営指導をできるかということ。
経営コンサルタントというのは、本来、独立した個人事業主でなければならないと考えています。
会社が潰れるようにできている以上、少なくともそのリスクや経営者の悩み・苦悩を共有しなければならないからです。
横文字を並べたり輸入理論を振りかざしたりしても良いと思います。
が、基本姿勢は、今から100年前に能率技師が有していた高い志、ロマンが原点であるように思います。
経営コンサルタントの波頭亮氏は、その著「コンサルタント原論」でコンサルタント倫理について解説を示しています。
医者や弁護士などとともに経営コンサルタントは、独立性が必要だと説かれています。
サラリーマン経営者にはサラリーマンの経営コンサルタントが、
オーナー経営者や自営業経営者には、独立した個人経営の経営コンサルタントが、
その任にあたるべきだと考えている今日この頃です。