「経営戦略論入門」
PHPビジネス新書 波頭亮著 860円+税
-経営学の誕生から新日本型経営まで-
辛口の切り口で経営を語る波頭さんの新刊。
波頭さんの書籍は、全て読破しています。
今回の著は、波頭さんの著作の中でも最も分かりやすく読みやすい一冊だと思います。
前半が経営戦略の歴史、後半が新しい日本型経営への提言という2部構成になっています。
前半部分では、テイラー、ファヨール、ホーソン実験という古典を押さえた上で、
ポーター、コトラー、アンゾフ、バーニーまでを体系的に分類、解説しています。
ミンツバーグ著「戦略サファリ」よりも単純化しており、サクッと経営戦略の全体像を理解することができます。
1960年代 経営戦略の誕生・・・チャンドラー、アンゾフ、PPM、SWOT、PIMS
1980年代 戦略の時代・・・ポーター、コトラー、ミンツバーグ
1990年代 組織とリソースの時代・・・バーニー、プラハラード
2000年代 リーダーシップの時代・・・コッターほか
特に、「プランニング学派」と「エマージェンス学派(創発学派)」、「ポジショニング学派」と「リソースベースドビュー学派」の分類・整理は分かりやすく、アタマの中がクリアになります。
個人的には、ミンツバーグ大好き、VRIO分析ファンなので、自分自身、創発型のRBV一派ということになるのでしょうか?
そして、後半では日本型経営のネキストについて触れています。
イノベーションとグローバル化を軸として日本型経営がどうあるべきかについての提唱が続きます。
一次世界市場を席巻したSONY・・・英語での会議、外国人エグゼクティブ起用などによって次第に国際競争力を失っていく様子は、ただ単にグローバルスタンダード、アングロサクソンスタンダードを日本の経営に接ぎ木しても、ニッポンの会社の復活はないということに言及されています。
まずは年功序列をやめる事、
そして、ニッポンの企業の強みである終身雇用、
ROEの低さを容認するステークホルダという環境をフル活用することを提唱されています。
短期、短期ではなく、長期的視点に立って経営戦略を「執行」していくことが重要だと述べられています。
数年前に波頭さんの講演を聞いたことがあるのですが、その時も「執行の時代」ということを強調されていました。
アベノミクスが効き始めた今、まさに「Do」の時代なのかもしれません。
ただその際に長期的視点を忘れないようにしないといけないと思います。