10日(土)。わが家に来てから今日で2799日目を迎え、英国の君主として歴代最長となる70年にわたり在位してきたエリザベス女王が8日、静養先のスコットランド北部のパレモラル城で逝去(96歳)したことを受けて、20日前後にウエストミンスター寺院で国葬が行われる予定である というニュースを見て感想を述べるモコタロです
国民の誰からも慕われる エリザベス女王のような人こそ 国葬で送るのが相応しい
昨夜、サントリーホールで東京都交響楽団「第958回 定期演奏会 Bシリーズ」を聴きました プログラムは①ドヴォルザーク「交響曲第5番ヘ長調作品76」、②ヤナーチェク「グラゴル・ミサ」(1927年:第1稿)です 演奏は②のソプラノ独唱=小林厚子、アルト独唱=山下裕賀、テノール独唱=福井敬、バス独唱=妻屋秀和、オルガン=大木麻理、合唱=新国立劇場合唱団。指揮=都響音楽監督・大野和士です
オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの都響の並び コンマスは矢部達哉、隣は四方恭子というダブル・コンマス態勢を敷きます 彼女から時計回りに双紙正哉、遠藤加奈子、江口心一、古川展生、篠崎友美、店村眞積、そしてコントラバスには池松宏という盤石の態勢です
1曲目はヴォルザーク「交響曲第5番ヘ長調作品76」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841ー1904)が1875年に作曲、1879年に改訂したうえで同年プラハで初演されました 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モト」、第3楽章「アンダンテ・コン・モト、クワジ・リステッソ・テンポ ~ アレグロ・スケルツァンド」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・モルト」の4楽章から成ります
この曲を聴くにあたってCDで予習しておいたのですが、どうもすんなりと入ってきません ドヴォルザークと言えば第7番、第8番、第9番の3曲が民俗色の豊かさと美しいメロディーに溢れていて大きな魅力を感じるのに対し、第5番は何回聴いてもその良さが解りません そんなわけで、せっかくの大野氏のアグレッシブな指揮と都響の渾身の演奏にも関わらず、最後まで楽しむことができませんでした。これは演奏する側よりも聴く側の問題だと思います
プログラム後半はヤナーチェク「グラゴル・ミサ」(1927年:第1稿)です この曲はレオシュ・ヤナーチェク(1854ー1928)が1926年8月2日~10月15日に作曲(1926年~28年に改訂)、1927年12月5日にブルノで初演されました 「グラゴル」とは、古代教会スラヴ語で用いられた文字の名で9世紀に作られたとのこと 第1稿の全曲は9楽章から成ります 第1楽章「イントラーダ」、第2楽章「序奏」、第3楽章「キリエ / 主よ、憐れみたまえ」、第4楽章「グロリア / 栄光あれ」、第5楽章「クレド / われは信ず」、第6楽章「サンクトゥス / 聖なるかな」、第7楽章「アニュス・デイ / 神の子羊」、第8楽章「オルガン・ソロ」、第9楽章「イントラーダ」で、第5楽章「クレド」を中心にシンメトリーの構成となっています
P席に新国立劇場合唱団のメンバーが配置に着きます 下手に女声36名、上手に男声24名、合計60名の混声合唱団です 2階正面のパイプオルガン席に大木麻里がスタンバイし、ソリストの4人が指揮台の左右に分かれてスタンバイします
小林厚子は東京藝大出身のソプラノですが、新国立劇場では「トスカ」タイトルロール他に出演しています 山下裕賀(ひろか)は東京藝大出身のアルトですが、日生オペラ「セビリアの理髪師」ロジーナ他に出演しています 福井敬は国立音楽大学出身のテノールですが、二期会のオペラ公演を中心に活躍しています 妻屋秀和は東京藝大出身のバスですが、新国立オペラの常連歌手で数多くの公演に出演しています 大木麻理は東京藝大出身のオルガニストですが、内外のオルガン・コンクールで入賞歴が多数あります
大野の指揮で演奏に入りますが、特に印象に残ったのは第2楽章「序奏」です 村上春樹の「1Q84」にも登場するヤナーチェクの代表作「シンフォニエッタ」によく似た曲想のファンファーレが印象的です トランペットとティンパニのリズム感が素晴らしい 第3楽章と第4楽章ではソプラノ独唱が入りますが、小林厚子の声が良く通ります この人の歌声には説得力があります テノールの福井敬の歌唱には破壊力があります 第5楽章ではオルガンと3対のティンパニのやり取りを中心とするオケの演奏が迫力満点でした また、新国立劇場合唱団のコーラスが素晴らしい 第7楽章では、アルトの山下裕賀とバスの妻屋秀和が加わりますが、2人とも安定感があり声も良く通ります 第8楽章はオルガン・ソロですが、大木麻里の演奏は大ホールの空気を震わせ、大迫力で迫ってきました 最後に再び第1楽章の「イントラーダ」が戻ってきて、「ヤナーチェクの旅も終わりだな」と思いました
大野和士は新国立劇場オペラ芸術監督だけあって、新国立オペラで活躍する歌手を中心に粒よりのソリスト4人を集め、世界に通用する新国立劇場合唱団を起用し、自ら音楽監督を務める都響の演奏能力を最大点に発揮して、ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」の魅力を余すことなく引き出しました 大野和士はこういう曲が一番得意なのではないか、と思ったりしました
この曲は生まれて初めて聴きましたが、一度聴いただけで すっかり魅了されました 昨日のブログで、「良い演奏の基準」として「聴き終わった後で、作曲者や作品をあらためて見直すような演奏かどうか」を挙げましたが、実はもう一つあります それは、「今聴いた演奏をもう一度聴きたいと思うかどうか」です その意味では、この日の「グラゴル・ミサ」は是非もう一度聴きたいと思いました