美里の「夢馬券」

2015年10月20日 10時26分26秒 | 創作欄
艶やかなピンクのトックリのセーターは美里自身が編み上げたものだ。
彼女はワンレグの髪をアップにしており、23歳の年齢より大人びて見えた。
人妻のような色っぽさも漂わせていた。
ポニーテールの美里を授業中に後ろの席から見ながら、ノートにボールペンで描いたこともあった。
「相変わらず、競馬やっているの?」コーヒーカップを手にしながら聞く。
徹は黙って頷いた。
「損ばかりしているのね」上眼となって尋ねる。
「運がないんだ」徹は自嘲気味に言葉を返した。
そして緑のソーダー水を飲む。
徹はコーヒーが苦手であった。
メランコリーな気分になるコーヒーは彼にとっては禁忌である。
ハチ公の像がある広場の通りの向かい側の喫茶店で待ち合わせをするのが2人は常であった。
「まだ、彼女できないの?」美里は何時もの嫌味を言うのだ。
「彼女?目の前にいるじゃないか」徹はマジである。
「私はダメ、彼氏がいるでしょ」突き放される。
先日は「これから、成田へ行こうか?」と美里唐突に言う。
「成田、危ないよ」徹は腰が引けた。
「成田闘争を一度、見て置きたいの」美里はマジである。
「それじゃ、鎌倉にしよう」
「俺は、競馬に行きたいんだ」
「競馬か?一度行ってみようか」美里が乗り気になったのが意外であった。
財布に5000円しかない徹は、渋谷の場外馬券場へ行こうと思っていたのだ。
だが、美里は「府中競馬場へ行ってみたい」と言うのだ。
「お金あまり持っていないんでしょ。交通費なら私が出すわ」美里の鋭い感覚に、徹は冷笑を禁じ得なかった。
「これでは恋いにならない」徹は心の内でつぶやく。
渋谷駅から井の頭線で明大前まで行き、京王線に乗り換えた。
二人が通っていた高校が下高井戸にあった。
昼の時間には、三井牧場で寝転んで2人で空を仰いだことがある。
「徹君は詩人になるの?」
「できればね」
「お金持ちにはなれないね」徹は、美里は高校生のくせに現実的な娘だと呆れた。
下高井戸を電車が通過した時に美里は「沢村さんは、どうしているかな?」と窓に目を転じた。
美里が恋いした先輩である。
府中駅から競馬場まで2人は歩いた。
府中図書館に勤めている同期生の本間悟のことが思い出された。
「そうなの、本間君は図書館にいるんだ。本好きだったから良かったわね」美里は彫刻が好きで、彫刻家の息子の本間に敬意を抱いていた。
「これが競馬場なのね!」美里は、想像以上に広々とした馬場にまず感嘆した。
そしてメインスタンドより内馬場の方へ行きたがった。
「女の子、以外に多いのね。競馬場ってオッサンばかりと思っていた」美里は認識を新たにしたようであった。
美里は冬枯れに近い内馬場の広場の上を走った。
「まだ、美里速く走れるじゃん」徹は美里のきれいな走りに今更、驚いた。
「陸上の練習のこと、思い出すな」美里は2、3回ランを繰り返した。
高校総体で400㍍に美里は出場し、3位であった。
徹はビールを飲む。
美里はコーラーを飲んだ。
7レース、8レースは馬券を買わずにレースを見た。
9レースは岡部騎手が乗った馬が人気となり、本命サイドで決まった。
徹はそれを2000円買っていた。
配当は480円であった。
次の10レースでは5000円失ってしまった。
それでもメインレースの資金は残っていた。
徹はリーディングジョッキーに期待して馬券を買った。
一方、美里はスポーツ新聞の「夢馬券」のコラムに注目した。
夢はあくまで夢で大穴の予想である。
「私のこの馬に賭けてみようかな?」8枠の一番の人気薄馬である。
同じ8枠の別の馬も人気薄であった。
美里は8枠のゾロ目の馬券を買ってから、徹に「他にどの馬を買うべきなの?」と意見を求めた。
「2枠と3枠の馬かな」5連勝中の馬と前回のレースで圧勝した馬を勧めた。
美里は一番人気薄の単勝馬券も買っていた。
さらに複勝馬券があることを知って、その人気薄の馬にも賭けていた。
結果は、夢馬券が実現する大波乱となったのだ。
そして、美里は実に57万円を払い戻したのだ。
「徹君、こんなことがあるのね。夢のようね。信じられない!」美里は興奮し頬を紅潮させ、肩で息をしていた。
「徹君に半分あげる」と言う。
「いいよ。気持ちだけで」と断ったが、美里は7万円を徹のスーツのポケットに入れた。
美里は医師の彼氏を思い出して、「彼が来月、アメリカの学会へ行くので私、彼に着いて行こうかな」と興奮が冷めやらないなかで言う。
徹は少し寂しい気持ちになったが、美里の親友の奈緒にアタックしようと決意を新たにした。






















numata727 さんが 2014年10月19日 に書かれた記事をお届けします

2015年10月20日 10時04分15秒 | 【お知らせ】
numata727 さんが 2014年10月19日 に書かれた記事をお届けします。

行方市 霞ヶ浦の帆引き船

font color="green">いばらき魅力再発見かつての風物詩 観光用にワカサギ漁やシラウオ漁に活躍し「かつての風物詩」と言われた霞ヶ浦の帆引き船。しかし、動力船を使ったトロール漁に取り変わられ、伝統漁はいつしか姿を消す。行方市は1994年、水辺の賑わいを取り戻すシンボルとして、観光帆引き船事業を開始...
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取手の人々

スナック「絆」は午後1時から6時まではカラオケ店であり、午後7時から午後12時まではスナックになる。銀司は午後2時に「絆」姿を見せた。1000円で歌い放題、コーヒが出る。アルコール類は別途料金である。常連の男性は3人ほど、女性客は7、8人である。夫婦で来る客もいる。「いいわね。旦那さんが居て」と倉持美沙子が、...
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衣服に火、高齢者に集中 



厚着の季節、増す危険 広い袖は注意/「防炎」エプロンも朝日新聞 電子版10月11日 配信ガスコンロなどの火が衣服に燃え移る火災が後を絶ちません。「着衣着火」と呼ばれており、2013年は全国で121人が亡くなりました。高齢者の事故が目立ち、東京都は先月、注意点をまとめて公表しました。 総務省消防庁によると、火災...
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医療に理解ある厚労相、舛添氏がトップ

直近10年間、「いない」との回答も6割 ◆Vol.3 m3.com 10月17日(金) 医療維新:池田宏之(m3.com編集部) ________________________________________■Doctors Community10周年 注目トピックスと10年後の医療 アンケート直近10年...
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「医薬品リスク管理計画(RMP)について」のページを更新

┏━━━━━━━━━━━【PMDAメディナビ】━━━━━━━━━━┓ 医薬品リスク管理計画の掲載のお知らせ ( 2014/10/17 配信) ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━...
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すき家と吉野家「歴史的和解

牛丼戦争の転機 ――“ニュースこう読む” 日経 電子版 10月16日 配信(編集委員 中村直文) 外食業界でこの夏、ちょっと驚く出来事があった。犬猿の仲とされた吉野家ホールディングスの安部修仁会長とすき家を運営するゼンショーホールディングスの小川賢太郎社長が和解したというのだ。2社の歴史を振り返ると、外食産業...
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エボラ出血熱 国内検査に懸念

危険ウイルス扱えず、感染判断は困難毎日新聞社 2014年10月16日(木) 配信  エボラ出血熱への対策が国際的な課題となっているにもかかわらず、日本では感染が疑われる患者が見つかってもウイルスを調べる体制が整っておらず、確実な診断ができないことに懸念が広がっている。危険性が高いウイルスを扱う能力を備えた施...
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医療機関の消費税問題

「来年10月の解決難しい」、消費税問題で自民・野田氏「医師報酬」の明確化求める声も、議連開催 m3.com 2014年10月15日(水) 医療維新:レポート 池田宏之(m3.com編集部)  350人以上の自民党議員で組織する「国民医療を守る議員の会」(会長:高村正彦副総裁)は10月15日に総会を開いて、控除...
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大病院の紹介なし初診、「5000円」で抑制

社会保障審議会健保法改正、保険給付を減らすか否かが焦点 m3.com2  10月16日(木)  医療維新:レポート 橋本佳子(m3.com編集長)  社会保障審議会医療保険部会(部会長:遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)は10月15日の会議で、紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担の在り方について議論、...
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エボラ国内確認なら…新型インフル用国産薬投与

読売新聞 2014年10月16日(木) 配信 西アフリカを中心にしたエボラ出血熱の感染拡大を受けて、厚生労働省は、国内で感染者が確認された際に、新型インフルエンザ治療薬「アビガン錠」の投与を認める方針を固めた。 アビガン錠はエボラ出血熱の治療薬としては未承認のため、患者を受け入れる指定医療機関での臨床研究と...
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エボラの未承認治療容認、世界医師会決議

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景気動向・カジノ法案――問題解決における成功要因を考える

■大前研一ニュースの視点 より ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━8月の景気動向指数 前月比1.4pt低下カジノ法案迷走 日経新聞-------------------------------------------------------------▼ ついに、アベノ...
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カジノ法案:論議本格化 


経済期待…治安は? 今国会成立は不透明毎日新聞 2014年10月17日 東京朝刊 カジノ解禁の是非を巡る論議がにわかに盛り上がっている。超党派の「国際観光産業振興議員連盟」は16日、先の通常国会で継続審議になった議員立法「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)について、日本人の入場に一定の制限を設...
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日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方

〜「健康な食事」の基準と、その普及のためのマークの策定〜厚生労働省は、この度、『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会』(座長:中村丁次神奈川県立保健福祉大学学長)の報告書を取りまとめましたので、公表します。 本検討会は、日本人の長寿を支える「健康な食事」とは何かを明らかにし、その目安を提示...
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第6回社会保障審議会福祉部会 資料



平成26年10月16日(木)18:00〜20:00厚生労働省 省議室(東京都千代田区霞が関1−2−2 中央合同庁舎第5号館9階) ○議事次第•議事次第(PDF:31KB) ○委員名簿•委員名簿(PDF:71KB) ○資料1•業務運営・財務運営の在り方について(PDF:...
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昭和50年代を回顧

2015年10月20日 05時56分18秒 | 創作欄
写真:10月桜(井野天満宮)


茨城県牛久のカーテン屋さんをみんなが社長と呼んでいた。
彼の実家は福島県白河の和菓子屋である。
「商売人の息子だからね。商売は向いているんだ。サラリーマンの経験は約3年だったね。新宿のデパートの外商部に居たけど、自分で商売をすることにしたんだ。色々商売はやったな」
トラック運転手の真田孝蔵は、自衛隊を5年やって除隊していた。
納豆屋の萩野克史は競輪場の選手宿舎に納豆を納入していた。
元タクシーの運転手の宮坂虎治は年金生活であり、時々頼まれて仏壇屋のアルバイトをしていた。
仏壇屋のオヤジの倉持信一は若い頃は、ヤクザであり背中に刺青を入れていた。
利根川で砂利を採集している大野真は文字通りのヨーロッパ男であった。
競輪の車検は必ず4、6、8を絡ませるのだ。
彼らは決って正面スタンドの2階にたむろしていた。
利根輪太郎は「希望の星」を自認していた。
彼らは帰りにタクシーでスナック「エイト」か「ロード」に行っていた。
競輪仲間の溜まり場であり、競輪選手も顔を見せることがある。
彼らのウイスキーのボトルが置いてあるのだ。
「坂本勉のボトルだな」止まり木に座り萩野克史が顎で示す。
坂本選手はオリンピックで銅メダルを獲得し、競輪選手となったのだ。
彼の兄も競輪選手であった。
武藤八郎選手はハンサムで歌が上手かったので女にもてた。
だが、選手としては1流にはなれないでいた。
ビルを建てた堅実な競輪選手もいた。
昭和50年代、取手駅前の祇園横丁という一画に、如何わしい店をあり、輪太郎は酔わされてカネを10万円ほど女から抜き取られた。
ヤクザの情婦がやっていた店だった。
「驚いた。貯金通帳も持ち歩いているよ」と若い女の桃子が言うので目覚めた。
睡眠薬でも入れられたようであった。
輪太郎はその日、200万円ほど競輪で儲けたので、普段は足を踏み入れない祇園横丁に来たのだ。
桃子は以前、キャバレー「桃山」で見かけたので、輪太郎は桃子と呼んでいたが、桃子が勤める「三つ葉のクローバー」がヤクザ絡みの店とは思わなかった。
因みに武藤八郎選手は若くして亡くなった。
輪太郎は牛久のカーテン屋さんと取手駅前の居酒屋で飲みながら、昭和50年代を回顧した。
思えば生きているのは、彼と輪太郎だけとなっていた。




























高齢化を極めた田舎に若者たちが流入

2015年10月20日 03時17分44秒 | 社会・文化・政治・経済
★国土交通省は、国民生活に密接に関係する幅広い分野を担当します。
公明党は現場の声をしっかりと受け止めて、それを政策に反映していく、一番現場に近い、生活者感覚に近い政党です。
この公明党の持ち味を十分に発揮していくたいと思います。
国交省は約6万人の職員が全国各地の現場で働き。まさに現場力や総合力を最大の特徴とする省庁ですので、私がリーダーシップをしっかり発揮していきます。
国交相・石井啓一衆議院議員(公明党)
★ダムや橋、道路など暮らしを支えるインフラ(社会資本)施設を観光資源として見学する「インフラツーリズム」に注目が集まっている。
普段できない体験が好評。
★田園回帰-幸せで美しい人生を送る日本人増やせ
高齢化を極めた田舎に、若者たちが流入。
30代の若い世代が流れ込み、4歳以下の子どもの数が増えている集落が増えている。
新たな展開に希望がある。
★朝顔がまだ咲いている。
特に目立つのは、取手一高の元菜園近く。
昔は生徒たちが育てた野菜を売りに来たものだ。
井野天満宮の下でもある。
朝顔のつぼみは、開花する前日の夕方、暗くなりはじめると、時を刻む。
そして、約10時間後に、開花するそうだ。
★10月桜も井野天満宮で咲いていた。
一般の桜は、開花する前年の7、8月頃につぼみができる。
そのつぼみは「越冬芽」という硬い芽の中に包み込まれ、秋には咲かない仕掛けなのだ。
桜は秋の初めに冬が来るのが、なぜがわかるのか?
葉が夜の長さをはかるそうだ。
葉がアブシシン酸という物質をつくり、芽に送り、芽はそれを受けて越冬芽をつくる。
春になると、まず越冬芽が目覚めて、開花の準備が整えられる。
冬の寒さを感じることが必要。
寒さを感じることで、アブシシン酸が分解され消失する。
その状態を、つぼみが「目覚める」といい、次の段階として、暖かい気温のなかでようやく開花、となる。