野中郁次郎 (編集, 著)
率先垂範の精神を欠くリーダー、硬直化した官僚的組織、プロフェッショナリズムの誤解――かつての日本軍と同じように、日本の企業や政府は、いま「失敗の拡大再生産」のスパイラルに陥ってしまっている。最大の問題は、傑出したリーダーが出現しないことだ。
著者について
杉之尾宜生/元防衛大学校教授
戸部良一/国際日本文化研究センター教授
山内昌之/明治大学特任教授
菊澤研宗/慶應大学商学部教授
河野仁/防衛大学校教授
土居征夫/学校法人城西大学特任教授
昭和・明治・アメリカの思想・教育の比較検討が必要ではないか
指揮官に焦点を当て、なぜ昭和期の日本軍はあれほどまずい戦い方をしたのかを検討したもの。
簡潔で読みやすい。本書によれば、理想のリーダーは現場感覚と大局的な判断力を兼ね備えた「実践知」の持ち主であるが、太平洋戦争時の日本ではそのような人物は活躍できなかった。
反対に、敵方のアメリカのリーダーが現場の実情に合わせた的確なリーダーシップを発揮し(野中郁次郎「戦場のリーダーシップ」本書第1章)、実力不十分な指揮官を解任するなど、人事面でも的確だった(山之内昌之「山口多聞」本書第9章)。
昭和期の軍人は日本全体の利益を考える大局的な視点に欠けていた。
陸海の軍人は組織的な利益を優先し続け、アメリカとの戦争回避という大局的にみれば当然な選択ができなかった(戸部良一「昭和期陸軍の病理―プロフェッショナリズムの暴走」本書第4章)。
日米開戦の4カ月前に軍人と多くの文官が参加して日米戦のシミュレーションを行い、「日本必敗」の結論が出ていながら、政治・外交の意思決定には反映されなかった(土井征夫「総合国策の研究と次世代リーダーの養成-「総力戦研究所」とは何だったのか」本書第5章)。
陸軍では、トップリーダーではなく中級の将校が意思決定の実験を握っており、満州事変やノモンハン事件などで、現場の指揮官が中央の指示を無視して暴走し、トップリーダーがそれを追認することが繰り返された(戸部「プロフェッショナリズムの暴走」)。
中堅将校がこのような行動に出た背景には、戦争に必要な資源を確保して総力戦体制を確立する、という軍事的な目的があり(同)、狭い意味では合理性があったが、このような行為の積み重ねが英米の警戒心を刺激し、対米開戦につながった。
また、日本軍は実践から学んで行動を修正することができなかった。
海軍では試験の成績で昇進を決める「ハンモック・ナンバー」制度が取られ、有能な指揮官がトップに立つことができなかった(山之内「山口多聞」)。
陸軍では、ノモンハンでの敗戦の責任者である辻政信がその後順調に出世するなど、適切な人事評価がされているとは到底言えない状態だった(山之内昌之「辻政信」本書第8章)。
本書の考察からは、明治の時代と比較して、昭和の時代のリーダーはなぜこうも小粒になるのか、という疑問が改めて浮かびあがる。
政策の責任者が実質不在、という明治憲法の構造的欠陥や(森山優『日本はなぜ開戦に踏み切ったのか』2012年)、植民地化される可能性の排除や欧米と対等の近代国家の確立といった明確な政治目標の存在等、外部的な理由も考えられるが、それだけでは昭和期の軍人が示した極端なセクショナリズムや硬直的で教条主義的な行動は説明できないように思われる。
可能性の一つとして、明治以降の思想や教育が考えられないだろうか。
つまり、明治以降の教育が悪かったために指導者層の矮小化が進んだ、という考えである。
日露戦争時(1904~1905年)の日本のリーダーと太平洋戦争時のアメリカ軍のリーダーに共通し、昭和の軍人にはない経験・思想を考察することが、今後の考察の一つの鍵になるように思われる。
失敗の本質本体を読めば十分かな、、、。
失敗の本質をリーダーシップの観点で見直したものという建て付けではあるものの、期待していたのが、企業でのリーダーシップだっただけに、軍隊で活躍した人の経緯が前面に出ている感じがして、途中なかなか読み進められなくなった。
失敗の本質は、かなり昔の本ではあるものの、それをしっかり読み込めば十分だと思う。
戦前の日本軍隊の失敗、科学に背を向けて突撃一本槍の姿は、安倍晋三、管政権の態度そのもので戦慄を覚えます。
全て気に入ってます。日本国民20%位の人がこれを読めば、日本国もデフレを脱却できて、米中を猛追できるのにと思います。
過去の成功体験を捨てきれない
現状でも現場の有りのままを見据えないで行動をしてしまう。
方針が各組織に於いてバラバラで一つの方向性で行動していない。
会社でも、経営理念、企業理念、経営方針、経営目標を定めてないと行動するベクトルが
同一方向にならない。
教訓
第二次世界大戦の教訓から現代の対応がよく分かる点が非常に良いです。
結果で語られるしかない
勝てば官軍、負ければ賊軍と。そもそも国民国家で戦場に行かないと行けなくなった時点で超一流の人物ではない。残念ながら。
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