今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「明治のむかし荷風山人いわく―――吏は役に立たぬものなり。欲の深いものなり。賄賂を取りたがるものなり。責むるは野暮なり。いくら取替えても同じ事なり。」
「大昔のことは資料が少なくて分らない。近い昔のことは、資料が多すぎて分らないというのは魯迅の言葉である。」
「何ごとも満つれば欠くるのが世のならいである。」
「男子は辺幅を飾らぬというのは、うわべはどうでもいい、中身だというほどのことである。」
「昭和四十年私はNHKラジオの『青年の時間』に孝についての言葉をあげ、これらのうち知るものは手をあげてくれと言った。孝は百行の本、君には忠親には孝、孝行をしたいじぶんに親はなし、父の恩は山よりも高く母の恩は海よりも深し、身体髪膚これを父母に受く敢て毀傷せざるは孝の始めなり(以下略)。
誰ひとり知るものはなかった。これによって戦後家庭で孝についての発言が絶無であることが分った。親は子に『お前たちの世話にはならないからね』と言って育てた。」
(山本夏彦著「死ぬの大好き」新潮社刊 所収)
「明治のむかし荷風山人いわく―――吏は役に立たぬものなり。欲の深いものなり。賄賂を取りたがるものなり。責むるは野暮なり。いくら取替えても同じ事なり。」
「大昔のことは資料が少なくて分らない。近い昔のことは、資料が多すぎて分らないというのは魯迅の言葉である。」
「何ごとも満つれば欠くるのが世のならいである。」
「男子は辺幅を飾らぬというのは、うわべはどうでもいい、中身だというほどのことである。」
「昭和四十年私はNHKラジオの『青年の時間』に孝についての言葉をあげ、これらのうち知るものは手をあげてくれと言った。孝は百行の本、君には忠親には孝、孝行をしたいじぶんに親はなし、父の恩は山よりも高く母の恩は海よりも深し、身体髪膚これを父母に受く敢て毀傷せざるは孝の始めなり(以下略)。
誰ひとり知るものはなかった。これによって戦後家庭で孝についての発言が絶無であることが分った。親は子に『お前たちの世話にはならないからね』と言って育てた。」
(山本夏彦著「死ぬの大好き」新潮社刊 所収)
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