「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2007・10・11

2007-10-11 08:00:00 | Weblog
 有る程の菊抛(な)げ入れよ棺の中 (夏目漱石)

 今日の「お気に入り」。
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2007・10・10

2007-10-10 07:05:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「権利と義務の両方をおぼえさせたければ、権利を一回教えたら、義務を三回教えなければ、もともとおぼえたくないのだから、おぼえない。両方平等に教えたからいいと思うなら、人情の機微を知らないと評されても仕方がない。」

  (山本夏彦著「かいつまんで言う」中公文庫 所収)
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2007・10・09

2007-10-09 08:40:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」。

   ただ透明な気と気が
   触れあっただけのような
   それはそれでよかったような (茨木のり子)
                
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2007・10・08

2007-10-08 07:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、茨木のり子さん(1926-2006)の「行方不明の時間」と題した詩の一節です。


  私は家に居てさえ
  ときどき行方不明になる
  ベルが鳴っても出ない
  電話が鳴っても出ない
  今は居ないのです

  目には見えないけれど
  この世のいたる所に
  透明な回転ドアが設置されている
  無気味でもあり 素敵でもある 回転ドア
  うっかり押したり
  あるいは
  不意に吸いこまれたり
  一回転すれば あっという間に
  あの世へとさまよい出る仕掛け
  さすれば
  もはや完全なる行方不明
  残された一つの愉しみでもあって
  その折は
  あらゆる約束ごとも
  すべては
  チャラよ


  (茨木のり子著「倚りかからず」ちくま文庫 所収)

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2007・10・07

2007-10-07 07:55:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、茨木のり子さん(1926-2006)の「倚りかからず」と題した詩一篇です。

  もはや
  できあいの思想には倚りかかりたくない
  もはや
  できあいの宗教には倚りかかりたくない
  もはや
  できあいの学問には倚りかかりたくない
  もはや
  いかなる権威にも倚りかかりたくはない
  ながく生きて
  心底学んだのはそれぐらい
  じぶんの耳目
  じぶんの二本足のみで立っていて
  なに不都合のことやある

  倚りかかるとすれば
  それは
  椅子の背もたれだけ

  (茨木のり子著「倚りかからず」ちくま文庫 所収)

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2007・10・06

2007-10-06 08:55:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、茨木のり子さん(1926-2006)の「行方不明の時間」と題した詩の一節です。

  人間には
  行方不明の時間が必要です
  なぜかはわからないけれど
  そんなふうに囁(ささや)くものがあるのです

  三十分であれ 一時間であれ
  ポワンと一人
  なにものからも離れて
  うたたねにしろ
  瞑想にしろ
  不埒(ふらち)なことをいたすにしろ
  遠野物語の寒戸(さむと)の婆のような
  ながい不明は困るけれど
  ふっと自分の存在を掻き消す時間は必要です

(茨木のり子著「倚りかからず」ちくま文庫 所収)

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2007・10・05

2007-10-05 07:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、茨木のり子さん(1926-2006)の「鶴」と題した詩を一篇。

  鶴が
  ヒマラヤを越える
  たった数日間だけの上昇気流を捉え
  巻きあがり巻きあがりして
  九千メートルに近い峨峨(がが)たるヒマラヤ山系を
  越える
  カウカウと鳴きかわしながら
  どうやってリーダーを決めるのだろう
  どうやって見事な隊列を組むのだろう

  涼しい北で夏の繁殖を終え
  育った雛もろとも
  越冬地のインドへ命がけの旅
  映像が捉えるまで
  誰にも信じることができなかった
  白皚皚(はくがいがい)のヒマラヤ山系
  突き抜けるような蒼い空
  遠目にもけんめいな羽ばたきが見える

  なにかへの合図でもあるような
  純白のハンカチ打ち振るような
  清冽な羽ばたき
  羽ばたいて
  羽ばたいて

  わたしのなかにわずかに残る
  澄んだものが
  はげしく反応して さざなみ立つ
  今も
  目をつむれば
  まなかいを飛ぶ
  アネハヅルの無垢ないのちの
  無数のきらめき

  (茨木のり子著「倚りかからず」ちくま文庫 所収)


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2007・10・04

2007-10-04 06:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、古今和歌集から。

 
    秋立つ日よめる        藤原敏行朝臣

  秋きぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる


    世の中のはかなきことを思ひけるをりに、菊の花をみてよみける
                    つ ら ゆ き

  秋の菊にほふかぎりはかざしてん 花よりさきと知らぬわが身を
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2007・10・03

2007-10-03 09:00:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。


 落葉松(からまつ)の金の針降る秋日の中   (松原智津子)
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2007・10・02

2007-10-02 07:10:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「人が足りる思いをするのは、他と区別して多い場合である。」

   (山本夏彦著「変痴気論」中公文庫 所収)
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