今日の「 お気に入り 」。
最近読んだ 村上春樹さん ( 1949 - ) の随筆「 村上
朝日堂はいかにして鍛えられたか 」( 新潮文庫 )
の中に 「 傷つかなくなることについて 」という
タイトルの小文がある 。その中から 三 、四節を 、
備忘のため 、抜き書き 。
引用はじめ 。
「 歳をとって 、多少の差こそあれだんだん
落ちてくるのは性的なポテンシャルばかり
ではない 。精神的に『 傷つく能力 』だっ
て落ちてくる 。これは確かだ 。たとえば
若いうちは 、僕もけっこう頻繁に精神的に
傷ついていた 。ささやかな挫折で目の前が
真っ暗になったり 、誰かの一言が胸に刺さ
って足もとの地面が崩れ落ちるような思い
をすることもあった 。」
「 僕が歳をとってそれほど傷つかなくなった
のは 、人間が厚かましくなったからという
理由からだけではないと思う 。ある日を境
に『 歳をとった人間が若者と同じように精
神的に傷ついたりするのは 、あんまり見栄
えのいいものではない 』と認識するように
なって 、僕はそれ以来なるべく傷ついたり
しないように意識的に訓練を積んできたの
だ 。」
「 精神的に傷つきやすいのは 、若い人々に
よく見られるひとつの傾向であるだけでは
なくて 、それは彼らに与えられたひとつの
固有の権利でもあるのだと 。もちろん歳を
とっても 、心が傷つくことはいくらでもあ
る 。でもそれを露骨に表に出したり 、あ
るいはいつまでも引きずっていることは 、
それなりに年齢を重ねた人間にとっては相
応(ふさわ)しいことではない 。僕はそう思
った 。だからたとえ傷ついても頭にきても 、
それをするりと飲み込んでキュウリみたいに
涼しい顔をしているように心がけた 。最初
はなかなかうまくは行かなかったけれど 、
訓練をかさねるうちにだんだん 、本当に傷
つかないようになってきた 。」
「 『 じゃあ 、傷つかないようになるためには 、
現実的に何をすればいちばんいいのですか? 』
と訊かれれば 、僕としては『 嫌なことがあ
っても見ないふりをすること 、聞かないふり
をすること 』と答えるしかないですね 。
そこで 、すぐに役立つ村上春樹私家版〈 ピ
ーターの法則 〉。『 まず妻より始めよ 。あ
との世間は簡単だ 』。妻のいない人のことま
では ・・・ 知らない 。」
引用おわり 。
うちの奥さんは 、僕に対して「 嫌なことがあっても
見ないふりをすること 、聞かないふりをすること 」
を 、若い頃から実践して 、今日に至っているらしい 。
「 まず夫より始めよ 。あとの世間は簡単だ 」
( ´_ゝ`)
( ついでながらの
筆者註 :「 ピーターの法則( 英: Peter Principle )とは
組織構成員の労働に関する社会学の法則 。
1. 能力主義の階層社会では 、人間は能力の極限
まで出世する 。したがって 、有能な平( ひら )
構成員は 、無能な中間管理職になる 。
2. 時が経つにつれて 、人間はみな出世していく 。
無能な平構成員は 、そのまま平構成員の地位に
落ち着く 。また 、有能な平構成員は 無能な中
間管理職の地位に落ち着く 。その結果 、各階
層は 、無能な人間で埋め尽くされる 。
3.その組織の仕事は 、まだ出世の余地のある人
間によって遂行される 。
1969年 、南カリフォルニア大学教授の教育学
者 ローレンス・J・ピーター( Laurence J. Peter )
によりレイモンド・ハル( Raymond Hull )との
共著 THE PETER PRINCIPLE の中で提唱された 。」
以上ウィキ情報 。)