化物和本草 18 十四丁表「手(て)の長(なが)さの猿(さる)」
山東京伝作 葛飾北斎画 寛政十 版元 山口屋忠右衛門
化物和本草 3巻
山東京伝作 1761-1816
葛飾北斎画 1760-1849
版元 山口屋忠右衛門
寛政十 (1798)
18cm
黄表紙
読んでいるのは、早稲田大学デジタルライブラリー
化物和本草 十四丁表
「手(て)の長(なが)さの猿(さる)」
ゑんかうざるハ水の月をとらやとし、
このてながざるハ、さいふの
かねをとらんとす、なくこへ、「ぶつぽうそう」をと
いふとうにて、このかいどうハ「ぶつぽうそう、/\」となく、
みやこやまざきの
山中にそのかみはやの
かん平というかりうど
てつぽうにて
しとめたり
化物和本草 十四丁表 下
さて/\、てるがいのさるじや
てながいのやすたり
三十八もんと
きている
ぶつぽうそう (仏法僧)
仏法僧
1 仏教で重んずる、仏と法(=仏の教え)と僧(=仏の教えを奉ずる者)。三宝(さんぼう)。
2 動物
ぶっぽうそう科の鳥。ハトよりやや小さく、青緑色で美しい。山林に住む。冬は南方に渡る。
かん平というかりうど
てつぽうにて
しとめたり
『仮名手本忠臣蔵 二つ玉の場』
寛平がイノシシを仕留めるために、鉄砲を二度撃つ。
小屋の前で、親父様(義父:おかるの父)が定九郎に殺され、懐からおかるのみを打った金を取り出しで、片手で重さを測る。
「五十両〜〜」
二度目の鉄砲の弾が、定九郎に当たる。
寛平はおかる→親父様から巡ってきた定九郎の持っていた親父様の島の財布を奪って帰る。
家に帰ると、程なく、遺体となった親父様が運ばれる。
「誰がこない酷いことを!」
と、義母。
島の財布は義父のものと知った寛平は、自分が親父様を撃ち殺したと思い、自害する。
「色にふけったばっかりにぃ〜」
と左ほほに、指筋の地跡をつけるのは見もの。
村人、
「やヤァ!こりゃ死因は鉄砲ではござらぬ、刀の切り傷で顎ざる。」
まぁ!何ともはや切ない場面である。