金々先生造化夢 3 隣芳斎養気守清貧 山東京伝 作 北尾重政 画
寛政6年 版元 蔦屋重三郎
金々先生造化夢 山東京伝 作 北尾重政 画
山東京伝 1761-1816
北尾重政 1739-1820
[江戸] : [蔦屋重三郎],
寛政6[1794]序
黄表紙
一冊 19cm
読んでいるのは、早稲田大学デジタルライブラリー
ヘ13 02056 0012
一丁裏
隣芳斎養気守清貧
むかし/\ある
ぼんくわんねん
かち/\山の
うさぎの
とし
のこ
ろ
金々先生といふものあり、その身
貧して、人のふうきをうら山しく
おもひあけくれ、此事をのみくやみ ゐ
たりしが、ろせいもどきのゑいぐわ
のゆ目を見てより、うき世は夢
のごとしとさとり、それもゆめ、
これもゆめ、ねては夢、おきてハ
ゆめ、あけてハゆめ、くれてハ夢、
ぼたもちを見て、「アァ、ゆめじや
ナァ、」なすびの
うらの物を
見てハ「アァ、ゆめじやナァ、」
となにもろもゆめに
してしまひ、あまり物
をさとりすぎて、これぞ
といふ しゆうばいも、とせい
もせず、うき世をうな
ぎやのはんざいのごとく
二丁表
見なしてたゞあけくれ、ぬらり
くらりとくらしけるか、あるとき
ひもじくなりけるゆへ、
ちやづけを一ぜん
してやらんと
手づからにば
なをしうけ
そのちやの
できるうち
とろ/\と
やうかし
ける、
二丁表 (挿絵)京傳の言葉
「おまへのおすが
たハ、からこの
とうへ、ねり
くやうのちご
のくびをすげ
ややうだ
二丁表
「そちが
はなハ
なんきん
おこしのできぞこ
ないときてゐる、
二丁表
「ここまで
ござれ
あまざけ
しんじよ
一丁裏 下
つたへきゝ、ち
か松門左門
じやうなり
作者の
く□人なれ
ども、ねご
とのもんくに
ハとまりしと
かや、われらも
ねごとの
一丁裏 下
もんくにハ
大こまり
たゞいびきの
をと
コウ/\/\/\
二丁表 下
くちなめづり
ムニャ/\/\/\
此外にもし
ねごとのもんく
御おんじござ候ハヾ
御しらせ
くださる
べく候
さつそく
かきいれ
し候
二丁表 中
きん/\
先生の
ゆめに
見やう
あめさい
くのうぐ
ひすの
しつぽの
ごとし
二丁表 中
小人かんきよ
して、ふせん
をなし、ひん人
かんきよして、手
せんをなすとハ
まさにこれ此事ならん
ふうき 富貴
[名・形動]金持ちで、かつ地位や身分が高いこと。また、そのさま。ふっき。
「富貴になる」「富貴な(の)生まれ」⇔貧賤。
ろせい 盧生之夢 (四字熟語)
人の世界での繁栄は儚いということのたとえ。
または、人の人生が儚いことのたとえ。
「盧生」は人の名前。
唐の盧生という人が、旅の途中の邯鄲の町で、道士から出世が叶うという枕を借りて寝ると、出世して財力や権力を手に入れる夢を見た。
目が覚めると、宿の主人に頼んでいた、粟のかゆが出来上がっていないほどのわずかな時間しか過ぎていなかったという故事から。
ゑいぐわ 栄華