某ディレクターは妻もまたディレクターである。
夫婦で同じ仕事というのは嫌ではないかと思うが、
そのメリットもあるという。
今抱えている仕事で手一杯であるにも関わらず、
どうしても引き受けて欲しいという依頼が来ることがある。
そんな時、彼はこう提案する。
「途中まで妻にやらせてもいいならお受けします」
最終的な仕上げや、完成度への責任は自分が持つので、
ある部分までは妻にやらせてもよいかと条件を出すのだそうだ。
もちろん、まったくお初の相手ではなく、
彼の妻のことやその技量をある程度知っている相手に限ることだが。
このやり方のおかげで、
一人ならこなすことのできない数の仕事に、
なんとか対応できているという。
そんな仕事をしているディレクターは、
僕が知っている範囲では彼しかいない。