有楽町に行くと、「ちゃんぽん亭総本家」でよく昼食をとる。
近江ちゃんぽんの店である。
最初にこの店に入った時に気になったのは、
テーブルの上に置かれた小さな薬罐だった。
薬罐の中身はお酢。
半分ほど食べた後、少しお酢を入れて食べる、
この店独自のオススメの食べ方だ。
なぜ薬罐を使っているのかが不思議だったが、
おそらく最初に始めた時がたまたま薬罐で、
それが定着し、今や店の個性として使い続けているのではないか。
しかしながら東京ではまだ馴染みのない近江ちゃんぽん。
薬罐の中身をお茶と間違える人も多いようで、
その旨を伝える注意書きが添えられていた。
先日、数ヶ月ぶりに食べに行った。
するとテーブルの上の光景が変わっていた。
薬罐はなく、代わりにお酢の入った透明な容器があった。
薬罐だと間違える人が多いため変えたのだろう。
ローカライゼーションだ。
確かに客のことを考えた対応だとは思うが、
店の個性が1つ失われてしまったようで、
僕は寂しい気がした。
この店に初めて来た客が得て帰る話のタネは1つ減ってしまった。