夏至・・・・
この言葉を耳にすると
もうすぐやってくる長い夏休みに少年の胸は膨らむ。
盗み食うトマトの青臭さに初恋を予感したり
近所のお姉さんの開襟シャツにどきどきしたり
蝉や蟹や蛍を追いかけ
昼も夜もめくるめく少年の夏は
ときめきの連続であった。
その中にませた奴がいて
石ころが熱く灼ける河原に裸のまま整列して
陰毛の長さくらべなど・・・・
そのときからである。
ぼくの劣等感が始まったのは。
「遊びをせんとや生まれけん・・・」
真っ黒になるまで少年はよく遊んだ。
夕方どこからともなく「笛吹童子」の笛の音が
流れてくると
少年は走って帰ってラジオの前に正座した。
ヒャラーリ ヒャラリコ ヒャリーコ ヒャラレーロ・・・
「笛吹童子」 脚本北村寿夫
尺八福田蘭童
昭和28年NHKラジオドラマとして夕方6時に放送。