五十の手習い足払い

五十歳を過ぎて始めたブログももう何年目?
山梨に住む新しモノ好きのオヤジが自分の趣味や日々の暮らしをつづります。

祖父のはちみつ

2011年08月03日 | 日々のつれづれに
私の祖父は平成元年に亡くなったのですが、亡くなる数年前まで自宅でミツバチを飼っていました。
一時は巣箱を20個以上も置いて家の近くにあるレンゲの蜜を集めては自宅に買いに来る人に安くお分けしていました。

私の子供の頃、甘いものは大変貴重で、市販の蜂蜜もずいぶん高価でした。
祖父の作る蜂蜜は100パーセント天然混じりけ無し、それを安く売るのですからずいぶん遠くから聞きつけて買いに来る人が多かったのです。

蜂蜜を絞るときは一家総出の仕事となりました。
祖父は巣箱から一枚ずつ巣の板を取り出すと、ミツバチが蜜ろうでふたをした部分を薄くそぎ落とし、ドラム缶のような分離器にかけます。

分離器を回す仕事は私の役目。薄くそぎ落とした部分は祖父が「ガム」と呼んでいたところで、小さく切って私の口の中に放り込んでくれました。
その「ガム」の甘かったこと!これを味わうのが楽しみで、煙でいぶされ興奮したミツバチにときどき刺されるのを覚悟して手伝ったものです。
こうして絞り取った蜂蜜を一升ビンにつめ、コルクの栓をしてラベルを貼ります。これらは母と祖母の仕事でした。

ビンやコルク栓、ラベルなどは甲府にある専門業者さんのところに買いに行きました。ですから蜂蜜自体の原価は無料だったとしてもけっこう費用がかかっていると思うのですが、祖父は安い売り値を変えようとはしませんでした。

その理由を知ったのはずいぶんと後のこと、平成12年に祖母が亡くなった時でした。

祖母は若いときから胃腸が弱く、牛乳はもちろん刺激物もほとんど食べないような生活をしていたらしく、ハンコや貴金属の行商をするために他県に出かけていた祖父はずいぶんと気にかけていたようです。
その祖父がいつの頃か「(ミツバチの作る)ローヤルゼリーが身体に良い」と聞いて祖母に食べさせようとミツバチを飼い始めたのだそうです。
いわば、蜂蜜はローヤルゼリーを採る過程でできる“副産物”だったのですね。

女王蜂の食べ物、とされているローヤルゼリーはとても貴重で、一つの巣箱からわずかしか採れません。
私も一度食べさせてもらったことがありますが、「あんなすっぱいもの」という記憶しかなくとても好きになれませんでした(好きになられても困ったかもしれませんが)。

ローヤルゼリーのおかげか、祖母は70歳台に乳がんの手術をした後は大病することなく96歳の天寿を全うしました。


今日8月3日ははちみつの日(なんだそうです)。
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