松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

はい という素直な心

2008-11-23 | 行雲流水-日日是太極拳導引-
 はい という素直な心
 すみません という反省の心
 おかげさまで という謙虚な心
 私がします という奉仕の心
 ありがとう という感謝の心



昨夜、某TV番組内で
上野由岐子さんが紹介していたことばです。
上野さんのご家庭の、いわば家訓のようなもので
いつも耳にしながら育ったそうです。
すてきなご両親ですね。


どれもこれも当たり前なくらい大切なことなのですが
なかなかできないことです。
ついつい、おろそかにしてしまうことばかり。

“できっこないや”と投げ出してみたり
ばかばかしくなってみたり
“損な役回りばかりで報われない”
と嫌気がさしてみたり

素直さも反省も謙虚さも足りないから
奉仕も感謝もありゃしない


だけど上野さんは途中で諦めなかったんでしょうね。
試合のときと同じように、
ひとつひとつの状況に対しても
感情に流されないように意識して
体験を力として積み重ねてきたのでしょう。



このことば、そのまま練習の心にもあてはまりそうです。
こういう心でいられたら
動じる理由がなくなりますからね。

ということで、そっくりいただくことにしました。
上野さん、すてきなことばを紹介くださって
ありがとうございます。

そして、こちらに立ち寄り一読くださったあなたへ
ありがとうございます。


小雪(しょうせつ)

2008-11-18 | 養生の栞-季節と養生-
今週末の22日からは、立冬から小雪(11/22-12/6)へと
節気が変わります。

小雪の頃になると、寒冷地や山頂などでは
降雪がみられるようになりますが、
まだそれほどではありません。

小雪前後の天候は、どんよりとした曇り空が続き
寒くなる日が多くなるせいか、
なんとなく落ち込みやすくなったり
憂うつな気持ちになりがちです。
なんだか気が重いなぁと思ったら
ここ数日間の天気をチェックしてみるのも
手がかりになるかもしれません。

でも、だからといって
お天気にとらわれすぎるのもどうかしらん。
気にし過ぎてしまうというのも
あまり好ましいとは言えないような気がします。



たとえば中医学では
「いろいろな災いはあっても3条を越えることは無い」
といったりします。
つまり病が発生する因子は3つしかない
というのです。その3因子とは

  内因(七つの情が激して傷つくこと)
  外因(六つの邪気に侵されること)
  内外因以外のもの(怪我、中毒、疲労、不節制な生活習慣など)

以上の3つです。

どんよりとした天気に影響されて
気持ちが落ち込んでしまったりするのは
自然なことではあるのですが、
だからといって落ち込んだ状態を
いつまでも引きずっていれば
今度は内因となって
自ら病を招くようになるとも言えます。
“何事にも程がある”ということですね。

自然界には因子となり得るものが
もとから存在するのです。
あることが当たり前であり、自然なのです。

ですから、なるべく病と縁遠くなるためには
自然の変化に順応できるような心身状態に
主体的に調整することが
もっとも効果的なのではないかと考えられます。


養生では内外のバランスを中心に考えます。
対外的には自然界の変化に順応して
邪気の侵入を避けるようにし、
対内的には欲を持たず、無理をせず、
気持ちを静かに保つようにします。

日頃から煩わしいことは考えず、
楽しくて気持ちがよく、
心静かに穏やかに過ごせるように
そういう気持ちを持ち続けることでも
少しずつ変わってくるような気がします。

気持ちが変われば
行動にも変化が出てきますし、
行動が変われば
気持ちにも変化が出てきます。

いずれにしても変わるように
できているんですよね。すばらしい…


立冬

2008-11-07 | 養生の栞-季節と養生-
今年も立冬を迎えました。
立冬は冬季の到来を意味します。

冬は「終結」の季節であり「蔵」を象徴する季節です。
蔵とは貯蔵、貯えです。
したがって活動は控え、来るべき春に備えて
英気を養う期間です。

自然界をみても、表立った活気は感じられず
休眠状態となります。
陽気は潜み、陰気が盛んになる時期です。

自然の波長に順行しようとするならば
陰的な活動を主として
なるべく心も穏やかに波風立てず
無闇に怒ったり腹を立てず
汗をかくような労働も控えて
陽気を消耗させないようにします。

冬ごもりなどのような表現には
なるほどなぁと思わせるものがあります。
冬眠まではしないけれども
睡眠や休養の時間は
この時期には多めにした方がよいのだなとか、
滋養の期間であることは確かなようです。

食については、
また改めてまとめてみようかとも思っていますが、
ポイントとしては
体を温める食材をちょっと意識的にとること。

でも温性熱性だけに偏るのは好くないです。
何事もバランスが大切です。
冷性もあり熱性もあって
はじめてバランスが生まれるのです。
どちらか一方だけでは
本来体に備わっているバランスを
崩してしまうことにもなりかねません。

旬の食材を中心に、
なるべく多様な食材を用意しましょう。
具だくさんの煮込み料理や鍋料理は
多くの食材を手軽にとれ、
体も温まるのでおすすめです。

というか、季節料理は
生まれるべくして生まれたというのが
正解なんでしょうね。



 ☆こちらは以前アップした記事です。
   冬の養生 -黄帝内経より-

言の葉、言霊

2008-11-06 | 日常雑記-暮らしの逸話(エピソード)-
いまではかなり古ぼけて傷んでいる
小学校の卒業記念文集の扉には
担任の先生から毛筆で
餞(はなむけ)の言葉が書かれています。

ひとりひとりに一言ずつ
みな違う言葉をいただきました。
恩師と自分との数年にわたる関係の中で
紡ぎ出された言葉です。
『贈る言葉』で一世を風靡した金八先生も
生徒ひとりひとりに
餞の言葉を贈っていましたが、
はるか昔の学校には
そのような先生がいることにはいたのです。
けっしてフィクションなんかじゃありません。
そして今もどこかに
そんな先生がいるのだろうと思います。


 『世の中の出来事をどのように批判するかではなく
  それにどう立ち向かうかが大切である』

これが先生から私に贈られた言葉です。

当時、私はクラス内では社会部に属し
新聞記事から世の中の動きを
毎日スクラップする担当でした。
自然と時事ものの知識はドンドン増え、
世界紛争や政治問題、社会問題など
世の中の出来事を通して
大人のずるさや
目先の駆け引きばかりが鼻について
嫌気がさしてきていました。
大人になるなんて嫌だなと
漠然と思っていました。

中学に行けば世界も広がります。
そこでまた新しい関係を
作って行くことになります。
やがて迎えるであろう
人間的成長の著しい多感な季節には
自意識も芽生え、自分と他者との関係も
少しずつ複雑になってきて
それなりの摩擦も増えてきます。
自分を取り巻く社会が広まると同時に
それに翻弄されたり揉まれ始めるわけです。

おそらく恩師は、私の性格を見越して
卒業というこのタイミングで
メッセージを私に発信したのでしょう。

それにしても…
小学生が贈られるような内容の言葉とは
思えませんね。
それだけに重い言葉と感じました。
恩師からも「これはすぐに理解できるとは
思っていないから」と
言われたのを今も覚えています。

主体性を持ちながら
どんなときでも自ら働きかけようとする。
人の意見に流されない自分を持つこと。
先入観を持たずに
ものごとをよく見て自分で考える。
そして自ら動く。

事あるごとに贈られた言葉を
引っ張り出してきては
自問自答をくり返してきました。
でもそれは
この言葉に囚われていたのではなく
言葉そのものに
引き寄せる力があったのだろうと
思っています。


言葉の力というのはすごいです。

言葉には魂が宿ります。
言葉はその人の心根が育む言の葉です。
だから心はいつも穏やかに
やわらいでいたいものだなと思うのですが
なかなか……ですねぇ。