松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

花紀行

2008-03-28 | 日常雑記-暮らしの逸話(エピソード)-
   今週はじめから咲き始めた桜。
   家から目と鼻の先の桜はソメイヨシノではないので
   開花までにはもう少し時間がかかりそう。
   それでも家から数分歩けば、こんな感じで桜が見られます。

   


 



上水沿いの道端に桜が続きます。
整然とした桜並木というわけではなく、
ぽつんぽつんと小さな塊のように散在している感じ。
ひとつの塊に辿り着くと
またひとつ前に見えるピンクの塊の誘惑に負けて
ついつい足をのばしてしまいます。
花から花へと飛び回る虫たちと
ちっとも変わらない…



 

 

 







いまの自分の状況とは
まるで対極のようにも見える
目映いばかりの桜の花に
めまいがしそうなくらいです。

 





それでも
年輪を重ねた古木に指を触れれば
そのざらつきが心地よく思えたりもします。
幹に耳をあてれば
いのちの音が聴こえてきます。


バランス感覚を磨くために

2008-03-18 | 養生の栞-食・眠・動-
門外漢の食養生と題して、
これまでいろいろと書き連ねてきましたが、
基本的には太極導引鍛錬による養生と
同列にとらえています。

自分なりに体調を判断しながら食性を組み合せて食するとはいえ、
自分の意志で主導的に行えることには限度があります。

意志の主導が及ぶのは口に入れるところまでです。
その先からは体が主導権を握っています。
つまりどんなに計算してみたところで
体が計算通りに取捨選択してくれるとは限らないわけです。

頭だけでも体だけでもうまく機能しないからこそ
役割分担というか補完し合うような仕組みに
なっているのかもしれません。
だとすれば何事においても
まずは双方にとって無理のなさそうな
できそうなところから働きかけてみることが
心身にとって好ましい環境なのかもしれません。

食性の組み合わせにしても、
ほとんどの人の場合は
ザックリした分け方で充分かと思います。
むしろ心理的負担になったり
神経質になり過ぎてしまうことが
ストレス要因となって体調に影響したりでもしたら
元も子もないですよね。

健康な状態というのは
自らとりたてて考えたりしない、
気にならないような状態だったり、
健康意識から解放されたかのような状態とでもいうか…。
ただし心身の状態に無関心でいたり無頓着だったり
というのともちょっと違う。
ほどほどの気遣いはしているんだけど…とでもいうのかな、
おそらくはこれもまたバランス感覚なんだと思うのですよ。


自分で食事をつくる習慣がない人にとっては
自炊は大変革に等しいでしょうから、
仮に外食中心であっても
たとえば、ナトリウムとカリウムのバランス(*)を利用して
一日の食事のバランスをチェックするだけでも
意識は確実に変わってくるかと思います。
そういう段階からでもとにかく変わる、
変えてみようと試みる、行動することが
自信を育てていくんですよね。
(どうも自信が持てないときは動いていないか
動き方が不足しているような気がします)

とりあえず自分ができそうなところを見つけるところからです。
誰でもできるところではなくて、
自分ができそうなところというのがポイントです。
意外とセンスが要ります(ある程度自分を知らないと選べない)。

誰のためでもない、自分のために行うものだから
自分と向き合う習慣も一緒につくっていきましょうということかと。



 (*)……マクロビオティックでは
     ナトリウム(Na)・マグネシウム(Mg)を多く含む食品は陽性
     カリウム(K)・カルシウム(Ca)を多く含む食品は陰性とされている。

門外漢の食養生(7) -マクロビオティック-

2008-03-09 | 養生の栞-食・眠・動-
桜沢如一氏は中医学の根幹ともいえる陰陽理論(易経)と
石塚左玄氏の食養の考え方とを結びつけ、
広い意味では思想哲学ともいえる考え方をもとに
医食同源としての食を正せば病気も治るし、
自身に適した食を取り入れることで人生を健やかに楽しむ生き方を
手にする方法(マクロビオティック)を提唱しました。

まずは桜沢氏の陰陽についての世界観をみてみましょう。

 ☆無双原理の12定理
  1 一つの無限、すなわち太極から永遠に変化する
    相補的、対立的な陰と陽が生まれる
  2 陰陽は一つの無限から限りなく生まれ出て、分かれて、
    お互いに往来して、活動して、再び無限の中へ帰り、消えて行く
  3 陽は求心・圧縮の性質を持ち、陰は遠心・拡散の性質を持っている
    陰と陽は反対の性質を持っている
  4 陰は陽を引き付け、陽は陰を引き付ける
  5 すべての現象(森羅万象)は、違う比率の陰陽によって構成される
  6 すべての現象は絶え間なく、陰と陽の構成を変えながら、
    釣り合いを取り合いながら動き続けている
  7 絶対の陰と陽は存在しない
  8 中性は存在しない。必ず陰か陽かが多くなっている
  9 すべての現象の引力や親和力は、それぞれの陰陽の量の差に比例する
 10 同じ性質のもの、陰と陰、陽と陽同士は排斥する
    それらの排斥力は陰陽の力の差に逆比例する
 11 陰も陽も極限に達すると逆のものを生じる
    陰は陽を、陽は陰を生じる(陰きわまれば陽に転ずる)
 12 すべてのものの中心は陽であり、表面・外面は陰である

      (新編集版「無双原理・易」著:桜沢如一/編集解説:岡田定三 サンマーク出版)

   ちなみに無双原理というのは
   「比べるものがないほどすばらしい唯一無二の宇宙法則」との意味らしいです。




 ☆桜沢氏の陰陽と中国哲理の陰陽に見え隠れする相違点?
中国古来の思想哲学である易を絶賛されていた桜沢氏。
この定理の内容も
易経の表現を現代的な表現に変えてまとめているように思えます。
ところがよくみていくと、
易の場合と桜沢氏の考え方とでは
陰と陽が反対になっている部分もあるのです。
たとえば、上記の12定理の内の3や12などです。

桜沢氏は「陽は求心・圧縮の性質を持ち、
陰は遠心・拡散の性質を持っている」としていますが、
易では陰と陽の性質がそれぞれ反対になります。
つまり前者の表現を借りれば
「陽は遠心・拡散の性質を持ち、
陰は求心・圧縮の性質を持っている」となるのです。

私が学んでいる太極導引も中国古来の陰陽思想に基づきますから
たとえば 天(陽)地(陰)
     上(陽)下(陰)
     前(陽)後(陰)
     軽(陽)重(陰) というように教わっています。


桜沢氏は陰陽バランスから食バランスを考えようとしてますから
陰陽を「エネルギー」としてとらえているようです。
したがってエネルギーとして熱性の高いものは
中心へと向かうものに多く含まれると考えているようです。
たとえば凸レンズで太陽光を集めると熱を発します。
これが陽的エネルギーということかなと、私は理解しました。
反対に広がったり上昇したり(拡散)、あるいは
いまだ何ものにもなり得ていない無限の可能性があるようなものには
陰的エネルギーがあるということなのかと。

しかもこの陰的、陽的エネルギーといった見方による分類の仕方は、
見た目やイメージからの判断が直観的にできそうな気がします。
たとえば地面から上へと伸びるものには陰的エネルギーが、
地中で実る物や豆のようなものは求心性があるので
陽的エネルギーがあるんじゃないかというぐあいに
類推しやすいのではないかと。

ちなみに易経の場合は、自然観察から導き出した哲理ですから
自然現象の営みの(自然界を動かしている)法則=陰陽です。
いわば生命の営みを担う仕組みをもつものを陰
そして生命を支え維持する機能(働きをするもの)を陽としているのかと。

どうも桜沢氏の陰陽バランスは中国古来の陰陽哲理とは
視点が違うように思われてくるのですが。(違うかなぁ…)
極論すれば、それぞれの陰陽の定義が違うくらいに思っておいた方が
無用な混乱をしなくてすむのかもしれないなと思えてきたりしてますけど。
両方の考え方を理解できている人にはどうってこともないのかもですが、
そうではない我々にとっては
このあたりをちょっと注意して抑えておかないと
矛盾している(というか正反対の理論)かのような誤解が生じやすいのかも。
このあたりがもう少し整理できていればいいのでしょうが、
ちょっと限界を感じています。


ということで、ほんの一部ですが、
マクロビオティックの視点からみた食べ物の陰陽分類を参考までに…。


 ☆マクロビオティックにみる食べ物の陰陽
マクロビオティックでは食べ物の陰陽は食品に含まれる元素の陰陽で決まる
と考えています。つまり陽性の代表元素である
ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)を多く含む食品は陽性
陰性の代表元素である
カリウム(K)、カルシウム(Ca)を含む食品は陰性となります。
食品成分表などでナトリウムとカルシウムの含有量を比べれば
目安となりますね。

 ▲極陽性のもの
   精製塩
   ハム、ベーコン
   ソーセージ
   大型魚類(クジラ・マグロ・ブリ・サバなど)
   有精卵

 △陽性のもの
   牛肉、豚肉、鶏肉
   小型魚類(タイ、サケ、アジ、イワシ、ニシンなど)
   エビ、カニ、イカ、タコ
   自然塩
   味噌、醤油、梅干し
   ジネンジョ
   ゴボウ、ニンジン
   蕎麦
   ゴマ塩
   三年番茶

 □中庸のもの
   玄米、三分つき米
   海苔、ワカメ、昆布、ヒジキ
   小豆、黒ゴマ
   ほうじ茶
   クズ

 ▽陰性のもの
   白米
   パスタ、うどん
   天然酵母パン
   白菜、キャベツ、レタス、キュウリ、ホウレン草、大根
   サツマイモ、サトイモ、タケノコ
   リンゴ、イチゴ、ミカン
   水、紅茶、煎茶
   日本酒、ビール、ジュース(天然果汁)
   豆腐(天然にがり使用)、大豆、ピーナッツ
   醸造酢

 ▼極陰性のもの
   イーストパン(砂糖入り)、菓子パン
   ナス、トマト、ジャガイモ、もやし
   バナナ、パイナップル、南国産果物、メロン
   山葵、胡椒、唐辛子
   豆乳、豆腐(化学凝固剤使用)
   コーヒー、コーラ(砂糖入り飲料水)
   日本酒(合成酒)、ウィスキー、ブランデー、ワイン
   白砂糖、蜂蜜、砂糖菓子、アイスクリーム
   化学調味料



食品の組み合わせ方例
  生ハム(極陽性)+メロン(極陰性)
  肉料理(陽性)の後のデザートやコーヒー(極陰性)
というように、中和させるような組み合せ方を考えるのが基本です。
極陽性⇔極陰性のような極端から極端という組み合わせよりも
なるべく小さな振幅でバランスをとるようにする方が
心身への負担が少なくなるそうです。

門外漢の食養生(6) -マクロビオティック-

2008-03-06 | 養生の栞-食・眠・動-
この数日、マクロビオティックを調べてみたのですが
門外漢がその流れ(歴史)を整理してまとめていくには
ちょっとたいへんそうなのがわかってきました。
というのも、マクロビオティックというのは
どうやら食養法だけをさすわけではないということが
わかってきたのです。

マクロビオティックの父とも言える桜沢如一氏ですが
その思想の根幹となる無双原理は宇宙観にまで広がっており
広い意味では哲学的要素もあるのです。
つまりマクロビオティックといえば
広い意味では陰陽理論による思考法でもあり
狭い意味では玄米菜食による健康法でもあるようなのです。
正直、ちょっと焦りました。

もちろんここで取り上げているのは狭い意味での方です。
そこでまずはマクロビオティックの四天王といわれる
4人の考え方やスタンスを抑えることで
健康法としてのマクロビオティックに接近してみることにしました。


  ☆マクロビオティックの四天王
 石塚左玄(いしづかさげん:1850-1909)
  福井出身。漢方医の家に生まれ、後に陸軍の薬剤監となる。
  彼は中医学の流れをくむ日本の伝統的医学(漢方)の考え方に
  基づく夫婦アルカリ論(マクロビオティックの陰陽論の前身)や
  人間の歯の構成などから穀食主義を提唱して
  食養としての玄米菜食を最初に体系化した。
  (マクロビオティックの基礎を築いた人)

  
 桜沢如一(さくらざわゆきかず:1893-1966)
  京都生まれ。幼くして両親を亡くし
  貧困と病気に苦しみながら生きてきたが
  石塚左玄氏の食養生を学び実践することで長年の持病を治し、
  健康を回復する。彼はバランスという観点を重視して
  石塚左玄氏の思想と中国の陰陽理論(易経)が持つ
  宇宙観(マクロ的な哲学)をもとに
  現在のマクロビオティックの体系を築いた。


 大森英櫻(おおもりひでお:1919-2005)
  静岡出身。日本における正食医学の大家。
  桜沢如一氏の病気治しの分野を継承した彼は
  幼少期に病気で苦しんだ自らの経験をもとに、
  動物性のものは一切食べない徹底した玄米菜食・少食を
  おしすすめる純正正食を提唱。食べ物を正すことで、
  あらゆる病気を治癒することができると説いた(正食医学)。
    

 久司道夫(くしみちお:1926-)
  和歌山出身。1949年渡米、自身の戦争体験をもとに
  人類の平和のためにはバランスのとれた健康食、
  マクロビオティック食が必要であるとし、
  桜沢如一氏の思想体系を世界に広めて
  食による世界平和の実現を目指している。
  このため彼がすすめるマクロビオティックは、
  世界中の人が受け容れやすいようにくふうされている。
  (クシマクロビオティックと呼んでいる)


狭い意味でのマクロビオティックの流れとしては
石塚左玄氏がその基礎をつくり、桜沢如一氏が体系をつくりました。
そしてそこからさらに正食医学としてすすめていった
大森英櫻氏の系統と、
世界的に万人に受けいれやすい食養法をすすめていった
久司道夫氏の系統とがあります。
つまり石塚氏から始まった食育から
桜沢氏が提唱するマクロビオティックに発展し
そこから大森氏と久司氏が
それぞれの系統に進んで行ったということかと。

大森氏と久司氏はそれぞれの方向性には違いがあるものの
対立というか反目しあうものではありません。
それぞれの基盤となっているのは
桜沢氏が提唱したマクロビオティックに相違ないのですから、
いわば陰と陽のような存在かとも思えます。
桜沢氏はすべての事象は陰陽にて成り立っているとする
陰陽理論(易経)を無双原理と呼び
この世に二つとないすばらしい思想(哲学)であるとしています。

そして彼の食養法は「陰陽バランスを理解し身につければ、
自分の心身状態にあった食べ物を自ら選び食べることができる」としています。
そこには自分で考えて選び(判断)食する(行動)ことの大切さとともに
食養とは自身で自身をつくる(養生)ことに他ならないことを
伝えているように思われます。



門外漢の食養生(5) -マクロビオティック-

2008-03-03 | 養生の栞-食・眠・動-
食養生といえば必ずといっていいくらいに見聞きする
マクロビオティック(macrobiotique)。
でも意外と内容は知らない人が多いのかも。
かくいう私もその中のひとり。
とりあえずの印象としては
砂糖を一切使わない、
肉などはほとんど取らない玄米菜食が中心で、
食品を陰性と陽性に分けて考えるといった程度でした。

マクロビオティック本来の意味は
長生術、長生き法という意味だそうですが、
桜井如一氏の提唱による
正食法(言わば和の薬膳のようなもの)の意味として
広く使われているようです。

実はマクロビオティックを実践している知人がいます。
マクロビオティックを始めてから
2年ぶりに再会したときに
とにかくその肌の透明感に驚きました。
くすみがないなんていう表現では足りないくらいに
不純物というか毒っ気が
まったく感じられませんでした。
まるできれいに片付けられた部屋のような
スッキリとして風通しのよい開放的な感じがしました。

それ以来、ずっと気にはなっていたものの
ちゃんと調べたりすることのなかったマクロビオティック。
門外漢が理解できる範囲はたかが知れているのですが
とにもかくにもかじってみることに。



 ☆正食の流れ
正食の歴史は、日本陸軍の軍医だった石塚左玄(1851-1909)氏が著した
「化学的食養長寿論」(1896年)に始まります。
彼はまだ栄養学が学問として確立されていない時代に
食物と身体の関係を理論化し、医食同源としての食育を提唱、
食育食養の普及につとめました。

彼の主要な考え方は次の通りです。

    食本主義 「食は本なり、体は末なり、心はさらに末なり」
         (心身の病因は食にあり)

 人類穀食動物論 人間の歯は穀類を噛む臼歯20本、菜類を噛み切る門歯8本、
         肉を噛む犬歯4本なので、人類は穀食動物である

    身土不二 その土地の主産物を主食に副産物を副食にすることで
         心身もまた環境に調和する

    陰陽調和 当時の西洋栄養学では軽視されていたミネラルに注目
         陽性のナトリウム、陰性のカリウムのバランスが崩れ過ぎると
         病気になるので、両者のバランスを整えるようにする

    一物全体 ひとつの食品をまるごと食べることで陰陽のバランスが保たれる

この中で注目されるのは、陰陽調和の項にあるように
ナトリウムとカリウムのバランスをみるとした点です。
たとえば食品分析した数値のうち、
ナトリウム塩の多い順に列挙していくと、
 ・ナトリウムが少なくなればなるほどカリウム塩が多くなる
 ・ナトリウム塩が多い食品は漢方でいうところの陽性のように
  体を温めるものであること
 ・カリウム塩の多い食品は漢方でいうところの陰性のように
  体を冷やすものであるといわれてきた食品であること
というような事例を発表したのです。

つまりナトリウムとカリウムは相互に拮抗したり相補性のある
基本的要素(たとえば一組の夫婦のように)であるとして
また、それが食物の性質を決めるのに大きな役割を担っていて
そのバランスによって人間の健康状態を左右すると考えたのです。

中医学が食物の性能概念を長年の応用実践から導き出して
性質や味がどの臓腑、経路、部位に作用するのか等の研究をしてきたことを
仮に食物と人体の関係を整体的な視点からみたものだとすれば、
彼が発表した理論は中医学の陰陽理論を化学(科学?)的な視点からみた
ひとつの実用応用例ともいえそうです。

この石塚氏の学説(温性のナトリウム、陰性のカリウム)に
中国の陰陽理論(易経)を結びつけて無双原理という独自の説を提唱し
国際的に広めたのが桜沢如一氏です。

体においてナトリウムが縮める力、カリウムが緩める力を持つと説き、
現代人に理解しやすいように
縮める力を求心性エネルギー、緩める力を遠心性エネルギーとして
石塚氏の学説内容を説明していきます。


実は中国の陰陽理論と正食の陰陽の考え方は
まったく同じというわけではありません。
見方が違うために相違点が出てくるのですが、
混乱しやすいところでもあるかと。
このあたりもなるべく整理してみたいと思います。


素朴な疑問 -ゆるゆる医食同源-

2008-03-02 | 養生の栞-食・眠・動-
これまで食養生の基本的な考え方を
いくつか紹介してきましたが、
これらが現代にそのまま当てはまるかと言うと…
どうなんでしょう。

たとえば、身土不二という考え方。
現代は流通機構も品種改良も農法も漁法も
あらゆる面で人為的に管理(コントロール)が
可能になっています。
そのために季節感(旬)、地域の特産などが
どんどん曖昧になっていき
どこにいてもいつでも同じようなものを食する現象が
うまれています。

寒い地域でも南方系の作物がつくれたり店頭に並ぶことで
体を冷やす性質のものを摂取する機会が増えます。
暑い地域でも同様です。

ならば食性を意識して選べば大丈夫かといえば
昨今の品種改良によって、
こちらも怪しくなってきてはいないかと。
寒暖に関係なく育つということは
耐寒性や耐熱性を人為的に加えているわけですから。
これらを寒熱どちらとも言えず=平性としていけば
平性だらけに?
もともとが平性に属する食品がほとんどという傾向にあるので、
それでもよいのかもしれませんが。

正直なところ、だんだんわからなくなってきています。
こわいのは農薬や添加物ばかりではないのです。
自分の食しているものがだんだんわからなくなっている…。
これでいいのかな?

細分化し過ぎても均一化し過ぎても…なんだかな~。
適度に融通がきく、ゆるゆるな感じ(遊び)って
必要じゃないのかしらん



門外漢の食養生(4) -ゆるゆる医食同源-

2008-03-01 | 養生の栞-食・眠・動-
食養生の基本的な考え方をまとめると…

 ☆医食同源
医薬も食品もともに命を養い健康を保つためのものであり
その本質は同じです。

漢方の場合、薬の原料は天然のもの。
薬も食べものもともに自然のなかで育まれ生長してきたもの。
太陽や大地、海洋からのエネルギーや物質が凝縮されています。
その自然の恵みをいただいて日々の糧とするのが「食」、
病気を改善するのが「医」。


 ☆五味五色
中国では古代より万物を5つに分けて考える思想、
五行学説が浸透していました。
その考え方に基づき食べものも5つに分類されました。
五味は酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味であり
五色は青・赤・黄・白・黒です。
それぞれが五臓という機能大別に対応しています。
この5つを摂取すると体内の諸機能が潤滑に働きます。
未病や病気のときは弱っている機能を高めるものを食べます。


 ☆身土不二
身は人間のからだ、土は環境を意味します。
身土不二とは健康状態と環境は切っても切れない関係にある
ということです。
たとえば暑い地域と寒い地域とでは育つものが違い、
人間が口にする食べものも当然違ってきます。
土地のもの、旬のものを食べます。


 ☆一物全食
食材をまるごと全部食べることをいいます。
命にはひとつとして無駄なところはなく
生命に必要な素がすべて具わっているのです。
ひとつのいのち(一物)をすべていただくことが大切です。

たとえば小麦粉よりも全粒粉の方が、
同様に豆腐よりは納豆のように豆のままの方が
食品をまるごといただくということに近くなります。
魚類だったらジャコのような小魚や小エビなどを選ぶことも
一物全体という考え方にかなっているといえます。


 ☆食性
食べものにはそこに含まれている滋養分とは別に
それを食べることによって
身体が温まるか、冷えるかという性質があります。
それを食性といいます。
熱性・温性・平性・涼性・寒性の5つがあり
体調や環境によって食材を選ぶ目安にします。

とはいえ、たくさんの食品の食性を覚えるのはたいへん。
そこで食品が育った地域から食性を推測することができます。
つまり暑い地域で育ったものは体を冷やすものが
寒い地域で育ったものは体を温めるものが多いというものです。


    *  *  *  *
食事は自然界の気を取り入れて健康を維持し
病気を改善する営みです。
体質や体調、生活環境に合わせて食事が組み立てられれば
健やかな体質を維持することも
未病を癒すことも可能になってきます。