松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

導引的視点でコロナフレイル対策(養生)をやってみた

2022-03-31 | 養生の栞-食・眠・動-
コロナフレイル対策として導引的視点から取り組んできた。
自分なりに導引的養生計画を立ててみた。


運動方面。体を動かす、使うこと。
まずは太極拳套路を導引的に練習する、その内容をより丁寧に行うこと。
そしてとりあえず何かしらの運動を毎日続けること。
一回30〜40分動き続ける導引練習の他に
ラジオ体操や軽運動のような短時間で全身を動かせるものなど
その日の予定や体調に応じて適切な量や質を考えて行う。
散歩もいい。
世情的にも家の中で過ごす時間が多くなるから、
トイレのついでにちょこっと掃除、洗顔ついでに洗面所周りも掃除。
◯◯ついでに体を使って動く「ちょい家事運動」もあり。

運動内容は日によって変化してもなるべく同じ時間帯に行うようにする。
こうすることでリズム、いわゆる調子が生まれる。
このリズム、調子を整えるのが導引なのだと私は考えている。
だから導引的視点に立てば、運動に限らずリズムあるものは
自らの意念で調整、コントロールは可能とも思っている。



睡眠方面。
睡眠は日々消費される体力気力を養い回復させる。
気象変動や世の中の出来事など自分の外側で引き起こされるものと、
いわゆるストレス、起伏の激しい感情やひとつの感情を長らく引きずるなど
いわば自分の内側で生まれるもの。
こうした内外からの影響で睡眠時間や睡眠の質は左右されてしまう。
だから睡眠の質をなるべく落とさないくふうも必要。

そしてこの睡眠にもリズムがある。
だから自分に合った睡眠リズムを探し、
それを整えることができればいいわけだ。

まずは「落ち着く」に限る。
眠るためには静かで落ち着いた環境づくりが必要。
なるべく緊張を招かないですむような環境を整える。
ニュースやSNSなど緊張の種、気持ちを揺らがせるようなものに留意する。
自然に湧き上がる感情を無にするのではなく、
行きすぎた感情のブレ、揺らぎの部分を、意識的にコントロールする。
常に平らかなフラットな状態にいったん戻るように心がける。
これもリズムになると思う。

疲れの程度も鍵となる。
疲れは神経を興奮させやすく、目が冴えて寝つけず
呼吸も浅くなり睡眠の質にも影響する。
メリハリのある昼夜の過ごし方。
昼には昼の、夜には夜のリズムが出てくると
一日の活動リズムもはっきりしてくる。
最初は起床時間と就寝時間を決めた方がリズムを作りやすくなるようだ。



飲食方面。
運動するにも眠るにもエネルギー、パワーが必要。
その源を飲食で体内に取り込む。
現代人は栄養バランスに偏りがあったり過食傾向にある気がする。
私自身は年齢相応に食事量は少なくなっているので、
「少量でもバランスよく」が課題。
しかしこれがなかなか難しい。
当日そのときになってみないと食べたいものが決まらない。
食欲がない、あるいは空腹感がないときもある。
反対にいくらでも食べられそうなときもあったり。

これもリズムで考える。
食事のリズムは決まった時間に食べることから始まる。
なるべく時間をずらさない。
そしていろいろなものを少しずつ食べる。
食べられそうにないときも、ひと口でいいから摂取する。

この点は、いまいちひっかかるところだと思うが、
たとえひと口でも、食すことで体全体のリズム、
調子の流れを滞留させていないこと。
そのことが大事なのだと今のところは理解している。



養生のこころは食・眠・動

2017-01-13 | 養生の栞-食・眠・動-
養生法はたくさんあります。
なぜならひとりひとりが違うから。
個体としての体質や性格の違いやら
生活様式、気候風土などなどといった環境も含めて
細かくみていくほどに複雑に分かれていきます。
だけどこれらを生き物、いのちあるもの
といったくくりからみれば、
もう少しシンプルに見ていくことができます。
するとあれほど意識されてたはずの個体差(固有性)から
少しずつ共有すると思われるものが見えてきます。
違うと認識していたものたちの中から
共通している要素を見つけ出す。

視点を移すだけで見え方が変わるなんて
騙し絵みたい。
対象は変わらないのに、自分の意識が変われば
がらりと変わってみえることがあるんです。
ましてや他人の判定や評価ともなれば
鵜呑みにすることには、ちょっと待て!となりますよね。

巷ではさまざまな養生法が紹介されています。
養生はいのちを養っていくことですから
自身でこの大原則から外れているなと
感じるようならば、たぶん(その方法は)
あなたには合わないのではないのかな。


私の経験からすると、養生のポイントは
食事・睡眠・運動の三要素かと。
体調が崩れるきっかけは
この三つのどれかが日頃の状態と違ってくるようです。
不調のサインに気づくのが遅くなったりすると
三つ巴の総崩れ状態になっちゃいますね。
最近はそこまでいくことは少なくなりましたが…。
そして崩れた体調をととのえるアプローチもまた
これら三要素への手あてをしています。
全てに対処するというよりは
その時々の状態に合わせてやることが多いです。



かつて糸井重里さんが某クルマのコピーで
「くう ねる あそぶ」
というのをつくられていたのですが、
もしかしたらあの作品は
養生の至高なんじゃないのかなと
今になって思ったりしているわけです。
なにしろクルマに乗った井上陽水さんが
ご機嫌な笑顔でこっちに向って
「おげんきですかぁ?」ですものね〜


くう(食事)ねる(睡眠)うごく(運動)

養生の押さえどころはこの三つだと思うしだいです。








寒い、寒い

2009-11-03 | 養生の栞-食・眠・動-
山が近くにあるような所に
住んでいるわけではないのですが、
木枯らしとともに
冬が山から転がり落ちるようにして
やって来たみたいで、
今朝の冷え込みも厳しかったです。

体のあちこちが固まって
緊張しているのがわかります。
とくに右顎から首筋にかけては
例の噛み合わせ異変以来
どうも敏感になっているらしく
気温や気圧の変化などは
たちどころに反応してしまいます。

それにしても、です。
夏日を記録した直後にこの寒さというのは
どうなんでしょうねぇ。
これが株価だったりしたら
乱高下に大騒ぎとなっているのかも。

季節の巡り方としては
たしかに秋から冬へと移っていることには
変わりはないのですが、
その変化の仕方が
少しばかり揺れ過ぎではないかと。
この時期に小春日和はあっても
夏日っていうのは…


晩秋となる秋の土用も終盤、
草木が葉を枯らして
外気との接触を閉ざし始めるように、
人の体もまた皮膚や粘膜が
乾燥しはじめる時期です。
外界に対しては心身を閉ざし
ひっそりと内にこもるための準備が
はじまったということですね。

冷えやすい傾向にある人は
首のつく部位(首、手首、足首)を
外気にさらすことを控えるようにするのも
おすすめです。
表皮の近くを血管が通っているので
それだけ外気の影響を受けやすいといえます。
一度冷やされた血液を再び温めるために
肉体は余計に熱をつくります。
冷えやすい人は、ある意味、
熱をつくりにくい人でもあるわけですから
けっこうな肉体労働になりそう。
それなりに余裕があればよいのですが、
疲れていたり空腹だったりと
いわゆる心身が消耗状態にあると
過重労働というか負担になってしまうと
考えられます。

でも、だからといって最初から
ヌクヌクと保温につとめ過ぎれば
汗をかくなどして、
かえって寒気を体内に呼び込むことに
なってしまいかねません。
いたわるとか大事にすることと
過保護とは違いますよね。


手洗い、うがい、できれば洗顔も

2009-11-01 | 養生の栞-食・眠・動-
新型インフルエンザワクチンの一般接種が
始まったそうですね。

以前にも書きましたけど自分でできる予防策
外から戻ったら、手洗い、うがい、できれば洗顔も。
この3ステップを励行するだけでも
随分と違ってくるそうです。

そこで今回はお医者さんが指導した
「正しい手洗いとうがいのしかた」を紹介します。
(動画の提供元はおなじみの『ほぼ日刊イトイ新聞』です)


 『お医者さんから教わった正しい手洗いとうがいのしかた』
  http://www.youtube.com/watch?v=N_kY0r--O-k


やってみれば即実感。
ほんとにスッキリと洗い上がります。気持ちいい。

うがいをするときは、なるべく首の力を抜いて
後頭部が自らの重さで自然に落ちてくようなイメージに。
すると顔側が鼻から自然に上を向いていくような…
そして両肩を落とすようにできると
さらによいかもしれませんね。
というのも、背骨を後方に反らせるようにして
上を向いてしまうと喉が詰まって苦しくなりますし、
うがいもうまくできなくなってしまうような
気がするんですよね。



それと……これって個人的見解なんですが、
予防と養生って、ちょっと観点が違うようなんですね。
予防とは「あらかじめ(予)め防ぐ」という意味で
たとえば病気やケガなどのように
何か特定の対抗すべき対象が想定されているような印象。
で、対する養生はといえば
そういうことではないような気がするんですね。
長生きする、年齢なりの瑞々しさを保ち活き活きと過ごすとか、
そのようにありたいとするのが養生なのかなって。

つまり予防は、より具体的な対象に絞った対処法で
その意味では養生の一部ともいえるのかもしれませんが、
だからといって養生=予防としてとらえること
つまり予防さえしていれば養生なんだと考えるのは
どうなのかなと。

養生はもっと根源的なところから
行うもののように思うんです。
だから仮に養生的予防策を考えるとすれば
手洗い、うがい、洗顔にとどまらず
たとえば人の集まる所にはなるべく行かない
心身を疲労させない、疲労を残さないとか、
あえて自らリスクに近寄らない
(リスクから遠ざかる)といった
積極的な回避行為も含まれると思います。
と同時に常日頃から十分な栄養と休養を重んじて
心身の内側から保護し英気を養うように
心がけることのような気がします。
そうした恒常的なはたらきかけが
養生なのではないのかなと。

ちなみに人が適正範囲内と感じている
ほとんどのケースが養生的視点からみれば
“やり過ぎ”の状態となるらしく…
うむむ~ やっぱり意識変革かなぁ


自分でできる予防策 -新型インフルエンザに関連して(ほぼ日『健康手帳』より)-

2009-04-29 | 養生の栞-食・眠・動-
今度は豚インフルエンザ、改め、新型インンフルエンザです。

連日情報が飛び回っていますね。
やはり心配ですよね。
心配だったり不安に思ったりするのは
その対象について、よく知らないからです。

でも、わたしは少しだけ落ち着いていられます。
とりあえず個人でできる対応策を
実行しているからです。
それはすごく簡単なことです。

手を洗う、うがいをする、顔を洗う

基本はそれだけ。
それを習慣化すること。
そしてさらにちょっとした意識をするだけで
ものすごく変わってくるんです。


わたしたちはけっこう無意識のうちに
手や指でからだを触りまくっているものなんです。

たとえば自分や周囲の人がクシャミしただけでも
唾液の飛沫は髪や衣服に付着します。
だれかがクシャミしたり咳したりしたかもしれない
椅子にすわり、テーブルを使い、キーボードを叩き、
端末操作ボタンを押したりしているのが
わたしたちの一般的な生活です。
そして何気に目をこすってみたり、
肌に触れたりしていません?
髪に触れたり着替えをした手で
化粧直ししてません?
ペットボトルの注ぎ口に
無意識に触れたりしてません?

インフルエンザウィルスは
目や口や鼻の粘膜に入ることで感染します


いま自分が何を触っているか
さっきまで自分は何を触っていたか
なんてことを意識したことってありますか?

お医者さんは病気の人達と接していますから
いつも意識しているのだそうです。
たとえば手術着の着脱、手袋の装着や外し方も
それなりの熟練が必要なんですって。
医療の現場ではそのくらい徹底しているんだとか。

ふりかえって私達の生活環境では…
手の洗い方ひとつをとっても
いちいち丁寧に洗っているかといわれると
ちょっといい加減かなという気も。
そのあたりをちょっと反省しつつ
とりあえず自分でできることをやっています。

ちなみに私がこうした情報を得たのは
「ほぼ日刊イトイ新聞」のコンテンツのひとつ
「Dear DoctorS ほぼ日健康手帳」からです。
わかりやすく丁寧な説明がされているので
“いま何が起きているのか”“いまできることは何か”
といったことが、
読み進むことで自然に整理できてきます。
今後の状況の如何を問わず
少なくとも冷静に落ち着いてに対応できそうな
気がしています。
別に「ほぼ日」さんから
頼まれているわけではありませんが、
よかったら、ぜひ一読されることをおすすめいたします。

 『Dear DoctorS ほぼ日健康手帳
 (シリーズ「身近な医者の底力」
   高山先生、新型インフルエンザについて教えてください)


冷え性改善に取り組む好機です

2008-05-23 | 養生の栞-食・眠・動-
冷え性を改善したいと思っている人には
これからが好い時節といえるかもしれません。
取り組み始めるのならば
まだ冷房ガンガンにならない今がチャンス。


冷えの仕組みを導引などで培った知識で考察してみると
やはり気血の状態に左右されるのではないかと考えられます。

気(エネルギー)には体温を保ち臓腑を温める働きがあり、
この役目を担う気を「陽気」と呼びます。
(ちなみに気にはいくつかの種類があり
役割ごとに呼び名があります)
そして気を全身に運ぶ役目を担っているのが血(けつ)です。
一般的にみた場合、活動性というのは
そのほとんどが冷えると減退し、
温まると増大する傾向にあります。
したがって気血の巡りがよくないと
体温を保つことが難しくなってくるので、
限られた気をなるべく消耗させまいとして
心臓から遠い部位の巡りを減退させていきます。
手足が冷たくなるのはこのためです。

やや気が消耗し不足する傾向が慢性的になってくれば
手足のひえひえ感にとどまらず、
内臓を温めることも難しくなってきてしまいます。
それはとりもなおさず内臓の働きにも影響してきます。
とくに女性の場合は骨盤内に位置する内臓が
冷えやすくなる場合が少なくありません。
生理痛や子宮筋腫なども
気血の巡りが滞っていることも一因とされています。
ちなみに気血の巡りが滞っている状態を
気滞、血オ[病ダレ+於]と呼びます。
たとえばコリや張りを感じる部位などは
このような状態にあると考えられます。
文字通り気血が動けなくなって固まっているわけです。

気滞を起こすと気持ちの抑うつや
痛みをともなう症状(神経痛など)が出てきたりします。
また血行も悪くなっていますから
冷えは強まる傾向にあります。


季節はいま、陽気あふれる時期を迎えています。
自然の恵み(陽気)を少しでも体内に取り込みたいものです。
冷えやすい傾向にある体質であれば
なるべく気の消耗を防ぎ気を補うように心がけましょう。
適度な運動をすることで新陳代謝を促し
陽気を取り入れやすい体をつくりましょう。
ストレスを貯め込まないようにして
こまめに発散させましょう。
そして休養(睡眠)は気を補う大切な役割。
15分くらいの昼寝をするだけでも
気の充電はバッチリです。
疲れやすいと感じるときなどには
特におすすめです。


バランス感覚を磨くために

2008-03-18 | 養生の栞-食・眠・動-
門外漢の食養生と題して、
これまでいろいろと書き連ねてきましたが、
基本的には太極導引鍛錬による養生と
同列にとらえています。

自分なりに体調を判断しながら食性を組み合せて食するとはいえ、
自分の意志で主導的に行えることには限度があります。

意志の主導が及ぶのは口に入れるところまでです。
その先からは体が主導権を握っています。
つまりどんなに計算してみたところで
体が計算通りに取捨選択してくれるとは限らないわけです。

頭だけでも体だけでもうまく機能しないからこそ
役割分担というか補完し合うような仕組みに
なっているのかもしれません。
だとすれば何事においても
まずは双方にとって無理のなさそうな
できそうなところから働きかけてみることが
心身にとって好ましい環境なのかもしれません。

食性の組み合わせにしても、
ほとんどの人の場合は
ザックリした分け方で充分かと思います。
むしろ心理的負担になったり
神経質になり過ぎてしまうことが
ストレス要因となって体調に影響したりでもしたら
元も子もないですよね。

健康な状態というのは
自らとりたてて考えたりしない、
気にならないような状態だったり、
健康意識から解放されたかのような状態とでもいうか…。
ただし心身の状態に無関心でいたり無頓着だったり
というのともちょっと違う。
ほどほどの気遣いはしているんだけど…とでもいうのかな、
おそらくはこれもまたバランス感覚なんだと思うのですよ。


自分で食事をつくる習慣がない人にとっては
自炊は大変革に等しいでしょうから、
仮に外食中心であっても
たとえば、ナトリウムとカリウムのバランス(*)を利用して
一日の食事のバランスをチェックするだけでも
意識は確実に変わってくるかと思います。
そういう段階からでもとにかく変わる、
変えてみようと試みる、行動することが
自信を育てていくんですよね。
(どうも自信が持てないときは動いていないか
動き方が不足しているような気がします)

とりあえず自分ができそうなところを見つけるところからです。
誰でもできるところではなくて、
自分ができそうなところというのがポイントです。
意外とセンスが要ります(ある程度自分を知らないと選べない)。

誰のためでもない、自分のために行うものだから
自分と向き合う習慣も一緒につくっていきましょうということかと。



 (*)……マクロビオティックでは
     ナトリウム(Na)・マグネシウム(Mg)を多く含む食品は陽性
     カリウム(K)・カルシウム(Ca)を多く含む食品は陰性とされている。

門外漢の食養生(7) -マクロビオティック-

2008-03-09 | 養生の栞-食・眠・動-
桜沢如一氏は中医学の根幹ともいえる陰陽理論(易経)と
石塚左玄氏の食養の考え方とを結びつけ、
広い意味では思想哲学ともいえる考え方をもとに
医食同源としての食を正せば病気も治るし、
自身に適した食を取り入れることで人生を健やかに楽しむ生き方を
手にする方法(マクロビオティック)を提唱しました。

まずは桜沢氏の陰陽についての世界観をみてみましょう。

 ☆無双原理の12定理
  1 一つの無限、すなわち太極から永遠に変化する
    相補的、対立的な陰と陽が生まれる
  2 陰陽は一つの無限から限りなく生まれ出て、分かれて、
    お互いに往来して、活動して、再び無限の中へ帰り、消えて行く
  3 陽は求心・圧縮の性質を持ち、陰は遠心・拡散の性質を持っている
    陰と陽は反対の性質を持っている
  4 陰は陽を引き付け、陽は陰を引き付ける
  5 すべての現象(森羅万象)は、違う比率の陰陽によって構成される
  6 すべての現象は絶え間なく、陰と陽の構成を変えながら、
    釣り合いを取り合いながら動き続けている
  7 絶対の陰と陽は存在しない
  8 中性は存在しない。必ず陰か陽かが多くなっている
  9 すべての現象の引力や親和力は、それぞれの陰陽の量の差に比例する
 10 同じ性質のもの、陰と陰、陽と陽同士は排斥する
    それらの排斥力は陰陽の力の差に逆比例する
 11 陰も陽も極限に達すると逆のものを生じる
    陰は陽を、陽は陰を生じる(陰きわまれば陽に転ずる)
 12 すべてのものの中心は陽であり、表面・外面は陰である

      (新編集版「無双原理・易」著:桜沢如一/編集解説:岡田定三 サンマーク出版)

   ちなみに無双原理というのは
   「比べるものがないほどすばらしい唯一無二の宇宙法則」との意味らしいです。




 ☆桜沢氏の陰陽と中国哲理の陰陽に見え隠れする相違点?
中国古来の思想哲学である易を絶賛されていた桜沢氏。
この定理の内容も
易経の表現を現代的な表現に変えてまとめているように思えます。
ところがよくみていくと、
易の場合と桜沢氏の考え方とでは
陰と陽が反対になっている部分もあるのです。
たとえば、上記の12定理の内の3や12などです。

桜沢氏は「陽は求心・圧縮の性質を持ち、
陰は遠心・拡散の性質を持っている」としていますが、
易では陰と陽の性質がそれぞれ反対になります。
つまり前者の表現を借りれば
「陽は遠心・拡散の性質を持ち、
陰は求心・圧縮の性質を持っている」となるのです。

私が学んでいる太極導引も中国古来の陰陽思想に基づきますから
たとえば 天(陽)地(陰)
     上(陽)下(陰)
     前(陽)後(陰)
     軽(陽)重(陰) というように教わっています。


桜沢氏は陰陽バランスから食バランスを考えようとしてますから
陰陽を「エネルギー」としてとらえているようです。
したがってエネルギーとして熱性の高いものは
中心へと向かうものに多く含まれると考えているようです。
たとえば凸レンズで太陽光を集めると熱を発します。
これが陽的エネルギーということかなと、私は理解しました。
反対に広がったり上昇したり(拡散)、あるいは
いまだ何ものにもなり得ていない無限の可能性があるようなものには
陰的エネルギーがあるということなのかと。

しかもこの陰的、陽的エネルギーといった見方による分類の仕方は、
見た目やイメージからの判断が直観的にできそうな気がします。
たとえば地面から上へと伸びるものには陰的エネルギーが、
地中で実る物や豆のようなものは求心性があるので
陽的エネルギーがあるんじゃないかというぐあいに
類推しやすいのではないかと。

ちなみに易経の場合は、自然観察から導き出した哲理ですから
自然現象の営みの(自然界を動かしている)法則=陰陽です。
いわば生命の営みを担う仕組みをもつものを陰
そして生命を支え維持する機能(働きをするもの)を陽としているのかと。

どうも桜沢氏の陰陽バランスは中国古来の陰陽哲理とは
視点が違うように思われてくるのですが。(違うかなぁ…)
極論すれば、それぞれの陰陽の定義が違うくらいに思っておいた方が
無用な混乱をしなくてすむのかもしれないなと思えてきたりしてますけど。
両方の考え方を理解できている人にはどうってこともないのかもですが、
そうではない我々にとっては
このあたりをちょっと注意して抑えておかないと
矛盾している(というか正反対の理論)かのような誤解が生じやすいのかも。
このあたりがもう少し整理できていればいいのでしょうが、
ちょっと限界を感じています。


ということで、ほんの一部ですが、
マクロビオティックの視点からみた食べ物の陰陽分類を参考までに…。


 ☆マクロビオティックにみる食べ物の陰陽
マクロビオティックでは食べ物の陰陽は食品に含まれる元素の陰陽で決まる
と考えています。つまり陽性の代表元素である
ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)を多く含む食品は陽性
陰性の代表元素である
カリウム(K)、カルシウム(Ca)を含む食品は陰性となります。
食品成分表などでナトリウムとカルシウムの含有量を比べれば
目安となりますね。

 ▲極陽性のもの
   精製塩
   ハム、ベーコン
   ソーセージ
   大型魚類(クジラ・マグロ・ブリ・サバなど)
   有精卵

 △陽性のもの
   牛肉、豚肉、鶏肉
   小型魚類(タイ、サケ、アジ、イワシ、ニシンなど)
   エビ、カニ、イカ、タコ
   自然塩
   味噌、醤油、梅干し
   ジネンジョ
   ゴボウ、ニンジン
   蕎麦
   ゴマ塩
   三年番茶

 □中庸のもの
   玄米、三分つき米
   海苔、ワカメ、昆布、ヒジキ
   小豆、黒ゴマ
   ほうじ茶
   クズ

 ▽陰性のもの
   白米
   パスタ、うどん
   天然酵母パン
   白菜、キャベツ、レタス、キュウリ、ホウレン草、大根
   サツマイモ、サトイモ、タケノコ
   リンゴ、イチゴ、ミカン
   水、紅茶、煎茶
   日本酒、ビール、ジュース(天然果汁)
   豆腐(天然にがり使用)、大豆、ピーナッツ
   醸造酢

 ▼極陰性のもの
   イーストパン(砂糖入り)、菓子パン
   ナス、トマト、ジャガイモ、もやし
   バナナ、パイナップル、南国産果物、メロン
   山葵、胡椒、唐辛子
   豆乳、豆腐(化学凝固剤使用)
   コーヒー、コーラ(砂糖入り飲料水)
   日本酒(合成酒)、ウィスキー、ブランデー、ワイン
   白砂糖、蜂蜜、砂糖菓子、アイスクリーム
   化学調味料



食品の組み合わせ方例
  生ハム(極陽性)+メロン(極陰性)
  肉料理(陽性)の後のデザートやコーヒー(極陰性)
というように、中和させるような組み合せ方を考えるのが基本です。
極陽性⇔極陰性のような極端から極端という組み合わせよりも
なるべく小さな振幅でバランスをとるようにする方が
心身への負担が少なくなるそうです。

門外漢の食養生(6) -マクロビオティック-

2008-03-06 | 養生の栞-食・眠・動-
この数日、マクロビオティックを調べてみたのですが
門外漢がその流れ(歴史)を整理してまとめていくには
ちょっとたいへんそうなのがわかってきました。
というのも、マクロビオティックというのは
どうやら食養法だけをさすわけではないということが
わかってきたのです。

マクロビオティックの父とも言える桜沢如一氏ですが
その思想の根幹となる無双原理は宇宙観にまで広がっており
広い意味では哲学的要素もあるのです。
つまりマクロビオティックといえば
広い意味では陰陽理論による思考法でもあり
狭い意味では玄米菜食による健康法でもあるようなのです。
正直、ちょっと焦りました。

もちろんここで取り上げているのは狭い意味での方です。
そこでまずはマクロビオティックの四天王といわれる
4人の考え方やスタンスを抑えることで
健康法としてのマクロビオティックに接近してみることにしました。


  ☆マクロビオティックの四天王
 石塚左玄(いしづかさげん:1850-1909)
  福井出身。漢方医の家に生まれ、後に陸軍の薬剤監となる。
  彼は中医学の流れをくむ日本の伝統的医学(漢方)の考え方に
  基づく夫婦アルカリ論(マクロビオティックの陰陽論の前身)や
  人間の歯の構成などから穀食主義を提唱して
  食養としての玄米菜食を最初に体系化した。
  (マクロビオティックの基礎を築いた人)

  
 桜沢如一(さくらざわゆきかず:1893-1966)
  京都生まれ。幼くして両親を亡くし
  貧困と病気に苦しみながら生きてきたが
  石塚左玄氏の食養生を学び実践することで長年の持病を治し、
  健康を回復する。彼はバランスという観点を重視して
  石塚左玄氏の思想と中国の陰陽理論(易経)が持つ
  宇宙観(マクロ的な哲学)をもとに
  現在のマクロビオティックの体系を築いた。


 大森英櫻(おおもりひでお:1919-2005)
  静岡出身。日本における正食医学の大家。
  桜沢如一氏の病気治しの分野を継承した彼は
  幼少期に病気で苦しんだ自らの経験をもとに、
  動物性のものは一切食べない徹底した玄米菜食・少食を
  おしすすめる純正正食を提唱。食べ物を正すことで、
  あらゆる病気を治癒することができると説いた(正食医学)。
    

 久司道夫(くしみちお:1926-)
  和歌山出身。1949年渡米、自身の戦争体験をもとに
  人類の平和のためにはバランスのとれた健康食、
  マクロビオティック食が必要であるとし、
  桜沢如一氏の思想体系を世界に広めて
  食による世界平和の実現を目指している。
  このため彼がすすめるマクロビオティックは、
  世界中の人が受け容れやすいようにくふうされている。
  (クシマクロビオティックと呼んでいる)


狭い意味でのマクロビオティックの流れとしては
石塚左玄氏がその基礎をつくり、桜沢如一氏が体系をつくりました。
そしてそこからさらに正食医学としてすすめていった
大森英櫻氏の系統と、
世界的に万人に受けいれやすい食養法をすすめていった
久司道夫氏の系統とがあります。
つまり石塚氏から始まった食育から
桜沢氏が提唱するマクロビオティックに発展し
そこから大森氏と久司氏が
それぞれの系統に進んで行ったということかと。

大森氏と久司氏はそれぞれの方向性には違いがあるものの
対立というか反目しあうものではありません。
それぞれの基盤となっているのは
桜沢氏が提唱したマクロビオティックに相違ないのですから、
いわば陰と陽のような存在かとも思えます。
桜沢氏はすべての事象は陰陽にて成り立っているとする
陰陽理論(易経)を無双原理と呼び
この世に二つとないすばらしい思想(哲学)であるとしています。

そして彼の食養法は「陰陽バランスを理解し身につければ、
自分の心身状態にあった食べ物を自ら選び食べることができる」としています。
そこには自分で考えて選び(判断)食する(行動)ことの大切さとともに
食養とは自身で自身をつくる(養生)ことに他ならないことを
伝えているように思われます。



門外漢の食養生(5) -マクロビオティック-

2008-03-03 | 養生の栞-食・眠・動-
食養生といえば必ずといっていいくらいに見聞きする
マクロビオティック(macrobiotique)。
でも意外と内容は知らない人が多いのかも。
かくいう私もその中のひとり。
とりあえずの印象としては
砂糖を一切使わない、
肉などはほとんど取らない玄米菜食が中心で、
食品を陰性と陽性に分けて考えるといった程度でした。

マクロビオティック本来の意味は
長生術、長生き法という意味だそうですが、
桜井如一氏の提唱による
正食法(言わば和の薬膳のようなもの)の意味として
広く使われているようです。

実はマクロビオティックを実践している知人がいます。
マクロビオティックを始めてから
2年ぶりに再会したときに
とにかくその肌の透明感に驚きました。
くすみがないなんていう表現では足りないくらいに
不純物というか毒っ気が
まったく感じられませんでした。
まるできれいに片付けられた部屋のような
スッキリとして風通しのよい開放的な感じがしました。

それ以来、ずっと気にはなっていたものの
ちゃんと調べたりすることのなかったマクロビオティック。
門外漢が理解できる範囲はたかが知れているのですが
とにもかくにもかじってみることに。



 ☆正食の流れ
正食の歴史は、日本陸軍の軍医だった石塚左玄(1851-1909)氏が著した
「化学的食養長寿論」(1896年)に始まります。
彼はまだ栄養学が学問として確立されていない時代に
食物と身体の関係を理論化し、医食同源としての食育を提唱、
食育食養の普及につとめました。

彼の主要な考え方は次の通りです。

    食本主義 「食は本なり、体は末なり、心はさらに末なり」
         (心身の病因は食にあり)

 人類穀食動物論 人間の歯は穀類を噛む臼歯20本、菜類を噛み切る門歯8本、
         肉を噛む犬歯4本なので、人類は穀食動物である

    身土不二 その土地の主産物を主食に副産物を副食にすることで
         心身もまた環境に調和する

    陰陽調和 当時の西洋栄養学では軽視されていたミネラルに注目
         陽性のナトリウム、陰性のカリウムのバランスが崩れ過ぎると
         病気になるので、両者のバランスを整えるようにする

    一物全体 ひとつの食品をまるごと食べることで陰陽のバランスが保たれる

この中で注目されるのは、陰陽調和の項にあるように
ナトリウムとカリウムのバランスをみるとした点です。
たとえば食品分析した数値のうち、
ナトリウム塩の多い順に列挙していくと、
 ・ナトリウムが少なくなればなるほどカリウム塩が多くなる
 ・ナトリウム塩が多い食品は漢方でいうところの陽性のように
  体を温めるものであること
 ・カリウム塩の多い食品は漢方でいうところの陰性のように
  体を冷やすものであるといわれてきた食品であること
というような事例を発表したのです。

つまりナトリウムとカリウムは相互に拮抗したり相補性のある
基本的要素(たとえば一組の夫婦のように)であるとして
また、それが食物の性質を決めるのに大きな役割を担っていて
そのバランスによって人間の健康状態を左右すると考えたのです。

中医学が食物の性能概念を長年の応用実践から導き出して
性質や味がどの臓腑、経路、部位に作用するのか等の研究をしてきたことを
仮に食物と人体の関係を整体的な視点からみたものだとすれば、
彼が発表した理論は中医学の陰陽理論を化学(科学?)的な視点からみた
ひとつの実用応用例ともいえそうです。

この石塚氏の学説(温性のナトリウム、陰性のカリウム)に
中国の陰陽理論(易経)を結びつけて無双原理という独自の説を提唱し
国際的に広めたのが桜沢如一氏です。

体においてナトリウムが縮める力、カリウムが緩める力を持つと説き、
現代人に理解しやすいように
縮める力を求心性エネルギー、緩める力を遠心性エネルギーとして
石塚氏の学説内容を説明していきます。


実は中国の陰陽理論と正食の陰陽の考え方は
まったく同じというわけではありません。
見方が違うために相違点が出てくるのですが、
混乱しやすいところでもあるかと。
このあたりもなるべく整理してみたいと思います。