松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

太極拳養生という考え方-私見・太極拳導引01- 

2015-11-26 | 行雲流水-日日是太極拳導引-
導引は古代中国の人々が行っていた体操のような運動です。
そんな大昔から健康のための体操が存在したことに
まずはビックリしてしまいますが、
体操とはいっても、はり灸や方剤(薬)、按摩と並ぶ
医療としての位置づけにありました。

太極拳の起源は400年くらい前
(明代末~清代初めの頃)といわれています。
太極拳は武術でありながら
古代哲学に基づいた理論要諦があり、
それに則って鍛煉することで
闘いに耐え得るような丈夫な体をつくり
故障しにくい効率的で洗練された体の使い方を
修養せしめることから
中国文化の精華とも呼ばれるような存在なのだとか。

だから太極拳は(古代中国に生まれた)導引の考え方も
引き継いでいるとは言えるのですが、
導引と太極拳とは同じということにはなりません。
厳密にいえばそういうことになりますが、
一般的にはそんなことは
どうでもいいことなのかもしれません。
太極拳導引も太極拳の一面であることに
違いはないのですから。

太極拳の懐はもっともっと深くて広い。
もし太極拳が山だとしたら
太極拳導引はその山の持ち味の一つであり
登頂へのひとつのルートでもあるのです。
そんな太極拳に親愛と敬意を感じ、
太極拳導引というルートで歩み出したのが私です。
まだまだ途上であることに変わりはないのですが、
練習体験や師との意見交換を通じて理解し得たことを
自分のことばで表そうと試みることも
練習になるのかもと思い始めたこの頃です。


五体のいろいろ

2015-11-05 | からだの風景-みる・さわる・かんじる-
体全体を五つのパーツに分けて
五体と呼ぶわけですが、
どうも洋の東西を問わないらしいです、
なんで五つなのでしょうね。


東洋思想でいえば
すぐに浮かぶのは陰陽五行学説があります。
五行の五は木火土金水の五要素の五です。
そして五という数は全てを表すとされています。
だから五体といえば人の全身を意味する。
ここから五体満足という発想も生まれたのでしょう。

では、五体とは具体的にどの部分なのでしょうか。
調べてみてビックリしました。
五つに分ける分け方がいろいろありました。
ということは分け方の数だけ
根拠(視点、考え方)があるということになります。


一般的な五体は「頭・四肢」です。
外観通りの一見して納得しやすい分け方。
他には「頭・頸・胸・手・足」というのもありました。
これらは人体解剖学的見地からの五体
ということになるらしいです。

さらには「頭・腕・胴・足・心」という分け方も。
こちらは可視部(頭・腕・胴・足)と
不可視な部分(心)との組み合わせ。
このあたりになると
哲学的要素も入ってきているような感じですね。

中医学などでは「筋・肉・骨・脈・皮(毛)」に分けます。
東洋医学ではすじ(筋)と肉は別ものとします。
また身体を表層から深部へと
層にみたてているような印象も。
さらには脈を組み込むあたりはユニーク。
流れ・巡りをいかに重視しているのかがわかります。

おもしろいところでは仏教の作法にも
礼拝時には「額・両膝・両肘」を大地に接する(投地五体)
というものがありました。単に礼法というだけでなく、
それなりの理由があるのかもしれません。

五体とする分け方ひとつにも
意識の置き所に微妙な違いがありそうです。
なかなか興味深いです。


練習メモ_導引三調13

2015-11-01 | 行雲流水-日日是太極拳導引-
太極拳導引ではその鍛錬内容である
調身・調心・調息の3つを称して
導引三調と呼んでいます。




調子(リズム)と調和

これまでは三調の「調」を調整(ととのえる)でみてきたが
今回は調子(リズム)という視点からみてみる。
そうすると
 調身…身体の調子
 調心…情緒の調子
 調息…気息の調子
ということになるかと思う。

調子はリズムであり
動きや流れのひとつの現象といえるかと。
リズムは運動であり
時々刻々と変動しつづけている。
そして身体・情緒・呼吸という三つのリズムもしかり。
なおかつ相互に影響しあっている。
だからこそ協調や調和というような
バランスの概念もうまれてくる。
それぞれの調子は独自のリズムをもっているから
それらが互いに影響し合って
全体としての一つの調子をつくり出している。
したがって調子のよしあしとは調和の問題でもあるかと。
調和の乱れはバランスの崩れ。

そして身体にはバランスが崩れたら
崩れたなりのバランスをとって
一時的にしのげるだけのバランス修正システムが
もともと備わっている。
導引三調は、そのシステムが機能しやすいように
体内外のバランスをととのえる手段のひとつなのだろう。
それはあくまでも本来のシステム機能を
支援するようなアプローチの仕方で。
つまりは身体の状態を観察するような
意識の使い方なのかなと。
いわゆる心身一如に基づく調和、和みを
目指すことなのかもしれないと思っている。