最高裁判所裁判官国民審査公報 これでいい? をまず書いて、
次に、なぜ「在任中の裁判官全員を国民審査の対象にしないのか」という新聞の投書欄の投稿を読んで最高裁判所裁判官国民審査公報 これでいい?続
を書いてきました。
でも、書きっぱなしでなく疑問を解いてみたいと思い、前回ご紹介したNHKのサイトで今回の最高裁判所裁判官国民審査で“罷免すべき”10%超が4人を超えたという結果に、コメントを書いていらした明治大学政治経済学部の西川伸一教授なら、教えて頂けるかも知れないと思いたち、思い切ってお尋ねメールを出してみました。
すると、なんと私の2つの質問にすぐに丁寧なお返事を頂けました!!!!
質問1:公報は、国の誰が草案を出して決めているのかわかりませんが、どうやって作られているのでしょうか。私が読んだのは千葉県選挙管理委員会のものでした。公報を頼りに判断させるには、公報の基準が主観的で、適切でないように思えました。
西川教授: 国民審査公報は審査対象となる裁判官自身が書きます。
それを総務省がとりまとめて、各都道府県選管が印刷し各戸に配付します。書く内容は経歴、最高裁でかかわった主要な裁判、その他審査の参考になる事項と決められています。言い換えれば、裁判官自身が書きたくない内容は書かなくてよいのです。今崎長官の記載内容についてご指摘の件は、憲法学者からも疑問の声が挙がっています。
「裁判官自身が書く」と知って、呆れてしまいました。
なぜなら、選挙公報は、但し書きが下のように、必ずつけられているからです。
「この選挙公報は、、候補者から提出された原稿をそのまま印刷したものです。」と。
選挙公報に至っては各頁の下に必ず書いてあるこの文言が、県の選挙管理委員会で選挙公報と同時に出している「最高裁判所裁判官国民審査公報」には、どこを見ても、何も書いてありません!
それが、書いたのが本人だったなんて!
私は、公的文書で、まさか本人が自分で書いているとは想像していませんでした。「裁判官としての心構え」という項目は、確かに裁判官本人が原案を書いて提出したのだとは思いましたが、「最高裁判所において関与した主要な裁判」を自分が判断して本人が書いていたとは!!!
「裁判官自身が書きたくない内容は書かなくてよい」
(罷免はごめんだから、書かないでパスする)なんてことが、許されるような公報になっている!それっ、問題ですよね。
選挙の候補者は何を主張しようが、それが間違っていても、本当であるかどうかは選挙民が判断して「選ぶことができる」。
しかし、最高裁判所の裁判官を国民は「選ぶことができない」。
わずかに、相応しくないと思える人を罷免できるのが唯一この国民審査なのに、公報がまるで公正であるかの印象を与える情報になっているのは、おかしい。
私としては、まず、次回の衆議院選挙で国民審査の機会があるまでに、せめて、客観的な資料であるかの印象を間違って与えないように、最低でも「この国民審査公報は、当該裁判官本人によって提出された原稿をそのまま印刷したものです。」と各頁の下に印刷すべきだろう。と思いました。
どうにかしたいですね。
もう一つの質問です。
質問2:新聞の投書欄に、「最高裁国民審査は毎回全員を」と書いた方がいて、投稿者は3年前に裁判の上告審判決に納得できず、国民審査で判決に関与した裁判官5人にX(バツ)をしようと決めていた。ところが、その名がなかった。今回の国民審査の完了後に最高裁裁判官になった人のみが対象で、1度国民審査を受けた裁判官はその後の裁判でどんな判決をしても、10年後まで国民審査の対象にならない。この問題はどう思われますか?
西川教授:新聞投稿は私も読みました。主張はごもっともなのですが、15人全員を審査対象にするためには憲法79条2項を改正しなければなりません。実現へのハードルは相当高いです。
私が、これについて書いた時は、最高裁判所裁判官国民審査法 を改正すれば良い問題だとおもったのですが、西川教授によると
憲法79条2項
最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 3項 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
とした憲法を、国民審査法を変える前に変えないといけないということのようです。これは確かに、ハードルが高すぎそうです。
そして、西川教授からは、「国民審査に関心をもたれてSNSで発信する方がおられるのは心強い限りです。みなさん情報を得るのはもはやテレビでも新聞でもなくSNSという時代です。今後とも発信されていかれますことを念願しております。」 と、激励のお言葉まで頂いてしまいました。
西川教授、お返事を頂きありがとうございました。
ということで、このブログで国民審査について関心をもって下さった方は、次の国民審査の機会までにこの問題への関心を広げていってみませんか。
補足) ところで、今回調べた中でブラジル在住のひとりの方の気づきから、最高裁が前回衆院選後の2022年、在外邦人の投票を認めないのは「違憲」と判断し、制度が変わったことで、今回の国民審査から、海外に住む有権者の投票が今回初めて可能になった!ということを私は知りました。 ご存知でしたか?
これについての詳細は、東京新聞のネット版の<海外から裁判官の審査、初実現 最高裁「違憲」で法改正>で読めます。
世の中って、動かないようでこうした小さな気づきを見逃さない人たちが少しずつ動いて社会が動いていくものなんだな~と勇気をもらえました。
余談)ところで、(そうだ、2022年、在外邦人の投票を認めないのは「違憲」と判断した最高裁の裁判官の名前も確かめておこうか)と思い調べてみたら、裁判所の「最高裁判所判例集」の「在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件」(令和4年5月25日)のところから全文をココでみると・・・18頁に亘って怒濤のごとくいろいろ説明があり、最後にいたって15人全員一致での判決だったようだと分かったが、補足があった。でも、それだけ調べるのに、十分頭が痛くなってしまった。法曹界に生きる人は別世界の大変さだと思えたことでした。
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