Viedel/KukiHairDesign/ヴィーデル/クキヘアデザイン 四条烏丸 美容室

ヴィーデルは四条烏丸の美容室です。フランス仕込みの技術 ナチュラルで優しく ふんわりとしたヘアスタイル

この世界の....

2016-12-22 08:01:32 | 映画
大災害や戦争を語る時、しばしば犠牲者の数によってそれを語ろうとする。
だがその数の裏には、犠牲者の分だけ途方もない悲しみが積み重なっている。
人の命の重みは数によって決まるものではない。
交通事故で家族を失った悲しみと戦争のそれとに、どれほどの違いがあるのか。
積み重なった悲劇の山の大きさを知ることも重要だが、その積み上げられた、塵のようなひとつひとつの人生を想像する力を忘れてはならない。
そんな小さな物語への視点を大切にする作品。
本作は戦争を伝える作品ではなく、戦争のある日常を伝える作品。「戦時下の生活がだらだらと続く作品」。
日常のなかに平然と悲劇が入り込む戦時下の特殊性と、食べたり、笑ったり、喧嘩したり、愛したりといった営みが同居する。
少ない配給の中で工夫する食事がとても美味しそうで、間抜けなことにはみんな笑い、連日やってくる空襲警報にも次第に慣れ、防空壕の中で世間話に花が咲く。
そんな日常を温かみある手描きの作画で切り取ってゆく。
映る人が、風が、海が、瑞々しい輝きを放ち、ほとんどの日本人が体験したことのないはずの時代の息吹が画面の隅々から発せられている。
そんな世界に引き込まれてゆく感覚。
この時代に生きたことはないのに懐かしさが胸いっぱいに広がる。
特に出色なのは主人公すず役ののん。
芝居の良し悪しの次元を飛び越えて「すずさん」としてフィルムの中で生きている。
観客はこの映画を見ている最中、すずさんと共に生きる。
戦時下の過酷な時代にあっても、人間らしくあろうとする彼女と共に生きることを許してくれる間は、なんて幸せな時間なのだろうと心から思える作品。