ジェフ千葉でナビスコカップ優勝と言う結果を残し 2006/7月に 当時のJFA会長の川渕三郎によりA代表監督に引き抜かれた。当時はジェフ千葉との最終合意に至る前に「言っちゃった」事件で ジェフ千葉のサポーターやチーム関係者に悪い印象を残したが ジェフ千葉に係わる人達の「日本に貢献してもらえるのなら」と言う寛容な思いでイヴィチャオシムを送り出してもらえたと言う経緯があった。そして何よりイヴィチャオシムを日本へ来て貰うために何度も思いを伝え説得し、そして発掘した GM祖母井の功績も大きい
イヴィチャオシム マルセロビエルサ ヨセフグラウディオラ 私の中では この3人は常に時代の先を見越して新しいサッカーをしようと オタク級にサッカーを研究し実践していた監督です。私の感覚では野村克也にも重なるところがありました。そしてこれほど長く過去の代表監督で日本人のサッカーファンに知られ続けた人も いないであろう。
イヴィチャオシムはユーゴスラビア内戦を経験し その中で現在のロシアのウクライナ侵攻にも心を痛めていた。
2022年3月24日のオーストラリア戦以降に電話インタビューをしたのが 最後になった。最後までウイットやスパイスに富んだ受け答えは 常々人に対して成長を促す教師のような面が有った。
最後には日本のメンバーを教えてもらい そして2022カタールW杯を見ることを楽しみにしていただけに 本当に残念ですし W杯を見せてあげたかったかな。
――元気ですか?「ああ元気だが、君はどうだ?」
――まあまあです。「日本は勝ち点3を得たのだな」
――とても満足しています。「予選を突破できたのだから。ジャーナリストも仕事が増えて嬉しいだろう(笑)」
――そうです(笑)。これからも続けられます。「世界チャンピオンになるまで仕事は続くな(笑)」
――それはまだ先ですが。「いや、考えていることは口にすべきだ。どうして不可能といえるのだ?」
――たしかに最終的な目標は……。「日本は進歩した。本大会出場を果たしたのは素晴らしい。サポーターをはじめ全ての日本人が喜んでいるだろう。予選突破は簡単ではない。ヨーロッパでもこれから試合がある。今日はオーストリアがウェールズと対戦する。難しい相手だ」
――プレーオフは厳しいですね。「とても厳しい。そのぶん、予選を突破したときの喜びも大きい。ウェールズは実力的にはほぼ同じレベルにあるから、オーストリアにはぜひ勝ち抜いて欲しい。レアル・マドリーでプレーする選手が代表に入っているが、それが彼らの唯一の切り札だ。だがチームはさほどコレクティブではない。オーストリアもそうだが彼らのほうが選手の入れ替えが激しく、普段リーグでプレーしている選手もしていない選手もいる。だが、それでも厳しいことに変わりはない。それで君らのほうはどうなっているのか?
―待ち望んでいた勝利を得てワールドカップが……。「私が日本で仕事を得られればいいのだが。今の私は走ることができるぞ」
――本当ですか(笑)「なんでそう言うんだ!日本は多くの選手がヨーロッパでプレーしており、私は毎日のように試合を見続けている。君に言いたいのは彼らが既に多くを学びチームの中心になっていることだ。スピードや俊敏さなどで違いを作り出している。それはヨーロッパ人にはない日本人の資質だ。それであなた方はどう過ごしているのか。ペトロヴィッチは今も札幌にいるのだろう」
――今季もここまでまずまずの成績を収めています。「誰か有名な監督はJリーグにいるのか? シャビはバルセロナでもいい仕事を続けている。先日もクラシコに勝利した。レアルが以前のレアルではもうないにせよ、素晴らしい勝利だった。レアルはコレクティビティを失った。けが人も多く、難しい時期を迎えている。しかも彼らはスター選手しか獲得しない」
――それがレアルであると言えます。「パリ・サンジェルマンも同じだ。だからひとりがけがをすれば、直ちにそれが問題となる。高い金をかけて獲得したスターに何かがあったり、その選手が去ってしまえばもう駄目だ。代替はきかない。同じ選手がいるわけではない。いいプレーをしているときはその恩恵に与り、獲得したことを素直に喜べるがいいときばかりではない。サポーターの期待は選手の上に重くのしかかる。そして他の選手がよければ今度はそちらに注目する。それで日本代表に残っているベテランは誰がいるのか?」
――吉田麻也はご存じですか。それから川島はまだチームにいます。「リストを作ってくれるか。選手の名前を書いて電話なりなんなりで教えてくれ。どの選手がどこに所属しているのかを」
――わかりました。後で送ります。「ところで日本で今、最も優れているチームは?」
――川崎フロンターレと横浜マリノスです。「以前、川崎の監督をやっていた人物は、今はどうしているのか?」
――それは関塚隆のことですか?「彼のスタイルは興味深かった。ヨーロッパのようなティキタカを目指していた。とてもモダンなスタイルで、サッカーの神髄を極めようとしていた。彼らがさらに進歩することを私は望んでいる」
――それならば風間八広だと思います。風間が現在のフロンターレの原型を作りましたから。「それからヨーロッパでプレーしている選手たちもいろいろ学んでいるだろう。電話をしてくれてありがとう。しっかり食べて健康でいてくれ。ただあまり食べ過ぎないように気をつけろよ(笑)」
――ありがとうございます(笑)。あなたは食事を済ませましたか?「済ませて夜の試合を待っている。ボスニア(フランスと同グループでグループリーグ敗退)に関しては、選手が大きく入れ替わった。今年は多くの選手が去って行った。これからどうなるかわからないが、現状の選手たちでやって行くしかない。他に選択肢はない。私たちの国には政治問題が常にあり続けている。すべては政治の対立から生じている。誰が代表でプレーするのか。セルビア系なのかクロアチア系なのか、それともボスニア系(ムスリム系)か……。監督(ブルガリア人のイバイロ・ペテフ)にとってはとてもデリケートな問題だ。選手のことをよく知ってもいない。行き当たりばったりで選んでいるだけだ。日本のみなさんにくれぐれもよろしく伝えてくれ。君ともできるだけ早く会えるといい。これからワールドカップをはじめいろいろなことがある。一緒に見たいし何かできることをやりたい」
―それであなたはどうなんですか?「実はあまりよくない。うまく歩けないからだ。膝が悪くて……、以前のように歩くことができない。手術が必要と言われているが……。膝と靭帯の手術だ。もしも靭帯が完全に破損したら、歩行が不可能になるし何もできなくなる」
――そうかも知れません。「それでオーストラリア戦はどうだったのか?」
――試合は拮抗して……。「いい試合だったのかどうか。勝ったのだから悪くはなかったのだろう」
――ええ、素晴らしい試合でした。「よくなかったらハッキリとそう言うべきだ。常に褒めるばかりでは、進歩はあり得ない。予選突破を果たし世界の表舞台に再び立つことを喜んでいい。ひとつの前進でもある。チームは若返っているのか?」
――継続性を維持しながら進化しています。「それならばこれからも良くなっていくだろう。ただすぐにというわけにはいかない。少し時間はかかるかも知れない。ワールドカップに継続して出場し続けることこそが重要だ。親善試合でも強敵と対戦する。私のときにクラーゲンフルトでオーストリアやスイスと対戦して優勝(三大陸トーナメント)したように、ときにヨーロッパに遠征する。そんな風にして学んでいく。世界を目の当たりにして、さらにはそこに入って行かなければ進歩はありえない。世界では今、どんなサッカーが実践されているのかを観察し体験する。今、私がテレビで見ているのはブリュッセルの会談だ。生中継で、アメリカをはじめとするNATO諸国の首脳が集まり、これまでに起こったこととこれからどうすべきかを相談している。ウクライナの大統領は自国の窮状を訴え、誰が敵で誰が味方かをハッキリと語った。誰もがロシアの行為を憂いている。占領はいつまで続くのか。この戦争が早く終息することを私は願っている。あなた方も黙っているわけではないのではないか」
――批判は高まっています。「ヨーロッパの影響は日本でも大きいハズだ。プーチンの行為はスターリンを彷彿させる。彼は世界の支配者になりたがっている。それが彼らの政治戦略だ。プーチンは狂信的ですらあり、強大な野望を抱いている。どこにも勝てると思っているし誰と戦うことも厭わない。ファナティックとしか言いようがない。彼らとこれ以上関わらずに済むことを願わずにいられない」
――そうですが、なかなか難しいでしょう。「Jリーグはもう始まっているのだな」
――開幕してひと月がたちました。「それはいい。素晴らしいスタジアムでまたサッカーが始まったわけだ。日本は最高の環境で最高のサッカーを実現できる条件が整っている。スタンドは観衆で溢れピッチコンディションは素晴らしい。若く才能に溢れた選手たちがそこで躍動する。日本サッカーには豊かな未来が開けている」
――そうだといいのですが。「輝かしい未来だ。私はそうであることを願っている。今、テレビが映し出しているのはマリウポリ(ウクライナ東南部の都市)の映像だ。すべてがロシア軍によって破壊しつくされた。ただ、だからといって、誰かに対してリベンジしようとは思って欲しくない。プーチンにはその気がちょっとある。彼にはやられたという思いがあったのだろう。だから今、ウクライナに対してやり返している。だが、どこもロシアのように強大な軍備を整えられない。それが世界中に脅威を与え緊張を作り出している。今はどこもがロシアに恐れを抱いている。そういうことだ、サリュ、モンビュウ」
これは僕の好きなヒトコマです。
イヴィチャオシムは必ずと言って良いほどPK戦は見ない。それは今までは取り組んできた成果でもなく ギャンブルに近いからだとも そして今まで必死に取り組んでいた選手を見ていたからこそ この様な結果で雌雄を決めるのが嫌だと言う。
でも初優勝の時は ロッカールームの前で 人知れず嬉し涙を流していたと言う。
メルシー、イバン。メルシー、シュワーボ。
je prie pour ton âme.