◎谷崎潤一郎『盲目物語』初版(1932)の奥付
昨日の続きである。最初に、昨日のコラムについて、ひとつ補足をおこなっておきたい。昨日、紹介した「複刻について」という文章の中に、「口絵一葉は根津夫人の肖像であるが」とあったが、これは正確でない。『盲目物語』初版にある口絵は、北野恒富画伯筆「茶々」の画面の一部であって、「根津夫人の肖像」ではない。ただし、北野恒富画伯は、「茶々」を描く際に、「根津夫人の容貌」を参考にしたという。この点については、明日のコラムでも再度、触れる。
さて、本日は、谷崎潤一郎『盲目物語』の複刻版から、原本の「奥付」を紹介してみたい。原本の奥付は、原本のページでいうと一八七ページにあたるところにある。奥付は、上下二段で構成されている。
原本はタテ書きだが、これをヨコ書きで再現してみる。「定価壱円七拾銭」までが上段、それ以降が下段である。
盲 目
物 語
検
印
定 価
壱円七
拾 銭
昭和七年一月卅日 印刷
昭和七年二月五日 発行
著 者 谷崎潤一郎
発行者 東京市麹町区丸の内二丁
目一番地 島中 雄作
印刷者 東京市小石川区久堅町百
八番地 君島 潔
印刷所 共同印刷株式会社
製 本 両角製本所
製 函 加藤製函所
発行所 東京市麹町区丸の内二丁
目丸の内びるでいんぐ五百八十八
区、振替口座東京卅四番、電話丸
の内五百卅五番、五百卅六番、五
百卅七番 中央公論社
複刻版では、上段の「検印」とあるところの下に、波線で仕切られた四角いスペースがあり、そこに、「じゆ/んいち」とある四角い朱印が印刷されている。しかし、インターネット情報によれば、実際は、上段の「検印」とあるところの下に、朱印を捺した四角い紙片が貼られていたもようである。【この話、続く】