ローはグンと出るだけで全然のびがない（高宮正男）

◎ローはグンと出るだけで全然のびがない（高宮正男）

『オートバイ』誌の１９５８年２月号の「メーカーの言・ユーザーの言」から、ホンダドリームＣ70型について論評しているところを紹介している。
　本日は、その五回目で、引き続き、「ユーザーの言」を紹介する（「ユーザーの言」としては三人目）。

　また56年のＳＡ型から乗り換えたというドリームファンの高宮正男さん（世田谷区東玉川○○○）はこういつている。
　「前に乗つていたクルマに較べるとたしかによくなつていますね。車重が軽くなり取扱いが非常に楽になつたこと，出足のよいこと，そしてクッションが素晴らしいこと，トップスローがきくこと，燃費の少ないこと，安定性が向上したこと，チェンジのトロークが短いこと……等，とにかくよくなつています。力もあるしとても静かですね，このツインは。前の車もうるさいというほどではなかつたけれど，夜遅くそう路地なんか走るときは気がひけました。だけどこの車でしたらそういうことはないでしよう。エンジンの油もれは殆んどないですよ。かすかあににじみでるだけですから，三日に一度ぐらいに掃除してればまつたくないといつても分らないでしよう」
　と，まずいろいろと向上した点をほめているが，次のような不満な点も述べている。なお，高宮さんの使用している車は勤務先のもので，一日に平均100粁〔km〕は走つているという。これは走行2,200粁におけるときの不満である。
　「主に商品の配達用に使つているんで，大抵15～6貫ぐらいの荷を積んで走つていますが，ハンドルの巾が狭いんで尻をとられるような感じがします。というのは身体が前かがみになつちやうからなんです。実用車というのならばこれは具合悪いですね。前にクッションがいいとはいつたけど，それはフロントの方でリヤは荷を積まないとかたいようです。ですから荷を積むようになつている車，つまり実用向きに出来ているんだと思うんですが，ハンドルなんかはどつちかというとスポーツ向きなんです。それからブレーキ板がとつても小さく，見ては何かスマートですがけつして実用向きじやない。またフロントフェンダーもなかなか格好はよいけど全然泥水をふせがない。雨の日にのつたらヒザから下はビッショリになつちやう。それからローはグンと出るだけで全然のびがない。グンとでる出足はいいんですけど，スピードがでないんです。そのほかキャブを密閉したのはいいんですがチックラーがでていないのは不便ですね。始動はあまりよくあません。それとメインスイッチがランプの左横についていて，雨水よけになつているのはいいんですが，ちよつとつけ忘れるとサア大変です。30分ぐらいでバッテリーがあがつちやうんです。５分でも車から離れるときは必ずキーを抜かなきや駄目です。子供にいたずらされてバッテリーがあがつちやつてひどいめにあいました。30分ぐらいであがつちやうんですから夜間尾灯をつけて駐車させておくことはできませんね」〈５４～５５ページ〉【以下、次回】

＊このブログの人気記事　２０２５・３・１０（９位になぜか木戸孝彦、１０位は時節柄か）

• 非常に静かで、トッブスローがよくきく（羽持照男）
• ハンドル巾が狭く、上半身が前かがみになる（吉野...
• 「失礼しちゃうワ」は昭和初期の流行語
• ホンダドリームＣ70型を論評する
• 浅川駅で列車を待っていた人も多かった
• 麻原彰晃と二・二六事件
• ドリームＣ70型のフレームはプレス鋼板製
• ポパイことドイル刑事がフランスに乗り込む
• 木戸孝彦「南原繁先生と終戦の思い出」
• 二・二六事件と不穏文書臨時取締法