◎ドリームC70型のフレームはプレス鋼板製
『オートバイ』1958年2月号の「メーカーの言・ユーザーの言」から、ホンダドリームC70型について論評しているところを紹介している。本日は、その二回目で、「メーカーの言」の後半部分である。
フレーム本体 C70型のフレームはストレススキン(応力外皮)構造によるプレス鋼板製を採用し,断面形状をふくらみのある角型にして剛性を向上させています。しかもその角型が今迄にない斬新な感覚を表現していると云えます。
また,溶接方法は,最新式のシーム溶接を行なつている為,信頼性のある完全な溶着が出来,仕上りも美しく均一な製品を作ることが出来ます。従つて板厚〈イタアツ〉を薄くし,応力に応じた断面形状を有していますから,フレーム本体の重量はずつと軽減され,車体全重量も160㎏から138㎏と大巾に軽量化されました。
最高出力18馬力という強力なエンジンを搭載していますので,馬力当りの重量は僅か7.7㎏という数字です。この軽量なことが,強力なエンジンに4段の変速比を適切に選定したことと相俟つて,出足を良くし,加速性能及び最高速度の飛躍的増大を可能にしたわけです。
フレーム内部には,バッテリー,エアクリーナーが格納され,右側面にはオイルタンク,左側面にはツールボックスが取り付けられています。またリヤフェンダーはフレームに熔接結合され一体構造になりました。
フレーム本体の板厚は1.O㎜,リヤフェンダーは0.8㎜,フレームボディボトムプレート,エンジンハンガープレートはそれぞれ2.3㎜の鋼板を使用しています。
フロントフォーク及び操向装置 【略】
ラバーブッシング(ゴムブッシュ) 【略】
後輪駆動緩衝装置(リヤホイールダンパー) 【略】
16吋ホイール 【略】
× × ×
以上,メーカー側の述べるドリームの特長を要約すると,エンジン関係では,並列・等間隔爆発の4サイクルOHC(頭上弁,頭上カム型式)2気筒を採用した結果――トルク(回転力)の変動が少なく回転が円滑で振動が少ない,またカム軸を直接チエンで駆動するため回転による消耗が少なく非常に円滑で,高速回転が容易,出力が大,加速性能は向上した。点火方式はバッテリー点火としたため――進角範囲が広く,低速,高速に於ける点火のムラがない。したがつてプラグ,ポイント等の損傷が少ない。潤滑方式はドライサンプ式で――清浄なオイルを的確に供給することができオイルの冷却がよい。クランクケースはアルミ合金製上下分解式で――優美,軽量でオイル洩れの心配がない。また完全密閉式でキャブレターもシールドしたので,チリやホコリが侵入せず各部分の摩耗が少ない。……などである。
次に伝動関係では――湿式多板クラッチをクランクシャフトに装着したので,動力伝達部の面積および接着力を小さくすることができた。変速機は常時噛合〈コウゴウ〉式4段ロータリー変速を採用し,変速操作が容易かつ正確で変速時の騒音がない。後輪のドラム内にダンパーを設けたので,チエンにかかるショックがなく寿命が長い。前後輪とも小径タイヤを採用したので,重心が低く,重量が軽く,安定性がよい。フレームについては――ストレススキン(応力外皮)によるプレス鋼板製で,軽量で剛性が高く製品が均一である。フロントフォークおよび操向装置に関しては――軽量で剛性が高く機能が良好である。またラバーブッシュを採用し,摩耗が少なくガタや騒音が生じない。……などとなる。〈47~53ページ〉【以下、次回】
ドリームC70型のデザインは、のちに「神社仏閣型」と呼ばれることになるが、そう呼ばれた最大の理由は、フレームの形状にあった。同車のフレームには、プレス鋼板によるストレススキン(応力外皮)構造が採用されていた。このストレススキン構造は、今日では、モノコック構造と呼ばれることが多い。
「要約」のところに、エンジンは、4サイクルOHCで、並列・等間隔爆発などとある。ドリームC70型のエンジンは二気筒で360度クランクだが、左右の気筒で爆発の時期が異なり、両気筒において交互に等間隔で爆発がある。これが「並列・等間隔爆発」の意味である。
明日は、「ユーザーの言」のところを紹介する。
『オートバイ』1958年2月号の「メーカーの言・ユーザーの言」から、ホンダドリームC70型について論評しているところを紹介している。本日は、その二回目で、「メーカーの言」の後半部分である。
フレーム本体 C70型のフレームはストレススキン(応力外皮)構造によるプレス鋼板製を採用し,断面形状をふくらみのある角型にして剛性を向上させています。しかもその角型が今迄にない斬新な感覚を表現していると云えます。
また,溶接方法は,最新式のシーム溶接を行なつている為,信頼性のある完全な溶着が出来,仕上りも美しく均一な製品を作ることが出来ます。従つて板厚〈イタアツ〉を薄くし,応力に応じた断面形状を有していますから,フレーム本体の重量はずつと軽減され,車体全重量も160㎏から138㎏と大巾に軽量化されました。
最高出力18馬力という強力なエンジンを搭載していますので,馬力当りの重量は僅か7.7㎏という数字です。この軽量なことが,強力なエンジンに4段の変速比を適切に選定したことと相俟つて,出足を良くし,加速性能及び最高速度の飛躍的増大を可能にしたわけです。
フレーム内部には,バッテリー,エアクリーナーが格納され,右側面にはオイルタンク,左側面にはツールボックスが取り付けられています。またリヤフェンダーはフレームに熔接結合され一体構造になりました。
フレーム本体の板厚は1.O㎜,リヤフェンダーは0.8㎜,フレームボディボトムプレート,エンジンハンガープレートはそれぞれ2.3㎜の鋼板を使用しています。
フロントフォーク及び操向装置 【略】
ラバーブッシング(ゴムブッシュ) 【略】
後輪駆動緩衝装置(リヤホイールダンパー) 【略】
16吋ホイール 【略】
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以上,メーカー側の述べるドリームの特長を要約すると,エンジン関係では,並列・等間隔爆発の4サイクルOHC(頭上弁,頭上カム型式)2気筒を採用した結果――トルク(回転力)の変動が少なく回転が円滑で振動が少ない,またカム軸を直接チエンで駆動するため回転による消耗が少なく非常に円滑で,高速回転が容易,出力が大,加速性能は向上した。点火方式はバッテリー点火としたため――進角範囲が広く,低速,高速に於ける点火のムラがない。したがつてプラグ,ポイント等の損傷が少ない。潤滑方式はドライサンプ式で――清浄なオイルを的確に供給することができオイルの冷却がよい。クランクケースはアルミ合金製上下分解式で――優美,軽量でオイル洩れの心配がない。また完全密閉式でキャブレターもシールドしたので,チリやホコリが侵入せず各部分の摩耗が少ない。……などである。
次に伝動関係では――湿式多板クラッチをクランクシャフトに装着したので,動力伝達部の面積および接着力を小さくすることができた。変速機は常時噛合〈コウゴウ〉式4段ロータリー変速を採用し,変速操作が容易かつ正確で変速時の騒音がない。後輪のドラム内にダンパーを設けたので,チエンにかかるショックがなく寿命が長い。前後輪とも小径タイヤを採用したので,重心が低く,重量が軽く,安定性がよい。フレームについては――ストレススキン(応力外皮)によるプレス鋼板製で,軽量で剛性が高く製品が均一である。フロントフォークおよび操向装置に関しては――軽量で剛性が高く機能が良好である。またラバーブッシュを採用し,摩耗が少なくガタや騒音が生じない。……などとなる。〈47~53ページ〉【以下、次回】
ドリームC70型のデザインは、のちに「神社仏閣型」と呼ばれることになるが、そう呼ばれた最大の理由は、フレームの形状にあった。同車のフレームには、プレス鋼板によるストレススキン(応力外皮)構造が採用されていた。このストレススキン構造は、今日では、モノコック構造と呼ばれることが多い。
「要約」のところに、エンジンは、4サイクルOHCで、並列・等間隔爆発などとある。ドリームC70型のエンジンは二気筒で360度クランクだが、左右の気筒で爆発の時期が異なり、両気筒において交互に等間隔で爆発がある。これが「並列・等間隔爆発」の意味である。
明日は、「ユーザーの言」のところを紹介する。
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