礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

岩波文庫版『ドイツ国民に告ぐ』をめぐる謎

2025-02-01 00:05:48 | コラムと名言
◎岩波文庫版『ドイツ国民に告ぐ』をめぐる謎

 1月22日のコラム「角川文庫版『ドイツ国民に告ぐ』の解説を読む」で私は、岩波文庫版『独逸国民に告ぐ』(大津康訳、初版1934)は、国立国会図書館によってインターネット公開がされていないと書いた。
 同図書館に岩波文庫版『独逸国民に告ぐ』がないわけではない。同図書館の検索システムで検索してみると、同書の第8刷(1934)がヒットする。
 ところで、一昨日(1月30日)、書棚を整理していたところ、岩波文庫版『ドイツ国民に告ぐ』が出てきた。『独逸国民に告ぐ』ではない、『ドイツ国民に告ぐ』が出てきたのである。
 その奥付には次のようにあった。

 昭和 三 年二月十五日   印      刷
 昭和 三 年三月 三 日   発      行
 昭和十五年三月 十 日   第十六刷改版発行
 昭和十六年三月三十日   第 十 七 刷 発行

 ドイツ国民に告ぐ ★★★  定 価 六 十 銭

 たぶん、1940年(昭和15)3月の改版に際して、タイトルを『独逸国民に告ぐ』から『ドイツ国民に告ぐ』に改めたのではないだろうか。
 いま手にしている本の表紙を見ると、右書きで「改訂/ドイツ国民に告ぐ」とある。背表紙には、「改訂 ドイツ国民に告ぐ」とある。扉には、なぜか「ドイツ国民に告ぐ/(改訂版)」とあった(扉も右書き)。
「改訂版」の存在が明らかになったので、改めて、国立国会図書館の検索システムで「ドイツ国民に告ぐ 岩波文庫」を検索してみた。ヒットしない。国立国会図書館には、岩波文庫の改訂版『ドイツ国民に告ぐ』は架蔵されていないようだ。意外なことだった。
 岩波文庫の初版『独逸国民に告ぐ』は、インターネット上に公開されていない。その訳者は、大津康(おおつ・やすし、1876~1922)だが、この人は、今から百年以上も前に亡くなっている。その訳本が、インターネット公開はされていない。これも、不思議と言えば不思議である。【この話、続く】

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