風吹く豆腐屋

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つまみぐい的信仰

2009-12-24 13:51:55 | Weblog
宗教と関連のある本を2冊読みました。


●三浦綾子 著「塩狩峠」

少し前に、うちにある文庫はまとめて処分した(古本屋でALL10円)んですが、
これはまた読むこともあるだろうかと思って残していました。

この小説は作者自体がクリスチャンで
信者の会報誌に連載するために書かれたものなので、
当然ですが、キリスト教がよいものとして描かれています。

別にそれに異を唱えるわけではありません。
原罪の思想とか共感できる考え方もたくさんあります。

ただ、どうしてもついていけないところがあるんですよね。
読んでいて、痛いところをつつかれたような気分になりますが、
それで自分が間違っていると考えることはできません。

例えば、「自分がよい人間だなどと考えるな」という教えが何度も出てきます。
驕るなかれ、全ての人間は本質的には対等、というメッセージなのは分かるんです。

でも、ホームズやニーチェが言うように(この二人を同列に上げるのはどうなんだろ)
「謙遜は間違った行為であり、自分を正当に評価することこそ大切」
という考え方のほうが、個人的には好きです。

小説の中では、神や聖書にある言葉は全て正しい、というような
盲目的な信仰が描かれているので、そこに反発を覚えるのかもしれません。

小説としては心理描写がとても巧みで読み応えのある1冊だと思います。


●南直哉 著「老子と少年」

こちらは仏教です。
禅僧が書いた対話形式の小説ということですが、
内容は「老子」と「少年」の問答だと思ったほうがいいです。
薄い文庫で340円でした。
こんな書き方すると怒られるかもしれませんが、
少なくとも缶コーヒー3本分の価値はあります(笑)

この本のいいところは宗教色が薄いこと。
具体的に名前を出しているわけではありませんが、
キリスト教などと対比させることで、
禅宗(もしくは筆者自身)の考え方のオリジナリティを際立たせています。

ただ、この本も僕の感じ方とは相容れない部分があります。
例えば、この前の記事で、
ある人の不幸に比べれば自分の経験する悩みなんて・・と書いたけれど
そういう比較はできないし、しても意味がない、とバッサリ。

言いたいところは分かるんだけど、なんか現実的でないよなぁ、と思ってしまいます。

この本の基調は、無、といったところでしょうか。
自分の考え方とは違うからこそ、面白いと思わせてくれる本です。



世界的に見て、信仰を持たない人間は蔑まれると言いますが、
たくさんの宗教が混在している今の日本の状況もひとつの文化。
面白いと思ったところをつまみ食いするのもいいんじゃないかと個人的には思います。

 




クリスマスは恋人と過ごすものだという
日本独自の風習は強迫観念である、と少し前の新聞にありました。

言いえて妙とはこのことか・・